第三十七話 絡み合う視線
キーンコーンカーンコーン……。
「それでは本日はここまで。宿題のプリントは次回の授業で回収するからなくさないようにな」
先生が授業の終了を宣言する。
今日は殆どの授業で宿題を出されてしまった。
一つ一つは少ないけれど、ちりも積もれば山となるでそれなりのボリュームだ。
部活をやっている生徒は結構辛いのではないだろうか。
教室の掃除班が机を前に寄せ始める。
あれ、地味に面倒くさいよな。
今綾小路さんが必死に動かしている大量に置き勉してるやつの机なんかは特に大変だ。
「今日は俺達は階段だっけ?」
「えっと、確かそうだったはず」
雨柳に言われて教室の掲示板を見る。
うん、階段で間違いないな。
俺達は掃除道具を持つと階段へ向かった。
俺のいる班はシス達も手伝ってくれるおかげで少し早めに掃除が終わる。
本人達は他にすることもないからと言っているが、結構助かっているんだよね。
他の奴らの精霊はあまり器用ではないらしくこういうことは出来ないみたいだし。
「うっし、終わりっと」
「おつかれー」
「さってと、早く帰ろうぜー」
ちりとりからゴミが落ちないように気をつけながら教室へと向かう。
毎日掃除しているとは言えそれなりに塵が出るんだよな。
一体どこから来てるんだか。
「あ、神無月君。お疲れ様」
「綾小路、ゴミ捨てか?」
「うん。神無月君は捨てるもの何かある?」
「ちょうどよかった。これ、頼む」
そう言って俺はゴミ箱にちりとりを突っ込んでゴミを落とした。
ふと視線を感じて綾小路さんの方を見る。
「うん? どうした?」
「ううん、なんでもない。それだけ?」
何故か綾小路さんが俺をじっと見つめている。
なんでもないと言うが、そういうふうでもなかった気がするが。
まぁいいか。
「ああ、これで全部だ」
「そっか。それじゃ行ってくるね」
「行ってらー」
一体何だったんだろうか。
別に寝癖がついてるとかじゃないと思うけど。
割りと真面目に授業は受けてるし。
「あ、悟。今日は生徒会室行かなきゃいけないんじゃなかった?」
「っと、忘れてた。サンキュ」
シスに言われて思い出した。
神宮寺先輩から今日の放課後に生徒会室に来るよう連絡があったんだった。
何時に来いとかいう指定はないが、先輩を待たせるわけにも行かない。
早く行かないと。
俺達は少し早足で生徒会室へと向かった。
「神無月、こないだの遊園地の件は市民の不安を煽るため公表はできない。すまないな」
生徒会室に入ると開口一番に神宮寺先輩から謝罪を受けた。
「もちろん、報酬も出ない」
「それは、まぁ仕方のないことですし」
皆は少し残念がるかもしれないが、元々偶然巻き込まれただけだしね。
「代わりと言ってはなんだが、生徒会からクエストの斡旋をしようと思う」
「クエストですか、皆喜びます。ありがとうございます」
俺はなんだかんだで何度もクエストを受けているが、普通の生徒はなかなか受けれるものではない。
特に一年生だとAクラスでも月に一回受けれるかどうかだ。
Fクラスでは年に一回受けれれば御の字と行ったところだろう。
授業で潜る回数を入れても年に十回もダンジョンには潜れない。
「少し急ぎになってしまうが今週末にレベルⅠのダンジョンに潜ってモンスターの間引きを頼みたい」
「今週末ですか? 随分と急ですね」
「ああ。他のチームに依頼していたのだが、どうも季節外れのインフルエンザにかかってしまったみたいでな」
この時期にインフルエンザとは珍しい。
俺達も気をつけておこう。
さて、それよりもリーダーとしてちゃんと仕事しないとな。
「なるほど。ダンジョンの詳細はありますか?」
「ここにまとめてある。注意事項もあるから最後までしっかり目を通しておいてくれ」
さすがは神宮寺先輩。
抜かりはない。
「それと、資料にも書いてあるがコアの破壊は厳禁だ」
神宮寺先輩は説明を続ける。
内容をまとめると、対象のダンジョンは市から学校が管理を委託されているダンジョンで、練習用のダンジョンとして使用しているらしい。
「それに罠も多い、と」
「そうだ」
「罠も破壊禁止ということですか?」
「察しが良くて助かる。破壊するとまた別の場所に新しい罠が出来てしまうからな」
訓練で入った挙句死者が出ましたじゃ笑えないもんな。
罠の位置を全て把握しておくためにも破壊は禁止と。
「日曜日には予定が入ってるので土曜日にダンジョンに潜ることにします」
「わかった。問題はないと思うがくれぐれも注意してくれ」
いくら訓練用、罠や道が全て把握されているとはいえ、ダンジョンはダンジョンだ。
一瞬の油断が命取りとなるのは理解しているつもりだ。
「念のためダンジョンに入るときと出る時に連絡をしてくれ」
「定時連絡は一時間毎でいいですか?」
「そうだな、それくらいでいいだろう。定時から十五分以上連絡遅れた場合救援を手配するが救援部隊のダンジョン入りまでは三十分程度かかると思ってくれ」
連絡が取れる状態じゃなくなってから救援部隊のダンジョン入りまで最大で二時間弱かかるってことだな。
救援というより遺品回収に近い形になってしまいそうだ。
まぁ仕方がないことではあるが。
とは言え注意していれば十分受け入れられるリスクだ。
そして一日かけてじっくりモンスターを狩ることが出来るから覚醒度も上がるかもしれない。
そのメリットは捨てるには惜しい。
「それで、引き受けてもらえるかな」
「もちろんですよ」
適当にモンスターを狩るだけだしね。
クエストとしてはかなり楽な部類に入る。
チームのメンバーの強化には最適だ。
それにバイト代も入るし。
その後、ダンジョンへの入場申請書にサインを行い、俺は生徒会室を後にしたのだった。
「今週末もお仕事かいな」
「仕方ないだろ」
「日曜日はパーティーのメンバー絡みだから仕方ないけど、土曜日は休みたかったなー」
「ボクはパパと一緒ならどこでもいいかな」
「またいい子ぶっちゃって」
このバイト代が皆の生活を支えているんだ。
すまんが我慢してくれ。
美味しいもの食べさせてあげるからさ。
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