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独白〜不貞の代償〜  作者: 大倉 雪之丞
第一章〜或る夫婦の場合〜
1/2

貴女は幸せでしたか

まずは第一部。

と或る夫婦の独白でございます。

では、皆々様、ごゆるりとご鑑賞くださいませ。

語り部:今井美樹

「私と一緒になって、貴女は幸せでしたか」

 そんな書き置きと記入済みの離婚届を置いて、あの人は私の前からいなくなった。

 どうしてこんなことになったのか。答えはもう出ているのに、自分に問いかけ続ける。

 わかっていたはずだ。彼との関係を続けていけば、いずれはこうなる事を。途中でこんなことはやめなきゃいけないと何度も考えていたのに、どこかこの関係を続けたいと思う自分もいて。優柔不断な私は結局彼と別れることもできずにずるずると引き摺り、関係を持ち続けた結果が……これだ。

 馬鹿な女だ、こんな女に何年もの時間を縛られたあの人は、きっと後悔しているだろう。あの人もまだ若い。きっと、やり直せるだろう。私も、やり直せるだろうか?

 また、私のような女に捕まらなければいいけど。あの人はどんな人にも優しくて、たくさん騙されてきたから。騙される度に何でもないように笑うけど、本当は悲しくて、悲しくて、泣きたいのを堪えていた。強い人だった。繊細な人だった。だから、きっと今回もとても悲しむのだろう。どこか、誰にも見られない場所で泣くのだろう。かつては私が受け止めていたあの人の悲しみも、今は受け止められない。胸が酷く、苦しい。

 迎えにいかなくちゃ。迎えに行けない。

 慰めてあげなくちゃ。慰められない。

 抱きしめたい。抱きしめてはいけない。

 裏切り者の私が、あの人に何が出来るのだろう。

 こんな汚れた私が、あの人に何をしてあげられる。

 何をしたとして、あの人の傷を抉るだけ。きっと、このままあの人と二度と会わないことを祈りながら、暮らしていくのが正解だ。

 そう考えていくほどに、私の胸はどんどん、どんどん苦しくなっていく。

 いやだ、別れたくない。そんな想いが胸の奥から溢れてしまう。嗚呼、涙が止まらない。

 ごめんなさい、あなた。私の愛しい人。私を愛してくれた人。あなたは私を信じてくれていたのに、その期待を私は裏切りました。

 かつて私の胸を焦がした背徳感も、今や夫への罪悪感と罪の意識として私の心を苛んでいく。ごめんなさい、ごめんなさい。私が悪いんです。あの幸せだった時に戻りたいと願っても、時計の針は決して巻き戻ったりはしないから。私が壊してしまった幸せは、私の手から溢れていく。

 幸せだったかつての日々が、まるで走馬灯のように浮かんでは消えていく。

 まだ付き合いたての頃、初めてのデートで見せてくれたあの人の笑顔、私はあなたの笑顔が好きでした。

 終電を逃してしまって迎えに来てくれた時、困ったような微笑み。私は申し訳なくてあまりあなたの顔を見れなかったけど、あなたの顔を見るとすごく安心しました。

 初めて二人の想いが通じ合った時の肌の温もり。とても暖かくて、安らかであなたの腕の中にいると私はこんなにも愛されていると実感できました。

 そして、プロポーズしてくれた時のあなたの真剣な表情、私との将来を真剣に考えてくれているんだと嬉しかった。

 でも、あなたの笑顔を、微笑みを、温もりを、あなたとの将来を。私は自分の手で、切り捨てたのです。一時の快楽のためだけに。

 最後に見たあなたの表情はとても悲しそうでした。

 その事実が私の胸を締め付ける。せめて、贅沢をいうならばあなたには、私を口汚く罵って欲しかった。責めて欲しかった。そうすれば、私はこんなにも罪の意識に苛まれることもなく、あなたとの思い出を思い出すこともなくいられたのに。

 なんて傲慢な――、と自嘲した時だった。

 ピリリ、ピリリとスマホが鳴る。

 こんな時に、誰だろうか。画面を見ると、そこには

 "今井浩二"と、あの人の名前が書かれていた。

 あの人からだった。なぜ、どうして?疑問ばかりが頭を巡る。だが、同時にあの人とやり直せるかもしれない。そんな希望が出てきた。

 よし、私は一度両手で頬を叩き、気持ちを切り替える。まずは謝罪を。その次にあの人が許してくれるのならばおこがましい願いではあるが、どうか再構築を願おう。意を決して通話ボタンを押した。

はじめまして、大倉雪之丞と申します!

初投稿なので、至らない点、拙い文ではありますが、楽しんでいただけていたら幸いです。

就活中なので、不定期更新になるとは思いますが、出来るだけ週一で投稿できるようにしたいと思います!

よろしくお願いします!

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