第二十七話 収穫
「なんだ、驚いちゃった」
「そうだよね、そんな訳あるはずがないもんね」
「当たり前……」
なんとか適当に園芸部員の子たちを丸め込んだものの、佐倉さんの目が冷たい……。
助けたじゃん、何でそんな目をするのさ?
俺が悪いんじゃないのにどうしてこうなった。
「神宮寺会長から渡されたアイテムだったのね」
「ああ、ちょっと事情があって試している最中なんだ」
「それにしても本当に人間みたいね。オートマタって言うんだっけ?」
「俺もよくわからんからなんとも言えないな」
うん、嘘は言っていないぞ。
内容がヤバそうだから余計なこと言えないんだよ。
「佐倉さんゴメンね」
「許してっ」
「別にいい……」
「さすが菖蒲!」
「褒めても何も出ない……」
微妙な空気が流れる温室、しかし救世主が登場した。
「うちいちご食べたいんやけど」
さすがリコ、空気を読まない発言に痺れる憧れるぅっ!
見た目的にも許される所あるのがすごい。
まぁ、こいつたぶんそれを理解してやってるんだろうけどな。
「あ、リコちゃんだっけ? この辺のはまだ無理だけどあっちのがちょうど食べごろだよ。シスちゃんも一緒に行く?」
「行く行く!」
シス達は俺達を置いて園芸部員の子達とイチゴを食べに行ってしまった。
おい、精霊。
「それで……、なんで、その、ママ……?」
佐倉さんは頬を染め、恥ずかしそうに聞いてくる。
「だってママはママだからね」
「……、土と植木鉢の準備をしたのが私だから……?」
「うん、そうだよ」
佐倉さんすげぇ、今のでわかったのかよ。
エスパーすぎるだろ。
もしかして能力か?
「そっか……、なら私がママだね……」
「分かってもらえてよかった。ありがとね、それからこれからもよろしくね」
「ん……」
えぇー、どうしてそうなるの。
俺、理解できないんですけど。
「あー、それで鉢を返しに来たんだけど……、その、土がなくなっててさ」
「わかった……。この土、鉢に入れて持って帰って……」
「ママありがとう!」
「ううん……、私の子供だから当たり前……」
……。
マジで理解できねぇ。
どういう流れよ、これ。
鉢植えを返しに来たはずなのにその鉢植えに土を足してもらって俺は温室を後にするのだった。
なお、シスとリコは一時間後に帰ってきた。
大量の苺を抱えて。
「へー、シスとリコは苺が好きなんだ?」
「うん、甘酸っぱくて美味しいからね」
「美味しいものはなんでも好きやでっ!」
「そうなんだ? パパも好き?」
「まぁ嫌いではないな」
「わかった」
「まって、わかったって何?」
嫌な予感しかしない。
頼むからなにもしないでくれ。
「え、生やしてあげようかなって」
何をですか。
どこにですか。
どうやって!?
「こうやって手を結んで、ちょっと力入れると……」
「おお……」
ミキが何かを捕まえるかのように結んだ手を開くとそこには苺があった。
「え? ミキってそういうこと出来るんだ?」
「うん、これでも植物のモンスターだからね」
二足歩行で歩き回り、喋って、飯も食う植物とか聞いたことねぇよ。
それ、動物っていうんじゃないですかね?
「もしかしてお米とかも出せる?」
「お米ってあの白いやつ?」
「そそ」
「ん、多分出せると思う。ただ、殻とかはついたままになるけど……」
「精米機って近くにあったかなぁ」
もう何でもありだな。
「あと、栄養がないと作れないからたくさん出すなら栄養が要る」
「栄養って?」
「さっきママからもらったやつみたいなの」
なるほど、土か。
あれ、そうすると得なようであまり得というわけでもないのか?
まぁいざという時以外は頼らないほうが良いだろう。
今日はとりあえず試しに出してもらってみるけど。
その日の夜ご飯はミキの出したものとリコが捕まえた魚のみで作られることになった。
ミキは一度見た植物ならなんでも作り出せるらしい。
ただし、無制限というわけではなく栄養豊富な土を消費するみたいだ。
「ママの土はとても栄養が豊富なんだ」
「へー、そこら辺の土とは違うんだ?」
「試してみればわかるよ。はいこれ、そこの土から栄養を吸い上げて作ったやつ」
「見た目は普通のいちごだね。頂きます。……、なんかぱさついてる? それに甘くない……」
「そういうことだよ」
でも時期を考えずに作れるのはかなりすごいと思う。
しかもノータイムだし。
「はい、お待たせしました。三人の合作料理だよー」
「おお、美味そうだな」
春菊の煮浸しに魚の西京焼き、それにアラ汁か。
三つ葉の香りが心地良い。
「ご飯は特に力を入れてみたんだ」
「うん、このご飯、おかずなしでも行けるくらい上手い」
俺基本的におかずなしではご飯食べれないんだけど、これなら全然行ける。
俺達はむしゃぶりつくように夕食を食べたのだった。
「調子、どう……?」
翌朝、教室に入ると佐倉さんがすぐに俺達に近寄ってきた。
「ああ、おかげさまで好調だよ」
「そう、よかった……」
そう言うと彼女はミキを抱き上げ、頬ずりをした。
二人の幸せそうな笑顔を見ると心が暖かくなってくる。
「うん、おかげで昨日はパパ、ボクにむしゃぶりついてすごかったよ」
「ちょ!?」
「……」
いや、佐倉さん、そんな目で俺を見ないで!?
誤解だから!
というか、ミキ、お前分かってていってるだろ!?
「あははっ、またそのうち土貰いに行くね」
「うん……、ミキならいつでも歓迎……。ミキを大切にしてね……、パパ……」
「佐倉さんまでパパ言うのはやめてくれ……」
「ふっ……、娘を独占してるんだからこれくらい良いでしょ……」
「娘って」
「何……?」
「いや、なんでもない」
「時々様子見させてね……」
「おぅ」
名残惜しそうにミキを下ろすと彼女は小さく手を振って自分の席に戻っていった。
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