5話
少女はよろよろと立ち上がると俺たちの方を鋭く睨んだ。
「っくそ!」
何が彼女をそうさせるのだろう、正直俺にはわからない。
ただ、わからないからこその恐怖感が俺を襲った。
「・・・お前さえ」
吐きだすような声で呟くと、残りの力を絞り出すように獣のような極端な前傾姿勢で構えた。
警戒しているのか、こちらの様子を確認するかのようにジリジリと少しずつ間合いを詰めてくる
「さて、どうするか」
先生は呟くと半身に構える。
「彼女の主人はおそらく俺の知っている魔族だと思うが、俺の知ってる限り彼にはお前を襲う理由はないし、あったとしても刺客を寄こして背後から襲わせるような方ではない。何か理由があるのか・・・。」
間合いを詰めていた少女の足がとまる。
「何をごちゃごちゃ喋ってやがる!ふざけやがって・・・、お前さえ生け捕りにすれば!」
そう言うとグッと足に力を入れて俺に向かって飛びかかって来る。
その瞬間、ドサッと音を立てて地面に倒れこんだ。
「おい!」
2人で駆け寄り声をかけるが返事が無い。
「どうやら気を失っているようだな、」
「先生、この子どうするんですか?」
「そうだな、少し確認したいこともあるしな」
そう言うと先生は彼女の額に手をかざし何か呪文のようなものを唱え始めた。