田園 壱
道の両側を緑の田園が延々と続いている。もうすぐ午前一〇時、気温が上がってきているが、まだそこまで暑くはない。むしろ炎天下の方が暑さに強い朱理には有利だが、時の利は得られなかった。
正面には佐伯海を中心に求道会の異能者が並び、後ろも異能者が塞いでいる。両脇は田んぼだから逃げられなくはないが、やるだけ無駄だろう。どちらにしても父と天城を残して逃げることは出来ない。
「初めまして、だよな? それにしても公共の道路を塞ぐのは、従兄として、国会議員として見逃せないな」
一喜の言葉を海は嘲笑う。
「その減らず口は、法眼や悠輝にソックリだ」
「そりゃそうさ、肉親だからな。逆にお前が似ていなくて、本当によかった」
一喜も負けてはいない、皮肉たっぷりの口調で返す。
「その強気がいつまで持つかな?」
「それは脅しか? 佐伯海さんよ。国会議員を求道会の御偉いさんが脅迫していいのかい?」
海の口元がグニャリと歪み、満面の笑みになる。その顔を見て朱理は背筋が寒くなった。
「安心して構わない。今日、社会見廻り組の佐伯一喜議員は飲酒運転で事故を起こして亡くなる」
「ほぅ、面白い占いだが、当たるかな?」
一喜が身構えた。その姿には見覚えがある、法眼の構えと一緒だ。朱理も身構えつつ隣に立つ、刹那に視線を向ける。彼女は遙香から渡されたネームホルダーを握り締めていた。




