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第五十七話 凱旋

 ピピピッ ピピピッ


 朝、携帯のアラームが起床時間が来ていることを伝えてくる。

 うう、まだ寝ていたい……。

 昨日と一昨日の疲れが思いっきり残っている。

 怪我は回復してもらったが、消耗した体力等は戻っていないのだ。


 いつもならアラームが鳴る前にシスが起こしてくれるのに、今日は彼女も未だ布団の中だ。


「ん……、えっ!?」


 俺がアラームを止めると同時に彼女が飛び起きる。


「なんやー、もう朝かいな……」

「後五分寝かせて……」


 リコとミキはまだ起動出来ないようだ。

 そりゃそうだよな。


「ごめん悟! 寝坊した!」


 シスは慌てて起き上がるとリコとミキを布団に残して洗面所へと走っていった。


「弁当間に合わないよおおおおおお!」


 洗面所の方からシスの悲鳴が聞こえてくる。

 俺は渋々布団から抜け出して彼女の後を追った。


「いや、今日は弁当じゃなくて学食でいいよ」

「でも……」

「流石に疲れただろ? たまにはいいじゃないか」

「う、うん。そう言ってくれると嬉しいかな」


 仕込みもしてないし。

 朝ごはんも今日はシリアルだけとかでいいと思う。

 というか、疲れすぎててしっかりしたものを食べるのは辛い。


「今日だけ、特別ってことで」

「そう、ね」


 シスも納得してくれたみたいだし、それじゃもう一眠りと洒落込もうではないか。


「でも二度寝は駄目だからね」


 Oh……。


「リコもミキも起きて。布団片付けるよ」

「今日だけ、特別に許してや……」

「そうそう、今日だけ」

「だまらっしゃい」


 無情にも我が家の魔王は俺達の幸せを剥ぎ取ったのだった。

 まぁ、一度生徒会室に寄らないといけないことも考えると、二度寝するほどの時間はないし仕方がないのだが。



「悟! 見て見て!」

「んあー?」


 寮のロビーでテレビを見ているとシスが新聞を持ってくる。

 いつもサラッと目を通して終わりなのに珍しいな。


「悟のこと書いてあるよ!」


 シスは俺の目の前に新聞を突き出してくる。

 うん、近すぎてよく見えないから。


「何? 犯罪者が刑務所から脱走した?」

「そこじゃなくて、ここ!」

「研究所が襲われて研究成果の一部が強奪された?」

「分かってていってるでしょ?」

「まぁな」


 新聞を受け取り、目をそらしていた記事に渋々と目をやる。

 一面記事には『聖骸緑櫻高校 選抜個人戦でワンツーフィニッシュ!』と大きく書かれていた。

 さらに詳細に俺と神宮寺先輩の試合内容が記載されており、百年に一人の逸材とまで書かれてあった。


 あの、能力とかが出始めてからまだ十年なんですけど。


「だるいな」


 教室についたら取り囲まれそうだ。

 今日は疲れてるし、質問攻めにされたら余計なこと言いそうで怖い。


 かと言って休むわけにも行かないしなぁ。

 俺がいない間、綾小路達は綾小路達でクエスト受けてるみたいだし。

 どうなってるか気になる。


 放課後は神宮寺先輩のシゴキもあるしな……。

 いや、今日くらいは多少手加減してくれるかも?

 ないな。


 人数が減った分余計に激しくなるのは目に見えている。

 だが、その分俺達の勝率は上がるのだ。

 感謝しないといけないんだろうけど、やはり考えてしまう。


「さて、そろそろ行きますか」


 俺は新聞をテーブルの上に適当に投げると少し重い足取りで学校へと向かった。


▼▼▼

▼▼


「おはようございます」

「おはよう、疲れは取れたか?」


 生徒会室に入ると神宮寺先輩が出迎えてくれた。

 その顔色からは疲れを感じ取ることは出来ない。

 この人、本当に人間なのだろうか。


「いえ、まだ残ってますね」


 正直に答えると神宮寺先輩はそうだろうなと笑って俺の背中を叩く。


「最初はそんなものだ。すぐに慣れるさ」


 慣れるほどそう何度も修羅場に入りたくはないのですが。

 というか、あるんですか。


「本戦の日程が確定した。例年通り、夏休み二日目からだな」


 そう言いながら神宮寺先輩が俺にプリントを差し出してくる。


「前日入りするんですね」


 プリントには初戦から決勝までのスケジュールの他、宿泊先や移動手段まで記載されていた。

 飛行機で東京まで行って、そこからバス移動らしい。

 飛行機は乗ったこと無いから少し楽しみかもしれない。


「彼女達のチケットも手配するようになっている」


 俺の懸念を先読みして神宮寺先輩はそう言ってきた。

 さすがデキる男は違う。

 シス達のチケットまで自腹と言われたらきつかったからな。

 と言うか、棄権する羽目になっていたかも。


「さて、早めに教室に行っておいたほうがいいと思うが、まだ何かあるかな?」

「いえ、また何かわからない事があったら聞きますから」

「そうか、それでは放課後にな」

「はい……」


 その一言で余計に足が重くなる。

 いや、わかってはいるのだが。


 しかし教室に早めに行っておいたほうが良いって、なんだろな。

 遅刻を心配するにはまだ早いし。

 まぁ特に意味は無いか。


 俺達は生徒会室を後にし、教室へと向かった。



「お、英雄のお出ましだ!」

「我らがヒーロー!」


 教室に入ると武田と宮田が開口一番そんなことを言ってくる。

 雨柳はまだ来てないようだな。


「最後ボロボロだったけどな」

「いやいや、すごかったぜ」

「と言うか、三年生相手にあれだけ戦えれば十分じゃね?」


 そうは言うがな、神宮寺先輩、あれたぶん奥の手を残してると思うんだよな。

 全力の俺とは違い、切り札を隠しきっての勝利だ。

 見た目以上に差があったはず。

 だが、それは先輩と直接斬り結ばなければ理解出来ないだろうな。


「本戦にはあのレベルがゴロゴロいるみたいだし」


 そうでなければ去年、神宮寺先輩が九頭竜の称号を逃した説明がつかない。

 尤も、当時と比べれば今のほうがずっと実力はあるのだろうが。


「おー! 優勝狙いってことか?」

「まじか! 頑張れよ! 応援してるぜ!!」

「ちゃうわい」


 あまりプレッシャーを掛けてくれるな。

 これでも結構デリケートなんだから。


「おはよー」


 宮田達と話し込んでいると綾小路達が教室に入ってくる。


「あ、神無月君、昨日はすごかったね!」

「流石はうちのチームのリーダーだな!」

「うん、本当にすごかった……」


 綾小路達が口々に俺を持ち上げてくるが、くすぐったい。


「あまり持ち上げないでくれよ」

「新聞にも載ってたよ!」


 綾小路が嬉しそうに報告してきた。


 うん、知ってる。

 一面だったもんね。


 ああ、神宮寺先輩が言ってたのはこういうことか。

 先に教室にいないと一斉に質問攻めに合いかねないわけか。

 経験者の言ってことだろうな。


 その後も登校してきたクラスメイトから口々に祝福の言葉をもらった。

 水島先生が無理やり閉めてくれなかったら延々と続いていただろう。

 感謝である。


 その日の授業は途中で寝ても誰からも注意を受けなかった。

 おかげで少し体力の回復をすることが出来た。


 まぁそのなけなしの体力も放課後の模擬戦で使い果たすわけだが。

お読みいただきありがとうございます。

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