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第三十九話 デウス・エクス・マキナ

ちょい長めです。

胸糞注意ですのー。


ご都合主義万歳。

「そして神無月君の両親にも感謝してるの」

「どういう意味だ」


 五年前に起こったスタンピード、それには俺の両親が密接に関わっていたらしいことは知っている。

 しかし詳しい内容は俺は知らない。

 そしてその事は一般には公開されていないのだ。

 俺はその情報を、両親の死の真相を知りたくて冒険者を目指していたわけだが、彼女は何か知っているということなのだろうか。


「あれ? 神無月君、もしかして知らない?」

「何がだ」

「うーん、そっかぁ……」


 困ったなと言いながら彼女は目を伏せる。

 そのまま少しの間、髪を指に巻きつけながら何かを考えていたようだが顔を上げた。


「まぁいいや。それで神無月君、今日ゴミ箱に封筒を捨てなかったのは封筒を持ってくるのを忘れちゃったからだよね?」

「い、いや」

「だってそうじゃないとおかしいじゃない? うん、おかしいよ」

「……」

「神無月君は、私達の仲間でしょう?」

「私達っていうのは誰のことを言っているんだ」

「あはは、そんなの決まってるじゃない」


 神の従者、ダンジョンを崇拝する集団のことだと彼女は語った。


「私達と一緒に、世界を正常に戻そう?」


 狂信者の瞳というのはこういう風になるのだろうか。

 俺を見ているようで、何も見ていない。

 微笑みを湛えた口元から出て来る言葉は空虚にしか聞こえない。


「どうして……」

「うん?」

「どうして俺なんだ?」


 俺の両親が関係あるとしても、それだけで俺を仲間に引き込もうとしたとは考えにくい。

 他にも理由があるのではないか、そう思えてしまうのだ。


「どうしてって、神無月君は一番に神様の恩寵を受けているじゃない?」

「恩寵……?」

「最初神無月君に近づけって言われた時はどうしてかわからなかったけど、一緒に行動しててわかったよ」


 偶然と思っていたが、初めてあった時から仕組まれていたということなのだろうか。


「おかげで随分とモンスターは殺されたしダンジョンも潰されちゃったけど、それも神の導きだよね」


 スタンピードをタイミングよく発生させるのは難しいんだよと彼女は笑った。

 出来すぎていたとは感じていたんだ。

 怪しいと、思ってはいたんだ。

 しかし、しかし彼女が噛んでいただなんて……。


「神無月君は私達と一緒に来るべきだって。ね? わかったでしょ?」

「綾小路さん。いや、綾小路」

「うん?」

「俺は、お前達とは一緒に行けない」

「ご両親の事、教えてあげれるよ? 今、私の手を取らないと一生後悔すると思うな?」

「それでもだ」

「……、どうしてかな?」


 どうしてか?

 そんなの当たり前だ!


「無関係の人を、罪のない人達を巻き込む可能性があったんだぞ!?」


 俺はそう訴えるが彼女は苦笑いをしながら仕方のない犠牲だと言うのだった。


「それが運命なら逆らうべきじゃないんだよ」


 話が通じない。

 とりあえず撤退すべきだろう。

 少なくとも彼女が冷静になるまでは。


「話すことはもう無い。俺は帰るぞ」


 両親のことは知りたいが、咎人の手を借りてまで急ごうとは思わない。

 そのようなことをすればきっと、両親は悲しむだろうから。

 それに今彼女の手を取ったら、きっと彼女はもう戻ってこれない。


「帰すと思う?」


 彼女の眼光が煌めく(きらめく)


「パパに手を出すつもりなら遠慮なしだけど?」

「私達の前で悟を脅すってどういう意味かわかってるのよね」

「塵すら残さんで?」


 シス達が彼女を睨みつける。


「……、神の恩寵を一身に受けているのに何で理解できないんだろ。わかんないなあ」

「私達の仲間には、ならないんだね?」

「ああ、綾小路こそ、こっちには戻ってこれないのか?」


 両親の呪縛にとらわれる必要はない。

 自分の幸せを追ってもいいのではないか。

 そう思うのだ。


「……、それこそ無理な相談だよ。私は神様に救ってもらった。今更それを無しには出来ないもの」


 一瞬目を泳がせたものの、彼女は目を閉じ、そしてまた開いた。

 先程までの剣呑さが嘘のように消え去り、ゆったりとした空気が戻ってくる。


「それじゃ話はこれでおしまい。明日のダンジョン攻略、がんばろうね?」

「……、ああ」

「そうだ、神無月君」

「まだ何かあるのか」

「今話したこと、二人だけの秘密ね?」


 二人だけの秘密ってもっと色気のあるものだと思ってたよ。

 こんな殺伐したものだなんて考えもしなかった。

 というか、シス達も居るし二人だけってわけじゃなかろうに。


 俺は首肯を返すと綾小路の部屋を後にした。

 しかし、彼女を救うにはどうすればいいのだろうか。


 そもそも彼女は本当のことを言っているのか?

 何か理由があって嘘をついているのではないだろうか。


 ああ、くそっ。

 頭がごちゃごちゃしてよくわからなくなってきた……。


▼▼▼

▼▼


「眠い……」


 翌朝、寝不足気味の目を無理やりこじ開けなんとか時間前に集合場所にたどり着く。

 昨夜は色々考えすぎてあまり眠れなかった。

 冷静に考えれば(たち)の悪い冗談だろうに。


「神無月君、おはよう」

「綾小路……」

「うん? どうしたのかな?」

「いや、なんでもない。おはよう」


 昨日のことは実は夢だったのではないだろうかと一瞬思ってしまう。

 いや、そう願ってしまうと言ったほうが良いかもしれない。


「神無月! おはよう!」

「おはよう……」

「おはよ、ふぁあ……」


 寺門さんと佐倉さんにも挨拶を返すもついあくびが出てしまう。


「何だ? 神無月、寝不足か? 実は私もでな。昨夜は楽しみでなかなか寝付けなかったのだ」

「私もだよー。ね? 神無月君」


 ちょっと目眩(めまい)がすると言いながら綾小路は俺にウィンクしてくるのだった。

 夢であって欲しかったが現実であることは間違いないようだ。

 思わずため息をつきそうになってしまう。

 流石に冗談だとは思うが、念のため明日にでも神宮寺先輩に相談してみよう。


「伊集院先輩、まだ来てない……」

「あー、伊集院先輩はいつも集合時間にギリギリで来るから」

「間に合うなら良い……」


 うん、ほんとね。

 伊集院先輩はギリギリに来るけど遅刻したことはないんだよな。

 ある意味すごい。

 そう思っていると寮の方から小走りで伊集院先輩がやって来た。


「危ない危ない。ちょっと今日はやばかったわ」

「大丈夫ですか?」

「なんとかねー。さ、行きましょ」


 若干の不安を抱えながら俺達は伊集院先輩を先頭にダンジョンへと向かった。



「っと! はっ! ほっ!」

「んっ! えいっ!」

「……」

「むむむっ!」


 伊集院先輩が前衛、綾小路と俺が中衛、そして寺門さんと佐倉さんが後衛という隊列でダンジョンを探索していく。


「あ、そこトラップあるから気をつけて」

「はいっ」

「わかりました」

「勉強になる……」


 俺にとっては今更の内容も多いが、伊集院先輩の説明は上手でとてもわかり易いものだった。

 良く言えば安定した、しかし悪く言えばルーチンワークの戦闘をこなしていく。



 綾小路が何か仕掛けてくるかと警戒していたが、特段何かする様子も見えない。

 今日のところはなにもしないということか。

 いや、そもそもただの冗談の可能性もあるしな。


 少しずつ体を戦闘になじませて漸くダンジョンに慣れてきた頃、俺達は崖の淵をゆっくりと進んでいた。

 ここを抜ければポータルのあるホールにたどり着ける。

 その時だった。


「あっ……」

「綾小路っ!?」


 綾小路が崖から足を踏み外したのだ。


「手をっ!!」


 彼女を警戒していた俺だからこそ気がつけた、手が伸ばせた。

 ゆっくりと倒れながらこちらに手を伸ばす彼女。

 伸ばした手と手が絡み合う、その瞬間だった。

 何故か彼女は手を戻し、そして俺を見つめたまま、奈落の底へと落ちていった。


「綾小路!?!?」


 俺の叫びは虚しく谷底へと消えていく。


「綾小路さん!?」

「穂乃果!?」

「……っ!?」


 なん、で……?

 なんで俺の手を取らなかった……?

 俺が、俺が仲間じゃないから、仲間にならなかったから手を取らなかったというのか!?

 何でだよ!

 綾小路!!


「綾小路さん……」

「ふむ……」

「ますたー……」


 シス達が心配そうに俺の顔を覗き込んでくるがそれどころじゃない。


 くそっ!

 くそっ! くそっ! くそっ!


 間に合わなかったのか?

 俺は、仲間を失うのか?

 彼女の人生を、不幸なままで終わらすのか?


 俺には、何も出来ないのか!?

 いや、違う。

 俺には出来ることがあるじゃないか。


 何が不幸だ。

 何が無しには出来ないだ。


 そんなの、俺が否定してやる。


「リコ」

「ん、ええん?」

「当たり前だ」


 仲間の、ためだ。

 その為なら禁忌だって喜んで犯そう。

 ああ、神に睨まれたって知るもんか。

 不幸を背負ったまま、死なせたりはしない。

 綾小路、俺はお前を逃がさない。


「俺は、彼女の不幸を否定する」


▼▼▼

▼▼


「ひゃー、危ない危ない」

「もー、気をつけてよねー」

「神無月君、ナイスフォロー……」


 チームのメンバーが口々に俺を持ち上げてくる。


「神無月君が手を伸ばしてくれて助かったよ」


 俺の胸元から綾小路の少し呆けたような声が聞こえる。


「……」


 そして俺の腕の中には綾小路が居た。

 そう、居たのだ。

 俺はしっかりと彼女の手を取ることに成功し、彼女を助けることが出来たのだ。


「神無月君?」

「あ、ああ。なんとか間に合ってよかった」

「うん、それでさ」

「ん?」

「そろそろ、離してくれないかな?」

「あ、ああ! すまん!」

「ううん、ありがとね?」


 慌てて綾小路を解放する。

 思いっきり抱きしめてしまった。

 ちょっと気まずい。


「ぶー!」

「パパ、後でボクも、ね?」

「うちもやっ!」

「後でな……」


 なんかどっと疲れた。

 いや、強力な能力を使用してこの程度で済むなら御の字なのだろうけれど。


「まぁ、なんとか無事でよかったわね。綾小路さん、気をつけてね?」

「はい、すみません」

「それじゃあと少し、気を取り直して行こー!」


 その後、俺達は特に何事もなくダンジョンの探索を終えることが出来たのだった。


▼▼▼

▼▼


「あ、ますたー、たぶんやけど能力ランクアップしとるから」

「またか」

「またかって、うちランクアップしたの初めてやで?」

「あれ、そうだっけ」


 なんか結構な頻度でランクアップしてる気がしてるけどリコは初めてだったか。

 来週早々にでも確認しとかないとな。

あれ、タイトル詐欺になっちゃったぞ?(てへぺろっ

まぁまだ続くのでご容赦くださいなー。


お読みいただきありがとうございます。

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