アリエスの星 前編
初めまして、arと申します。
12星座を元にしたオリジナル小説です。
ファンタジー要素強めかと思われます。
どうやらこのままここにいても何も始まらないらしく、何かを探すためには移動する必要があるようだった。
ジプシーは歩いた。
しばらく歩くと、どこかの星に辿り着いた。
一面に広がっているのは青い水。舐めてみると何故かしょっぱかった。
覗きこんでみると、小さな何かが歩いていた。
ジプシーは歩き続けた。
またしばらく歩くと、今度はふわふわとした毛のような地面に着いた。
辺りを見渡すと転々と家が建っていた。
どこに行こうかと迷っているうち、ジプシーより少し大きな女の子と、同じくらいの背丈の男の子がやってきた。
「あなた、どこから来たの?」
女の子に問いかけられ、ジプシーは後ろの水溜まりを指差す。
「海から?船もないのに?」
男の子が目を丸くするのを見て、今度はジプシーが問いかける。
「海ってなに?船ってなに?」
「海はその水溜まり。船は、海を渡るための乗り物だよ」
女の子が自慢げに答える。そして、こう続けた。
「ここはアリエスの星よ。私はヘレン、こっちは弟のフリクソス。あなたの名前は?」
「僕はジプシー」
「ジプシーは、海の先のどこから来たの?」
フリクソスに問いかけられ、ジプシーは答える。
「分からない」
「分からないなんて変なの。それで、ジプシーはどこに行くの?」
ヘレンに尋ねられ、ジプシーはまたこう答える。
「分からない」
「何も分からないじゃないか。それなら、僕たちのうちに来なよ」
明るく誘うフリクソスを、咄嗟にヘレンが制止した。
「ダメよフリクソス、お母さんに怒られちゃう。きっと今日も機嫌が悪いもの。また殴られてしまうわ」
「でも、ジプシーはどうなるの?」
フリクソスは不安そうにジプシーを見つめる。ジプシーは答える。
「大丈夫、僕はどこへだって行けるから」
ジプシーの言葉に、ヘレンはどこか悲しそうに笑った。
「そっか…羨ましいな。私たちはどこにも行けないから」
ジプシーはきょとん、と首をかしげた。
「どうして?」
「お母さんに言われてるんだ。家の外に出るなって。今だってこっそり抜け出してきてる」
「お母さんに言われたら、外に出てはいけないの?」
フリクソスは驚いた。そんなこと考えたことすらなかったのだから。
ヘレンも相当驚いていたが、しばらくしてから意を決したようにこう言った。
「ねぇジプシー、私たちも連れていって」
フリクソスは一瞬驚いたようだったけれど、次の瞬間にはこう言っていた。
「お願いジプシー。僕らをアリエスから連れ出して」
二人の願いに、ジプシーは応えた。
「僕は、僕がどこへ向かっているのか分からない。それでいいのなら一緒に行こう」
「やったねフリクソス!」
「やっと逃げられるんだ…!」
ヘレンとフリクソスは顔を見合わせて喜んだ。
ジプシーはやはりそれを不思議そうに見つめていた。




