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詩集

御伽の国

作者: 翠泉

 産まれたばかりの雛鳥。

 深く深くまで落ちていく。

 初めて見た美しく楽しい国。

 破った殻を踏み潰しながら歩き出す。


 こんなにも素晴らしい場所なのに孤独な雛鳥。

 まだ思ったように羽ばたけず。

 助けを求めるように甘えた声で鳴いた。

 周囲の喧騒に掻き消された声は遠くに消える。


 明けていく高い空に終わらないよう願った雛鳥。

 自身の存在を確かめたかった。

 産まれたばかりのこの美しい世界で。

 聞き分けのない空は明けていくばかり。


 寂しく消え入るような声で鳴いた雛鳥。

 誰にも見てもらえないまま泣いた。

 周囲の輪に馴染めないまま。

 届かない声は遠くに消えていく。




 月日が経ち大人になった雛鳥。

 羽ばたけるようになり高く高く飛んだ。

 見下ろした美しく楽しい国は小さく見えた。

 こんなにもちっぽけだった。


 大きな声で鳴いてみた雛鳥。

 喧騒をかき消した。

 周囲が揺れるように感じた。

 初めて聴いた空気の鳴動。


 震える羽で触ってみた雛鳥。

 自身の存在を確かめてみた。

 この国に存在していること。

 この世界に存在していること。


 旅立ちの時を感じた雛鳥。

 悲しい声で鳴いてみた。

 夢から覚めていったんだ。

 遠くで嘲笑うように揺らめく蜃気楼。

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