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第十六話 受章の理由

 昼食を終えて綾小路と別れた俺達は生徒会室へと向かった。

 神宮寺先輩には色々聞きたいことがあるしね。

 メインは勲章だけど、ゴールデンウィーク中のことだとか長距離移動大会についてとか。


 うららかな春の昼下がり。

 特別棟の三階には爽やかな風が吹いていた。

 俺は特に気負いなく生徒会室のドアを叩く。


 コンコン


「入ってまーす」

「あ、すみません」

「入ってるんやったら仕方ないなー」

「そうね、またにしましょ」


 先客がいるなら仕方がない。

 また後にしよう。

 俺達は生徒会室に背中を向け、来た道を戻るのだった。


「まってええええええ!!!」


 階段を降りて踊り場に着いたあたりで後ろから誰かを呼び止める声が聞こえた。

 気にせずそのまま進み、二階に着いたところで後ろから体を拘束される。

 淑女としてそれはどうなのだろうかと思っていると彼女はシス達に剥がされたのだった。


「神無月君ひどくない!?」

「伊集院先輩、お久しぶりです」

「うん、久しぶり。じゃなくてさ、帰んないでよ、私が怒られるじゃん!」

「いや、そうしとくべきかなって」


 ノリ的に考えて。


「帰られたら神宮寺先輩に絞られるから戻ってきてよぉ……」

「はは、冗談ですよ。俺も神宮寺先輩に用事がありますし」

「よかった……」


 伊集院先輩と一緒に再び生徒会室へと向かう。


「無事退院できてよかったですね」

「うん、これも神無月君のお陰だよ」

「俺は何もしてませんよ」

「いやいや、剣付き旭日章所持者が何を言ってるの」

「それについて聞きたかったんです」

「うん? 校長先生の話通りだと思うけど?」


 それで分からなかったから聞きに来たんですよ。

 生徒会、いや、神宮寺先輩が俺を推薦してくれた理由がわからない。

 単純に厚意でやってくれたとは思えないのだ。


「神宮寺先輩は生徒会室に居るんですよね?」

「先にラインとかで聞いてくればいいのに」

「ラインって使い方よくわからないんですよ」

「え? 今時変わってるわね」

「機械音痴なもので」


 どうもこういうのは苦手なんだよなぁ。

 現状、携帯は電話でしか使っていない。

 ダンジョンに行くのも集合場所に決められた時間に行くだけだし、その連絡も口頭だったからな。


「一応友達にアプリは入れてもらったんですけど」

「ふーん、んじゃ使い方教えてあげるわよ」

「じゃ、神宮寺先輩から話聞いた後にお願いします」

「ええ、おねーさんに任せておきなさい!」


 コンコン


「どうぞ」

「失礼します」


 今度は普通に生徒会室に入る。


「神宮寺先輩いますか?」

「ああ、神無月か。ちょうど君の話をしていたところだったんだ」

「あはは……」


 神宮寺先輩は一度俺を見た後に伊集院先輩に視線を向ける。

 伊集院先輩が気まずそうに顔をそらすと再び俺に視線を向けた。


「聞きたいことがあるんだろう?」

「ええ。勲章の話、聞いていなかったので」

「まぁそうだろうな。驚かせてすまない」

「いえ、名誉なことだとは思いますし」


 それに家計が助かる。

 もしかしてそれを知って推薦してくれたのかな?

 ないか。


「今回の勲章は名誉というより釘刺しだ。それを心得ておいてくれ」

「釘刺し、ですか?」

「ああ。姉、神宮寺先生から言われなかったか? 君の新たに得た能力はかなり稀有なものだと」

「姉って、姉弟だったんですか」

「不本意ながらな」

「なるほど」

「さて、立ち話もなんだ。お茶を用意するから向こうで待っていてくれ」

「分かりました」

「……、今回はお茶請けをたくさん用意してある」

「なんだかすみません……」


 前回シス達がクッキーをすべて食べ尽くしてしまったから、気を使ってくれたようだ。

 少し申し訳ない気分になってしまう。


「冗談だ。いや、お茶請けを多めに用意したのは事実だが」


 神宮寺先輩も冗談言うのな。

 真面目なタイプが言うと冗談なのか本気なのか区別がつかない。


「神宮寺先輩の冗談わかりづらいから言わないほうがいいっすよ」

「猫屋敷……」

「いえ、お気遣いありがとうございます。楽しみにしてますね」

「ああ、待っていろ」


 俺達は神宮寺先輩に促されると客間へと向かった。


「またせたな」

「いえいえ」


 ソファーに座ると同時に神宮寺先輩がやってくる。

 その手にはティーサーバーとカップが。


「ん? クッキーはないんか?」

「直ぐに伊集院が持ってくる。ちょっとまってくれ」

「楽しみやなぁ♪」


 俺の膝の上でリコが足をブラブラさせながらにへへと笑う。

 うーん、もしかしてこいつ分かっててやってる?

 左隣ではシスが目をキラキラさせていた。

 全力で食べる気だな、こいつ。


「はいはーい。お待ちどうさまー」

態々(わざわざ)すみません」

「私も食べるから気にしないで」

「そないですか」


 そう言いながら伊集院先輩は神宮寺先輩の隣に座り、持ってきたクッキーに手を伸ばす。

 これ、来客用ではないのね。


「伊集院君、これは来客用なのだが」

「いいじゃないですか、堅いこと言わない言わない」


 クッキーをつまみながら今回の受章について神宮寺先輩が説明をしてくれた。


「つまり、勲章を与えることで余計な動きをしないように牽制した、と」

「そうなるな」


 勲章を与えることで承認欲求を満たし、かつ責任感から公共に害ある行動を取らせないようにするわけか。


「これは心遣いでもある。君も高校生活を役人に囲まれ、監視されながら過ごしたくないだろう?」

「それはまぁ」

「周りからの視線が監視の代わりというわけだ」


 たしかに、勲章所持者として注目されているわけだからあまり変なことは出来ない。

 よく考えてあるな。

 コスト的な問題もあるのだろうが、俺にとってはいい事ずくめといったところか。


「他に質問はあるかな?」

「いえ、納得できましたから」

「そうか、力になれてよかった。それでは僕はまだ仕事が残っているから失礼するよ。のんびりくつろいでいってくれ。伊集院君、後は頼む」

「ありがとうございました」

「はいさー」


 さて、次は伊集院先輩からラインの使い方を教えてもらわないと。

お読みいただきありがとうございます。

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