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戌亥寺・正面駐車場

「紫織ちゃんの験力が消えた」


 刹那はヴォクシーの窓から石段の上に視線を向ける。彼女は二列目の座席で、隣で眼を閉じて座っている永遠を支えていた。


 少し前に梵天丸と政宗を従えた明人が瑠菜を支えてながら降りてきた。ダメージが大きい瑠菜を一番後ろの席で横にして、自分は平気だと言い張る明人を英明と一喜が説得して何とか助手席に座らせた。しかし、梵天丸と政宗は何度クルマに運ばれようとも、石段の下に戻り、健気に上を見守っている。


「朱理は戻ってきましたか」


 開けたままのヴォクシーのドアの前に立つ英明が、心配げに尋ねた。直ぐに動けるよう運転席に天城が座っているが、一喜もクルマの外で立っている。


「いいえ、まだです」


 刹那は首を横に振った。英明は今すぐにでも紫織の処へ駆け付けたいはずだ。


 突然、梵天丸がクルマの中に飛び込んで来る。次の瞬間、刹那も永遠の中に朱理の人格が戻って来たのを感じた。


「永遠ッ?」


「う、うぅ……」


 微かに呻き声を漏らしたが特に違和感は無い。恐らく激しく消耗しただけだろう。


「だいじょうぶです。英明さん、紫織ちゃんのところへ行ってあげてください!」


 一瞬、心配そうに永遠を見詰めたが、それでも英明は力強くうなずいた。


「朱理をよろしく頼みます」


 英明が石段を駆け上がる。政宗も一緒に駆け上がり、直ぐに英明を追い越した。


「御堂さんも行ってくれ」


 一喜が英明と入れ替わるようにヴォクシーのドアの前に立つ。


「でも……」


「刹那ちゃん、今は本命ヒロインがヒーローに寄り添う場面だよ。永遠ちゃんはボクたちが見てるから行くんだ」


 天城に言われ、刹那は眼を閉じたままの永遠の顔を見詰めて一瞬悩んだが、結局クルマから降りた。


「あたしはヒロインじゃないけど、ありがとう」


 言い残すと駆け出した。


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