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閑話 オリエンテーション

時系列的には4話と5話の間にある話になります。

イマイチな感じがするのですが要望もありましたってことで。

総合評価1万ポイント記念としてボツった話の復活です。

「さてどうするか」


 教室内には既に誰も残っておらず、クラスメイトは全員適当にグループを組んで何処かに行ってしまった。

 俺も雨柳と一緒に回ろうと思っていたのだが、奴は俺が声をかけようと思ったときには既に姿を消していた。


 かと言って綾小路さんのグループに混ざるのも気が引けるし。


 そんなことを思っているうちに俺はぼっちになっていたのだった。

 柔らかな日差しが教室注ぎ込み、爽やかな風が慰めるように俺の頬をを撫でる。


「二日目でいきなりぼっちかよ」


  俺は一人呟いた。


「何言ってるのよ、私が居るじゃない」

「ああ、そうね」


 精霊を一人って数えて良いものなのだろうか。

 友達は精霊だけとか、かなり痛いんじゃないかな。


 というか、オリエンテーションって普通は引率とかあるもんじゃないんだっけか。

 如月先生の言っていた救済措置ってやつを調べるには都合がいいかもしれないけど。

 席に座ったまま俺はなんとか良い所探しをするも、この状況のメリットはそれくらいしかなかった。

 悲しい。


 能力が戦闘向きでない以上、新たに能力を手に入れる以外に冒険者になる道はない。

 一応ランクアップで新たな力を得られる可能性はあるものの、基本となる能力の発展系となる事がほとんどみたいだし。


 俺の場合、システムウィンドウだからそれの発展系となると生物を格納出来るようになったりとかか。

 あとは格納した状態で時間経過させられる程度だろう。

 便利な能力ではあるものの、それでは冒険者になるなんて夢のまた夢だ。


 この学校には生徒会の下部組織として、ダンジョン調査委員会なる組織があることは入学式の日に貰った資料に書いてあった。

 詳細は不明だが、その名の通りダンジョンに関わる組織のはず。

 そこに所属できれば俺にもチャンスが有るのではないか。


「よし、行ってみるか」


 俺は痛む足を引きずりながら生徒会のある特別棟へ向かうことにした。

 この時間に部活動紹介もやっているみたいだが、俺は部活やるつもりは無いしね。



「なんじゃこりゃ」

「すごい人混みだね」


 シスの言うとおり生徒会室の前の廊下は新入生で溢れかえっていた。

 考えることは皆同じということだろう。

 たとえ良い能力をもっていても覚醒度やランクを上げないと宝の持ち腐れだ。

 授業でダンジョンに潜るのは当分先だし、回数も多くない。

 そうなると選べる選択肢は限られてくる。


 生徒会室の扉が開き、中から女子生徒が出てくる。

 出遅れた俺は遠巻きに見ることしか出来ないが、人混みの隙間から見えたその姿に俺は息を飲んだ。


 腰まで流した艶やかなブロンドヘアー、穏やかに微笑む口元。

 そしてこの喧騒の中、悠然と、そして堂々と周囲を見渡す大きな瞳。

 自分の魅力を理解しているのか、軽く施された化粧が彼女の魅力を最大まで引き立てていた。


 綺麗な人もいるもんだ。

 周囲の喧騒をも忘れて思わず見つめてしまう。


「いてっ!」


 急に脇腹に痛みを感じ、我に返る。

 シスの方を見ると、彼女は頬を膨らませて俺を睨みつけていた。


「なんだよ?」

「別に?」


 別にって、そんな顔で俺を睨みつけてなにもないってことはないだろうが。

 何でそんなに怒ってるんだ?

 嫉妬とか?

 いや、ありえないか。


「それじゃ、これからダンジョン調査委員会主催のレクリエーションを始めるよー」


 シスに気を取られていると人混みの中心から柔らかく、しかしよく通る声が聞こえた。

 この声の持ち主もきっと先程の美人さんなのだろう。


「ダンジョンの調査は注意力や洞察力、そして柔軟な発想力が必要なの」


 声が耳に気持ちいい。

 周りの雑音は気にならない。

 っと、真面目に説明を聞かねば。


 そこで、と彼女は続ける。


「これから皆には学校の中に隠されたこのアイテムを探してもらいます」


 そう言って、彼女は手に持っていた砂時計を頭上に掲げた。


 不謹慎だが、その際に揺れた胸部装甲に俺は思わず目を取られる。

 いや、俺だけではない。

 殆どの男子生徒、そして一部の女子生徒の視線をその豊満なる母性は釘付けにした。


「うぐっ!?」


 再び脇腹に痛みが走る。

 先程と同じ場所に、先程と同じ角度で、先程より強くシスの肘が突き刺さる。


「お前はっ!」

「しっ、まだ説明中だよ?」


 く、こんにゃろう……。

 いや、落ち着け。

 たしかに今はそれを見ている余裕なんて無いはずだ。

 レクリエーションとは言え、良いところを見せれば後で声をかけてもらえるかもしれないし。


 しかしなるほど、探索系の模擬クエストってことか。

 隠せるってことはその程度の大きさってことかな。


「能力の使用は自由、とにかく一番最初に見つけてそれを私に教えてくれればクリアーよ」


 ふむふむ。

 見つけるだけでいい。

 ただし、その事を伝えなければいけないと。


「制限時間は一時間。昼のチャイムが鳴るまでね。それじゃスタート! がんばってね!」


 彼女の掛け声と同時に蜘蛛の子を散らすが如く新入生は走り出した。

 その勢いに押され、壁に張り付く。


 廊下は走っちゃ駄目だぞ。

 と彼女が注意するも効果はないようだった。


 しかたないな、濁流が通り過ぎるのを待つことにするか。



「それじゃ俺達も行くか」


 再び出遅れてしまった。

 遅れを取り戻さないとと少し焦りながら一歩を踏み出そうとした俺に制止の声がかかった。


「え? 悟、どこいくの?」

「どこって、とりあえず手当たり次第に探すしか無いだろ」

「うん?」


 説明する時間が惜しいのだが、一応相棒だしな。

 ちゃんと説明するかと彼女と向き合う。


「いいか。学校内に隠されているあの砂時計を探して、生徒会に報告する。それがこのゲームの趣旨だ。おーけー?」

「うん、不思議だよね。砂時計そこにあるのに皆どこか行っちゃうんだもん」


 へ?


「おー、やるね、君」

「はい?」


 後ろから先程の女子生徒の声が聴こえ、振り返る。

 そこには天国(おっぱい)があった。

 おっと間違った。

 そこには(くだん)の女子生徒が居た。


 ふわっといい香りが漂ってくる。

 頭が蕩けて(とろけて)しまいそうだ。


 天は二物を与えずというのは嘘だな。

 彼女の存在がそれを証明している。


「ここまで早いのは神宮寺先輩以来じゃないか?」


 野太い声が俺を現実世界に引き戻す。

 声の方を見ると先輩と思わしき男子生徒が生徒会室から出てくるところだった。


「神宮寺先輩は開始直後だったらしいし、それには劣るんじゃねーの」


 続いて出てきた男子生徒が苦笑いしながら先に出てきた男子生徒へ声をかける。

 腕章をつけているところを見ると、二人の男子生徒は生徒会の役員なのだろう。


 彼らの反応を見る限り、シスの答えが正解ということか?

 なるほど、柔軟な思考、ね。

 わかるかっ!


「伊集院、お前また腕章を外してるのか」

「カバンに入れて持ち歩いてるんだから良いじゃない。霜月は細かすぎるのよ。猫屋敷もそう思わない?」

「ノーコメントでー」


 この綺麗な先輩は伊集院って名前なのか。

 少し得をした気分だ。

 これだけで今日ここに来たかいがあった。

 そう思えてしまう。


 霜月と呼ばれた先輩が眉をひそめ、まったくと呟く。


「まーまー、霜月ちゃん、後輩君の前だしそれくらいにしとけば?」

「むぅ」


 猫屋敷と呼ばれていた先輩が霜月先輩を諌めるがその口元は楽しそうに笑っていた。

 性格は真反対にみえるが、仲がいいのあろう。

 お互いに遠慮なく言い合える友人関係はいいもんだよな。


「期待の新人発掘成功ってとこじゃん?」

「しかし気がついたのはそこの精霊だろう」


 猫屋敷先輩が目出度いんだからと続けるも、霜月先輩は不満げにため息を吐いた。


「精霊の能力は本人の能力、だろ?」

「俺はそうは思わないが」


 うん、俺も霜月先輩と同意見だ。

 だって俺、むしろ否定してたくらいだし。

 褒められるのは嬉しいが、それが自身の力でないものだと少々つらいものがある。


「霜月ちゃんは硬いねぇ」

「はいはい、そこまで。新入生君が困ってるわよ」


 伊集院先輩に諌められ、彼らは茶化し合いを止めてこちらに向き直る。

 急に変わった彼らの雰囲気に少したじろいでしまうな。


「俺は霜月 右京(しもつき うきょう)だ」

「俺っちは猫屋敷 寅雄(ねこやしき とらお)じゃん」

「そして私が伊集院 灯(いじゅういん あかり)よ」


 よろしく、新入生君。

 と、彼らは三人声を揃えた。


「えっと、俺は神無月 悟(かんなづき さとる)です」

「そっか、君がかぁ」

「えっと?」


 伊集院先輩が値踏みするように俺を見た後シスに視線を向けた。


「君が彼の精霊ちゃんなのよね?」

「シスです。精霊ちゃんじゃありません」

「あら可愛い。大丈夫よ、あなたのご主人様を盗ったりしないから」


 少し突き放すようにシスは言うが、伊集院先輩はどこ吹く風だ。

 彼女はめげることなくシスに話かけ、そしてシスはシスでその勢いに流され二人で何処かに行ってしまった。

 あ、俺の荷物ごともっていきやがった。


 部屋の鍵はもってるけど、財布が鞄の中だ。

 ジュースが飲みたかったけど今日のところは我慢するか。


「すまんな、神無月。ダンジョン調査委員会はああいう奴ばかりではないから、そこは誤解しないでくれ」


 いや、きっと伊集院先輩はシスに気を使ってくれたんじゃないかな?

 うん、そうに違いない。


「いえ、お淑やかそうで素敵な方だと思います」

「「ぶふぉっ!」」


 俺の発言に先輩達が二人揃って吹き出した。


「あ、あいつがお淑やか!?」

「くっ……、くくっ……」


 最高の冗談だと猫屋敷先輩はゲラゲラと笑い出す。

 霜月先輩も口元に手を当て必死に抑え得ているが、我慢しきれないらしく笑いが溢れていた。


 解せぬ。



 半日後、俺はその理由を身を持って知るのだった。

あまりぱっとしない話なんですよねー(;´~`)

まぁ、おまけ的に捉えていただければと思います。


ともかく、皆様のブックマークや評価のお陰で総合評価一万ポイント越えれました。

ありがとうございました。

まだまだ続きますのでお付き合いいただければ幸いですm(__)m

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