第四十六話 検査✕真実✕NH3
「神……君!」
ご飯を食べれば眠くなる。
「神……月君!」
これは仕方のないことだと思う。
それにもう九時を回っており、良い子は寝る時間だしね。
「起きてくださいよ! 神無月君!」
ん……。
「起きましたか?」
水島さん……?
目を開けると彼女が俺の顔を覗き込んでいた。
ゆっくりと俺の意識が水面に浮かんでくる。
「これから検査なんですからしっかりしてくださいよ」
ああ、そうだったっけ。
寝起きのせいか頭がはっきりしない。
あれ?
ここはどこだ?
さっきまで検査室にいたはずなのに、何故か白い壁に囲まれた部屋の白いベットに俺は座っていた。
窓もない、扉もない、そんな部屋に。
「……、素朴な疑問なんですけど」
答えたくなければ別にかまわないのですが、と水島さんは続ける。
「神無月君は将来何になりたいとかあるんですか?」
将来、か。
冒険者になりたい。
でもそれはデータベースにアクセスしたいからであって冒険者として活躍したいわけではないんだよな。
「なるほど。それではダンジョンを神聖視するグループ、神の従者についてはどう思っていますか?」
……、連中とは相容れない。
狂信者としか思えない。
「そうなんですか。それでは貴方の精霊とモンスターについては?」
そうだな。
相棒であり、家族かな。
あとは引かれるかもしれないけど、少し気になると言ったとこかな。
「気になる、ですか? 相手は精霊ですよ?」
正直可愛いし、あれだけ懐かれるとな。
「能力者に従うよう、好意を持つ様、能力の覚醒時に刷り込まれていただけだとしても?」
それは初めて聞いたが……。
仮にそうだとしたら彼女達の捻じ曲げられた意思を俺は良いように利用していたことになるのだろうか?
だとしたら俺は……。
「はいそこまで」
え?
ミキ?
「それ以上の干渉は許さないよ」
声は聞こえるが姿は見えない。
どこに居るんだ?
「なっ!?」
「水島さん、パパに余計なこと言わないでくれるかな」
「ど、どうして!? ここは私のっ」
「そんなこと、どうでもいいだろう?」
ミキの声に水島さんが慌てた様子を見せる。
そういえばシスとリコの姿も見えないが、彼女達は?
「パパ、そんな女にかまってないで早く戻ってきてよ」
戻るってどこに?
そう思うっているとゆっくりと視界が歪み始める。
「待ってるよ」
ミキの声を最後に俺の意識は闇の底へ落ちていった。
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「ん……?」
「あ、起きた?」
「ミキ?」
目を開けると目の前にミキの顔があった。
彼女は俺の頭を撫でながら穏やかな微笑みを浮かべていた。
「おはよう、パパ」
「あ、ああ。おはよう?」
ここは……。
ああ、そうか。
寝ぼけていた頭が覚醒してくる。
食事を終え検査室に移動した俺は、検査用の服に着替えて診察台に横になり検査をしている最中に寝てしまっていたのか。
目だけで軽く左右を見渡す。
俺の寝ている診察台の周りには変わらず測定機器が設置され、何やらデータを表示している。
「すまん、寝落ちしてたみたいだ」
俺は起き上がろうとし、体中に測定機器が設置されていたことを思い出す。
これ、勝手に外しちゃまずいよな。
かと言って付けたまま起き上がったら機械を壊してしまうかもしれないし。
それにしてもなんか変な匂いがするような。
「くふふっ、うん、気にしないでくれ」
うん?
なんか妙に機嫌がいいな。
「どうした? 何か良いことでもあったのか?」
「そうだね、うん、良いことと言えば良いことかな?」
「なんだそりゃ」
まぁ機嫌がいいならいいや。
彼女達の性格は割りとピーキーなところがあるから怖いんだよな。
怒ると何するかわからないし。
「ミキの検査はもう終わったのか?」
ミキは半分モンスター、半分精霊の特殊個体だから俺と一緒に検査していたはずなんだが。
「うん、一応ね」
「一応って」
「よくわからなかったみたいだよ」
「まぁそりゃそうか」
特殊すぎるだろうしな。
今日の検査も何かわかればラッキーくらいなものだろうし。
なお、シスとリコは他の部屋で待機している。
きっと盛大にお菓子を食い散らかしていることだろう。
また太っても知らんぞ。
「っと、水島さんは?」
ちょっと申し訳ないと思いながら彼女の姿を探す。
「ああ、あの女ならそこで寝てるよ」
「え?」
ミキが診察台の向こう側を指差す。
寝てるって、それに指を指している方向がやけに低くないか?
首だけ向けてそちらを確認すると、そこには水島さんがうつ伏せで倒れていた。
「え!?」
「ああ、大丈夫だよ、ちょっと寝ているだけさ」
「ね、寝てるって一体何が?」
検査していただけのはずなのに、何故水島さんが寝る、と言うより倒れることに?
いや、それよりも彼女を介抱しないと。
倒れたのなら頭を打っている可能性がある。
いくら彼女の身長が低いとは言え、打ち所が悪ければどうなるかわからない。
「ミキ、とりあえず部屋の外に出て誰か呼んできてくれ」
「しかたないな。わかったよ」
そう言ってミキは人を探しに部屋の外へと向かった。
その際に自業自得だとか聞こえた気がしたが、気のせいかな。
俺は体に付けられていたコード等を剥がし、診察台を降りようとして一度止まる。
えっと、うん、こっちは大丈夫だな。
足元に気をつけながら無事な地点に足をつける。
「水島さん! 水島さん!」
「う、うう……」
名前を呼びながら肩をつつくと一応だが反応は返ってきた。
よかった、とりあえず死んではいないようだ。
いやまぁ、ミキも大丈夫って言ってたからそこまで心配はしていなかったけれども。
とりあえず抱き上げようかと思ったが、頭を打っていると動かすのは良くないと聞いた事がある。
それに俺は診察用の服で薄着、そして男だ。
そして彼女は一応女性である。
セクハラだとかそういう心配も考慮すれば不用意に触れるのはまずかろう。
決して色々と溢れ出てお近づきになりたくない状況になっているからではない。
あくまで彼女のことを考慮した結果である。
えんがちょ。
なお、彼女はミキが呼んできた女性職員に介抱され、無事の確認が取れた。
いやーよかったよかった。
俺とミキは別の部屋で待機していたシス達と合流すると、来た時と同じく高級車に乗って家路につく。
なんとか日をまたぐ前に帰れそうでよかった。
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