7話
下宿先の家は大通りから入った路地の先の住宅にある、二階建ての一軒家だ。この家に先生と家主は二人で暮らしていた。
学校から見ると丁度大通りを挟んだ反対側に位置している
この辺りは昔城下町だったらしく、大通りを挟んで学校側は武士の町で学校がある丘はかつてお城があった場所らしい。対して大通りのこちら側、下宿先の家がある場所は商人や庶民が住んでいる町だったとの事だ。
その下宿先の家に着いた頃にはすでに日は傾き街灯にも明かりがつき始めていた。
あの荒唐無稽な悪い夢のような出来事をこの時間の流れが確実に裏付けていた。
そしてそれ以上に受け付けていたのがこの少女の存在だ。
自分を襲った少女は今自分の隣で先生に抱えられながら眠りについている。
(結局何も聞けずに家まで着いてしまった)
そういえば先生は彼女が俺を襲った理由も心当たりがありそうだった。
「お前さえ」「お前をとらえれば」
彼女の口はは確実にそう言っており、あの鋭い目は俺の方に向いていた。
この事も含めてあとで全て聞こう・・・。
そう決意しながらドアを開ける
「お帰りなさい」
穏やかな声と暖かい空気が俺たちを迎え入れる。
この女性がこの家の主人で、母の知人である周防ちひろさんで現在は先生と同居しているのだ。
母と、先生、ちひろさんは幼馴染で昔から仲が良かったらしく、今でもよく会っており、
俺自身も小さい頃からこの二人には可愛いがってもらっており遊び相手になってもらっていた。
「ただいま」
二人で返事をしながら家の中に入る。
「あら、今日は二人で一緒に帰ってって・・・えっ⁉︎」
ちひろさんは言いかけて異変に気付いた。
「ちょっと晃大、あなたついにやっちゃったの?」
幼馴染の恋人からこう言われる先生にも問題はあるがだが、ちひろさんにしても先生が何をやったと思っているのだろうか。
「ちがう。こっちが襲われたんだ、見りゃ分かるだろ」
(いや、先生、すみません。見て分かる知識で言えばあなたは襲った方です。)
思わず吹き出し笑ってしまった。
とてもじゃないがついさっき俺を助けてくれた先生と同一人物とは思えないが、長い人生においては俺が知っているお兄ちゃん(先生)はいつもこんな感じだった。
俺はいつもの日常に戻った安堵感からか、気を失ってしまった。