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出会い

何とか王子様の登場までこぎつけました。長かった・・・


 ドレスの試着の後、三人がかりで入浴、エステ、マッサージを受けながらも勉強は続き、ようやく解放されてお茶をしていると、「姫様、明日のご予定ですが・・・」ソリッド女官長が話しかけてきた。

 この人は本当によく働く。失礼ながらもうよいお年なのに元気いっぱいだ。

 「明日は朝食の後お勉強、昼食後は美容師が本格的なエステを行います。その後王子様がお着きになりましたらご挨拶を・・・」

 「あの、王子様はいつお着きになるの?」

 「夕刻だと聞いております。やはり気になりますか?」にやっと微笑む女官長。後ろの二人もニヤニヤしている。

 私はわけもなく顔を赤らめながら、

 「いあ、そうじゃなくて、ちょっと行きたいところがあって。」と答えた。

 「どこへ行かれるのですか?」

 「練兵場へ・・・」

 「練兵場?あのむさくるしい、男臭い、暑苦しいところなど、なりません。ご結婚を控えられた姫様がなぜそのようなところへ?」

 女官長はものすごい勢いで聞いてくる。なんか忌避感半端ない。でもここで引くわけにはいかない。私はどうしても行きたいのだ。

 「どうしても行きたいの。ダメかな?」

 私は少し上目遣いになって首を傾け、女官長を見上げる。必殺美少女のお願い!

 「仕様がありませんね。せめて近衛騎士団の訓練場にしてくださいませ。明日午後一番で、護衛の近衛騎士に案内を頼んでおきますので。」

 「ありがとう。女官長大好き!」

 私は思わず女官長に抱きついた。女官長は嬉しそうな、少し寂しそうな顔をした。どうしてかな?

 次の日、朝から女官長にこってり絞られた私は、昼食後、護衛兵の案内で近衛騎士団の訓練場に向かった。

 「姫様は、何をご覧になりたいのですか?剣術の試合とかでしょうか?」ニコルと名乗った護衛兵は、私を案内しながら訪ねた。

 私のねらいはそうではなく、トレーニングルームだ。もう丸二日運動らしい運動をしていない。ちょっと剣術も試してみたいけど、まずは筋トレ。この体はまだまだ伸びしろがある。鍛えがいがありそうだしね。

 向こうから、がっしりした体格の30歳くらいの男性が近づいてきた。白銀の見事な鎧を着て、紋章入りのマントをひるがえし、腰には長剣を下げている。絵にかいたような騎士様だ。前腕二頭筋とハムストリングスが美しい。絶対腹筋はシックスパックだ。触ってみたい。服をめくってみたい。

 ニコルの顔が緊張でこわばった。「団長殿。レティシア王女殿下をお連れしました。」

 「ソリッド女官長から聞いている。後は私が引き受けるので、お前は下がってよろしい。姫様、どうなされました?また、剣術のお稽古ですか?」

 え?レティシア姫って剣術の稽古なんてしてたの?

 「あの、私・・・」

 「あ、そうでしたね。失礼いたしました。私は近衛騎士団長を務めております、ケネス・リンフォードと申します。姫様は、女官長には内緒で、私を相手によく剣術の稽古をなさっていたのですよ。」

 「ケネス・・・さん、今日はトレーニングをしているところを案内してほしいのです。」

 「『さん』はいりませんよ。ケネスとお呼びください。姫様はよく、ケネス兄様と呼んでくださっておりました。」

 「ケネス・・兄様・・・」

 「はい、姫様。ではトレーニングルームへ参りましょう。筋トレがしたいのですか?腕がムキムキになったら女官長にしかられますよ?」

 トレーニングルームへ向かいながら、ケネス兄様が話しかけてくる。

 「記憶を失われたとお聞きしました。ご結婚も近いですし、いろいろとご不安なことでしょう。女官長は厳しい人ですが、優しいところもありますので、安心して頼るとよいですよ?私から、女官長を倒す必殺技をお教えしましょう。」

 「必殺技ですか?」

 「はい、『シルク伯母様』という魔法の言葉があります。そう呼んでみてください。メロメロになりますから。」

 「シルク伯母様?女官長は私の伯母様なのですか?」

 「ソリッド女官長は、姫様の母君、ミレーユ王妃様の姉に当たります。自分にも厳しい人ですから、普段は血縁を誇ることなく、一女官長としての立場を貫いていますが、プライベートの時にでもそう呼んであげると喜びますよ。」

 そうなんだ、あの寂しそうな顔はこれが原因だったんだ。これは使わない手はない!

 「ありがとう、ケネス兄様。」教わった必殺技をケネス兄様にも使ってみた。効果は抜群で、初歩のトレーニングに必要なものをいくつか借りて部屋に戻った。

 問題はこれをいつ使うかだ。女官長の前でいきなり筋トレ始めたら、卒倒しそうだし・・・これは『伯母様』パワーを使わないとかな。

 タイミングを図ったようにドアがノックされ、ソリッド女官長が入ってきた。

 「姫様、デニス王子様がお着きになられたとのことで、ご挨拶に伺います。急いでお召し替えをお願いいたします。」

 とうとう来たか。どんな人だろう。気の合う人だといいなあ。

 私は急いで着替え、謁見室に向かった。

 「陛下、レティシア王女殿下がお見えになりました。

 玉座の前に後ろを向いて国王陛下と話をしていた背の高い男性がこちらを振り向き、笑顔を見せた。

 うわあ、王子様だぁ。きらきらと輝くような笑顔がまぶしい!

 きらきら王子様は、私の方に近づいてきて、いきなり私の前に跪いた。

 「レティシア王女殿下。お初にお目にかかります。ハイランド王国第二王子、デニス・エルネスト・ハイランドと申します。末永くよろしくお願いいたします。」

 そういうと、デニス王子は私の手の甲にキスをした。

 「初めまして。ローデシア王国王女、レティシア・エリザベス・ローデシアと申します。こちらこそよろしくお願いいたします。」

 私はどきどきしながらも、なんとか挨拶をした。

 王子は、私を見て微笑み、私の横に立つと、国王陛下に向かって話しかけた。

 「私、デニス・エルネスト・ハイランドは、レティシア姫の夫として、ローデシア王国のため、王家のため、国民のために身をささげることをお誓い申し上げます。」

 「うむ。姫を、我が国をよろしく頼む。それでは、歓迎の宴に移ろう。」

 歓迎の宴は長く続き、私はデニス王子と話す機会もないまま結婚式の朝を迎えた。

  

 

お読みいただきありがとうございました。次はいよいよ結婚式です。

レティシア姫(瑞希)の運命が大きく動き出します。


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