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第十九話 遠征初日

 バスは軽快に高速道路を走り抜け、ちょうどお昼に目的地に到着した。

 駐車場の周りには草原が広がり、心地の良い風が吹いている。


「う~、体がごわごわになっちゃった」

「流石に四時間はしんどいな」


 伊集院先輩と猫屋敷先輩が伸びをしながらバスから降りてくる。


「一度ホテルに入って各自部屋に荷物をおいてくるように。昼食後は一度集合してミーティングを行う。その後は各自自由にしてくれていいが、夕食は六時から八時までの間に取ってくれ」


 一度全員を整列させ、神宮寺先輩が注意事項をメンバーに伝えていく。

 なお、引率の教師は車酔いでグロッキーになっており、既に自分の部屋の中で休んでいるそうだ。


「ここに居るメンバーには言う必要はないと思うが、くれぐれも他校の生徒とトラブルを起こさないように注意してくれ。では、解散」


 各自荷物を取るとホテルへと向かっていく。

 俺も伊集院先輩達と一緒にホテルへと向かった。



「神無月君……」

「伊集院先輩?」


 俺はホテルの廊下で伊集院先輩に呼び止められる。


「私の部屋に、来てくれない……?」


 彼女は俺の手を両の手のひらで包み込み胸元に持っていくと上目遣いで聞いてきた。


「あ、はい、荷物は部屋で出せば良いんですね」

「ぶー、ノリが悪いー」


 伊集院先輩の悪ふざけも最近では慣れてしまい動揺することもない。

 何よりシスが反応していない時点でからかっているだけだとわかるし。


「早く片付けて飯に行かないとうちのお姫様たちがご立腹なので」

「あー、はいはい。んじゃこっちよ」


 俺達は伊集院先輩の荷物を彼女に割り当てられた部屋で出した後、自分に割り当てられた部屋へと移動した。

 それにしても男子と女子が同じフロアって良いのだろうか。

 ダンジョン調査委員会の面々はそれだけ信用されてるってことなのかな。


「お~」

「ひろーい!」

「絨毯フカフカやね!」


 広い客室の奥には草原が広がり、風が走り抜けている様子がはっきりと見える。

 足元もフカフカの絨毯が敷かれており、かなりいい部屋だということがわかった。

 だが、この広い客室には重大な欠点があったのです……。


「ベッドが一つしか無い……」

「あ、ほんとだ。それじゃ今日は同じ布団だね」

「久しぶりにますたーと一緒に寝れるんやね!」


 フロントに行ってエキストラベッドを出してもらうか。


「なん、だと……」

「なん、やて……」

「いや、だって駄目でしょ」


 同じ部屋なのもかなりアウトな気がするけどそこは譲るとして、流石にベッドまではなぁ。

 アウトじゃなくても狭いしね。

 無理に詰め込んで寝ても疲れが取れない。

 ましてやこれからダンジョン探索を行うのだ。

 下手に疲労を残して足元を掬われては敵わない。


「ほら、早く飯に行くぞ」

「むぅー」

「今日の昼は焼肉食べ放題らしいぞ」

「肉やて!?」

「そうだ、肉だ」

「早く行こ!! お肉がなくなっちゃう!」

「おー」


 ふう、シス達がチョロくて助かったぜ。

 後は隙きを見つけてホテルの人にお願いするだけだ。



「全員揃ったな。それではミーテキングを行う。昼食後で眠くなるだろうが頑張ってくれ」

「すぴー……」

「くかー……」


 隙きだらけである。


「……、シス君達は、精霊だから……」


 堂々と爆睡するシスとリコを見た神宮寺先輩は、プルプルしながら説明を始めた。

 うん、ごめん……。


「今回の合同調査は例年通り三十階層までとなる。我々はダンジョン北東エリアが担当だ」

「はいはーい! チーム編成はどうするんですかー!」

「柳田、それについては後で説明する。一チーム四人を原則とするが、今回は神無月が居るからな、各チームはある程度散らばった形での調査を行っていくこととする」

「神無月のマップを利用するってことですね」

「そうだ、先日のスタンピードで覚醒度が上がったおかげで実用に耐えうるレベルにまでなったからな」


 俺、神宮寺先輩には能力の説明ちゃんとしてなかった気がするんだけど。

 ああ、神宮寺先生から聞いたのかな。


「神無月は本隊配置とし、伊集院君が連絡役として付け。護衛として猫屋敷と霜月も本隊だ」

「えー、そりゃないっしょ」


 猫屋敷先輩が不満の声をあげる。

 同じパーティーとなれたのに何が不満なのだろうか。


「神無月がマップで各自の位置とモンスターの位置を把握、俺が判断し伊集院が音波で指示を伝える。これが一番効率のいい配置となる。異論はあるか?」

「いや、それだと俺達のパーティー、ドロップアイテムがまず手に入らないじゃん」

「今回の目的はドロップアイテムではなくあくまで調査だ。ドロップアイテムはおまけにすぎない」

「でもさー」

「不満はわかる。だからエリアボスからのドロップアイテムは君達パーティーのものとしよう」

「まぁ、それならいいか」

「それと、俺達の前に調査したチームから、今まで出現していなかったモンスターが少数だが出現していると言う情報が入っている。各自留意するように」


 日本に三箇所あるレベルⅣダンジョンは各地域が持ち回りで毎月調査を行っているんだったよな。

 調査と言いつつ実態はモンスターの間引きらしいが。

 深層は冒険者達が間引いてくれているが、冒険者だけだと上層部まで手が回らないんだったか。


「神無月、わからないことはあるか?」


 神宮寺先輩が俺に水を向けてきた。

 ほぼほぼ理解は出来たのだが、一つわからない事がある。


「あの、エリアボスって?」

「ああ、レベルⅣ以上のダンジョンには時折エリアボスと呼ばれる存在が出現してな。他のモンスターより遥かに強いのだが、その分アイテムもドロップしやすいのだよ」

「なるほど」

「とは言え一つのパーティーで挑むのは無謀だから、仮に見つけても他のパーティーが来るまで待つように」

「わかりました」


 少し不安だが、前と違って今回は準備万端だ。

 本隊配置で人員も多いし。


「他に質問はあるか? なければミーティングは終了とする。それでは明日の出撃まで各自英気を養っておくように。解散」



「……」

「先風呂行ってるぞ」

「なんで……」

「いつの間に……」


 ミーティングの後、俺はホテルの人にエキストラベットの手配を頼んでおいたのだが、彼女達は一切気がついていなかった。

 なんせ爆睡していたので。

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