対忍者
アカリのスキル
五連苦無 5本の苦無を投げる
黄昏の帳 環状に拡大する煙幕
翻身手裏剣 手裏剣でマーキングをしたところに瞬間移動
ウルティメイト完遂 1回目3mほどの距離を詰めるそして2回目に更なる速さで同じ距離を詰めることができる。
草が程よく茂り広範囲が柵で囲われている。
中は何もなく閑散としていた。
ところどころ地面がえぐれており大木が倒れている。
「ここでいいか?」
「わかった。」
「ここにコインを投げる。落ちた瞬間からスタートだ。かかってきな!」
「ピンッ」
アカリがコインをトスした。小さく「万物に均衡を」と聞こえた。この口癖はゲームの中で何回も慣れ親しんでいるため何も思わなかったがいざリアルで対面すると震える。
これが武者震いなのかと感じつつ翔也は間合いを大きくとる。
なぜなら彼女のウルトのスキルは遠距離攻撃主体である翔也の懐に潜り込むことのできる移動スキルだ。
迂闊に攻撃しようものなら速攻で終わる。
コインが下に落ちた瞬間アカリがウルトで間合いを詰めてくる。予想通り速攻で決めに来るらしい。
翔也はバックステップをとり距離をとる。
これに当たるとちょっとの間行動不能になりジ・エンドだ。
絶対に避けたいスキルであった。
「ふっ」
アカリは不気味な笑顔を醸し出し黄昏の帳をその場で使う。
モクモクと翔也を中心に煙幕が立ち込める。
あたり一面何も見えない。
逆に翔也は思う。アカリは煙幕の中で俺を見えているのかと。
この範囲内では俺は圧倒的に不利であるため走って煙幕の中から出ようとするとクナイが5本飛んできた。
これもまだ読みの範疇。
クナイをジャンプで交わすものの、
そこをアカリは逃さない。彼女はウルトの2回目を発動。
翔也の着地地点を狙う。
だがしかし2回目のウルトで間合いを詰めてくるだろうと予測していた翔也は着地したと同時に横にローリングをして辛うじてウルトを交わすがアカリはもう目の前だ。
アカリの手が光り苦無が翔也の胸付近に現れる。
翔也はすぐさまガントレットを稼働させ、魔力の力を蓄積させた。
光の筋が渦巻いて目の前がぼやけたかと思うと5メートルほど後ろに瞬間移動し煙幕の中から出ることに成功した。
「おい、そうやって逃げているだけか?」
煙幕の中からゆっくりと現れるアカリに煽られる。
だがまだ攻撃の時ではない。
こっちめがけて走ってくるアカリに軽く魔法弾を打つもサイドステップで交わされる。
その間にもどんどん距離が縮まる。
「遅い。そんなんでは私に攻撃は当たらないぞ。」
これも翔也の考えの範疇の中であった。
彼女には追いつくスキルがないのとこんなにもスキルを連射できないのは知っている。
LOLではスキルを打つためにマナもしくは気がないと打つことができない。
俺は前者のマナを使うタイプでマナはスキルを全部一気に撃つことができるがマナに限界があり、無くなると使えないし回復するのも遅い。
一方アカリは気を使う。
気は回復するスピードが尋常ではないがその分減りも早い。
またスキルを重ねて使うことが多い。例えばアカリであると煙幕を使ってクナイで攻撃する。
だが煙幕を張るだけの気しかなかったらたとえ煙幕を張れてもそのあとの攻撃につながらないのである。
つまり全てのスキルを吐き出したアカリは今、手持ちの苦無で俺に直接近づかなければ攻撃できないのである。
そしてスキルのクールダウン通称:CDは全て把握済み。この間に出来るだけ反撃を食らわせたい。
追ってくるアカリを背に翔也も直線上に逃げる。
後ろを見なくてもアカリが追ってくるのが足音でわかる。左腕を後ろに突き出しフラックスショットからの魔法弾を瞬時に発動。
後ろを確認すると、壮大な音と共に砂埃が舞い上がりその中心にドーム型の穴ができていた。
「どこだアカリは。」
アカリを見失って焦る翔也。
「まさか上か!」
こんなので仕留められるわけないと感じ瞬時に判断したのが上。
見上げると爆風に煽られながらも空中で受け身を取りつつ苦無でこちらに狙いを定めていた。
苦無を投げるモーションを見定めて上からの5本の苦無をバク転で交わし。アカリの着地地点に光線をお見舞いする。
直撃した光線でアカリは膝をついた。
アカリはこのまま距離を詰めに入ってもこうやって引き撃ちされるのを理解したのだろう。
逆に走り距離を置こうとした。
『ここだ!!』
ウルトを打つタイミングを計っていた翔也にその時がきた。
ガントレットの宝石にエネルギーをつぎ込むと、マナというか力が吸い取られていくような感覚に陥る。
後ろを向きながら大きく振りかぶってウルトを放った。
「っておい!逆向きじゃないかこれ。」
「知らん。」
反転してうとうとしたのに動作が速すぎてそのまま後ろに向かって発射。
直径5m以上の扇型をしたレーザーが雑草を掻き切り柵を貫通、
範囲内の大木を全て縦真っ二つにして地平線の彼方へと消えていた。
その光景を驚愕の顔でアカリが見つめる。
「何だそれは・・・」
「俺のウルトだ。」
外したことをなかったかのように澄ました顔で言う。
アカリのウルトのcdは後30秒ほど。まだ時間はある。
今度は翔也が反転し追いかけアカリが距離をとる。
光線と魔法弾を交互にアカリ目がけて撃つも、彼女は軽やかなステップで躱す。
面白くなってきた。
翔也はアイバーンからもらったアイテム(リデンプション)を手前にセットする。
これは2.5秒ごに天から光が降り注ぎ味方なら回復、敵なら少量のダメージを与えるものだ。
自分は回復して相手にはダメージを与える。
一見強そうに見えるがそれには相当の技術が必要である。ポイントは2.5秒後だ。それだけの時間があれば試合の戦局は大きく変わる。
現に今アカリは逃げていたが急ブレーキしてこっちに向かって走ってきている。
翔也は慌てたように反転。一気に逃げようとするが間に合わない。
アカリは苦無を一本投げてきた。
翔也は咄嗟に右手でカバーをしたため腕に突き刺さる。それがアカリの最後のスキル。
これは苦無で敵をマーキングどこまでも追いかけてくるという怖いスキルである。
ただこのスキルで最後に詰めてくるのはアカリのスキルを全て把握している翔也にはわかりきっていた。
手前にセットしておいたリデンプションが発動する。
天から光が差し込むと同時にアカリが翔也に急接近する。
翔也には緑の光が見えアカリには赤い光が見えていた。
「くっまさか私の技を読んで・・・」
「当たり前だろ。」
ただアカリは翔也の目の前である。
苦無を5本まともに胸に受け一瞬ひどい痛みが走ったもののリデンプションにより回復。
落ち着いて苦無を抜いた。
一方でアカリは燃えるような痛みを受けていた。
ここで翔也はアーケインシフト (瞬間移動)のcdが上がったため
そのまま距離を取るようにアーケインシフトを決めフラックスショット魔法弾のコンボを撃つが、アカリも負けじと空中によけ翔也に近づく。
着地したタイミングで2回目の黄昏の帳(煙幕)をアカリが使う。
アカリの姿がまたしても消える。翔也は環状に広がる煙幕の中心でカウンター待機をした。
「私の負けだ。」
ゆっくり現れるアカリの目には悔しさが滲み出ていた。