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第二十六話 大きく育て

 ゴールデンウィーク明けの月曜日。

 昼飯を食べ終わりトイレに行く途中の俺に話しかけてきたやつが居た。

 名札を見る限りBクラスの生徒みたいだが。

 放課後に人気のない焼却場に呼び出すなんて……。

 もしかして、告白!?

 ……、そんな訳がないな。

 呼び出してきたやつ男だし。

 行かないでしつこく付きまとわれるのも面倒だし、行くしか無いかなぁ。

 そんなことを思いながら俺はハンカチで手を拭いた。



「逃げ出さずによく来たな。その度胸だけは認めてやるよ」

「けっ、ズルばっかしてるやつにしては堂々としてるじゃねーか」

「女子にちやほやされて調子乗ってんじゃねーぞ!」


 いや、ズルだとかちやほやとか、心あたりがないんですが。

 むしろ面倒くさいことに巻き込まれてばっかりで辟易(へきえき)してるくらいですよ?


「なんのことだ?」

「あ゛ぁ゛!? お前がズルして勲章もらったことは分かってんだよ!!」

「どうやってダンジョン調査委員会のクエストにねじ込んだか知らねーけどFクラスに配属される様な雑魚が勲章貰える程活躍できるわけねーだろうが!!」


 ああ、そういう。

 しかし勲章って国がちゃんと調査した上で出してるからズルとか出来ないんだけどな。

 それくらい彼らもわかってはいるのだろうけど。


「本当なら俺達がクエストに参加してその勲章をもらうはずだったんだよ!!」

「いやー、それはないわー」

「んだと!?」

「いや、今のは俺じゃなくてだな」


 リコの余計なセリフに男たちは激高する。


「ねー、もういいんじゃない? 私、夕方から伊集院先輩に縫い物教えて貰う予定になってるんだけど」

「このッ! 舐めやがって!!」


 だから俺のセリフじゃないと……。

 精霊のやったことの責任は能力保持者にあるとは言え、流石にこれは理不尽な気が。


「もういい、お前ボコるわ」

「痛い目見ないと理解できないようなバカに薬つけてやるよ!!」


 野生の生徒が現れた!

 生徒は精霊を繰り出してきた!


「いけ! 光牙(こうが)!」

「痛い目見せてやれ! 風神(ふうじん)

「教育してやるよ。やれ雷波(らいは)


 三人が能力を使用し、俺に攻撃してくる。


「「「ぎゃあああああ!?!?!?」」」

「ねー、もういいー?」

「うち、早くおやつ食べたいわ」


 しかしシスの展開したシステムウィンドウに全て弾かれる。

 更に運悪く(・・・)跳ね返った先には彼らが居たのだった。


「こ、この野郎……」

「パパ、今日は園芸部に用事があるんじゃなかったの? 時間は大丈夫かい?」

「ん、ああ。あまりないな。ただなぁ」


 俺はちらりと彼らの方を見る。

 彼らの目には怒りの炎が上がっており、ここで帰るとまた厄介なことになるのが目に見えていた。


「それならボクの力を見せてあげるよ」

「……、殺すなよ?」

「わかってるよ。パパが困っちゃうからね」


 そう言うとミキは一歩前に踏み出て彼らの方に手をかざす。


「な、何を……んぁ……?」

「ふぁ……」

「ううぅ……」


 ミキの手からきらめくものが放出され、彼らに降り掛かった。

 そして彼らの反応はなくなった。


「なにしたんだ?」

「ちょっと寝かせただけだよ。彼らが目覚めた時には仲間内で揉めたって記憶にすり替わってるから安心してくれ」

「そんなこと出来るのか」

「それとパパに危害を加えようって考えたら全身がだるくなるようにしといたから」

「おおぅ……」


 こいつ、見た目に反してかなりやばいぞ。

 やっぱりモンスターはモンスターってことなのだろうか。


「大丈夫だよ、パパが困ることは絶対(・・)ならないようにするから」

「そ、そうか……」


 ならいい、のか?

 しかし記憶をいじれるとか怖すぎる。

 いつの間にか皆洗脳されててもおかしくないんだよな。

 注意しとかないと。


「それよりも早く園芸部にいこうよ」

「あ、ああ。そうだな」


 俺はミキに手を引かれて園芸部の温室へと向かった。



「どこかなどこかなー?」


 園芸部の活動エリアは広い。

 なにせ学校中の花壇は全て園芸部の手によって管理されている。

 大変みたいだがその分優遇されているらしい。


「佐倉さん、今日は温室なんや?」

「ああ、イチゴの世話をしてるらしい」

「えー、そうなの? しまったなぁ」


 コンデンスミルク持ってくればよかったとか言ってるシスは置いとくとして、ミキの足取りが妙に軽やかなのが気になった。

 佐倉さんとは面識ないはずなんだけどな。


「佐倉さんとそんなに会いたかったのか?」

「そりゃそうだよ。当たり前じゃないか」


 何がそりゃそうで当たり前なんだか。


「そないですか。たぶんあの温室だな」


 温室の中で誰かが作業しているのが見える。

 たぶん佐倉さんだろう。


「ふむ、パパ、早く行こう」

「はいはい」


 俺はミキにせっつかれながら温室へと急いだ。



 温室の扉を開くと同時に、ミキは佐倉さんに向かって一直線に走り出した。

 何が冷静な彼女をそこまで駆り立てるのだろうか。


「ママ! 会いたかったよ!」

「は……?」

「ブフーッ!!」


 やべっ、鼻水でちゃった。


「おかげで元気に育ってるよ! ありがとう!」

「は……? は……?」

「パパはちょっと頼りないけど、それでも頑張るから!」

「え……? え……?」


 君は、何を、言ってるんだい?


「神無月君……、この子、何……?」

「えっと、いや、なんて説明すれば良いんだろうか」


 モンスターですとはいえないよな……?

 え、なんて言えばいいの?

 教えて誰か!


「ママ……、ボクのこと忘れちゃったの……?」

「そんなこと言われても……」


 うん、一切面識ないもんね。

 俺も説明に困る。


「ボクだよ、パパとママの愛の結晶、だよ……?」

「はあ!?」

「なに!? 菖蒲(あやめ)、あんた子供居たの!?」


 え、誰?

 茂みの向こう側から人影が現れた。

 ああ、他の園芸部員の子かな。


「居るわけ……、ないでしょ……」

「いやだってその子!」

「え!? まじ!? 神無月君と!?」

「違うって……」


 すまない佐倉さん、俺には君を助けてあげれそうにないよ……。

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