第1話 簒奪
異種婚姻譚といっても人間体しか出てきません。期待された方ごめんなさい。
ですがどうぞご覧ください。
第1話 簒奪
灰色の神殿に横たわる少女がいた。
日が差し込み、暖かな空気で満ちて、時間が止まったと錯覚するほど神殿にはゆったりとした空気が流れている。
神殿の一室、横たわる薄蒼い髪を持つ少女は、儚ない容貌に困惑の色を浮かべていた。一切の穢れが伺えない純真な姿は神々しく、人並み外れて整っている。
そんな美しい少女の両の手足には似つかわしくない無骨な塊が触れている。槍だ。少女と神殿を縫い付けて、それぞれ一本ずつ、計四本、手足に突き立てられている。
手のひら、足の甲を貫通して痛ましい血溜まりが石の床を色付けている。
槍で地に縫いとめられるようにして仰向けに倒れる少女に、しかし苦痛の色は無い。
「――どういうこと?」
「見てのとおりだよ」
少女に続き、縫い付けられる少女を見下ろす別の少女が声をあげる。
槍の内部は空洞だった。石突きが蓋のように開き、霞に似たモヤが立ち昇る。
ここで初めて仰向けの少女は苦しげに表情を歪ませる。痛みではなく、不快感を表すように。
四本の槍から出てくるモヤはやがて量を減らし、同時に、縫い付けられている少女の姿が薄れていく。
「――――――」
互いに見つめあいながら縫い付けられた少女は完全に消える。先ほどまで肉体があった場所にいくつもの宝石が転がった。
立ち続ける少女と、すこし離れたところにいる無言の男が残される。
二人の足元に広がる血溜まりに、色取り取りの宝石たちが身を浸していく。
「バイバイ、お姉ちゃん」
男の横。
立ち尽くす少女は歓喜した。




