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第十五話 チーム結成

「それではホームルームを始める。皆席につけ」


 これが終われば待ちに待ったゴールデンウィークだ。

 尤も、お金のない俺はバイト三昧な訳だが。

 ああ、雲ひとつない青空が憎い。


「明日からゴールデンウィークで五連休となるが、羽目をはずしすぎず、当校の生徒としての自覚を持って行動してくれ」


 当たり障りのない注意事項を如月先生が述べていく。


「来月は中間テストがある。赤点は取ってくれるなよ。ああ、それから連休明けに長距離移動大会があるので心しておくように」

「長距離移動大会ですか?」


 雨柳が質問の声を上げる。


「そうだ」

「それって賞品とか出るんですか?」

「そうだ。個人賞とチーム賞それぞれあるからな。チームは一チーム四人以上六人以下で好きな者同士で組んで良い。ただし、当日四時半までに一人でもゴールできない奴が居ると全員失格となるから注意しろ」


 好きな者同士で組めって、結構残酷な言葉だよね。

 俺、どうしよう。


「失格の場合ペナルティーってあるんですか?」

「詳しいことは今から配るプリントに書いてある。各自読んでおくように」


 続いて武田が質問するも如月先生は答えず、プリントを配るとホームルームの終了を宣言した。


「お疲れー」

「またねー」


 解散となったが教室にはまだ多くの生徒が残っている。

 それにしても、長距離移動大会ね。

 マラソン大会と何が違うのだろうか。

 プリントには目的地とルールが簡潔に記載されてあるみたいだけど。


「神無月君、ご飯食べよっ」

「おぅ」


 綾小路さんに声をかけられてプリントを畳む。


「今日は天気もいいし外で食べない?」

「ああ、いいな」

「中庭の東屋が結構いい感じみたい……」

「へー、じゃあそこで食べるか」

「賛成ー!」

「誰も居ないとええんやけどなー」


 俺達は弁当を持って中庭へと移動した。


「ゴールデンウィーク中はバスケ部は合宿なんだよな」

「ああ、他校との練習試合も控えてるからな。今日も午後からは練習なんだ」

「鈴香、バスケ好きだよね……」

「そりゃね。楽しいからなっ。菖蒲もやらないか?」

「遠慮しとく……。園芸部の活動が忙しいし……。ゴールデンウィークは私にも予定あるし……」

「シスとリコは?」

「いや、私精霊だし」

「うち、身長足りないやん」


 まぁ、リコだとドリブルすら難しいかもだしな。

 ドリブルしようとして体ごと跳ねているのが目に浮かぶ。


「あ、そっか。んじゃ穂乃果は?」

「あはは、私運動音痴だからさ」

「教えるって!」

「遠慮しとく。それよりも長距離移動大会のルール、もう見た?」


 綾小路さんがそう言いながらプリントを取り出す。


「なんか目的地めっちゃ遠いよね……」

「うん、さっき携帯で調べたら直線距離で五十キロメートルはあるっぽい」

「どんだけ……」

「手段は選ばないみたいだから、電車移動ってなるのかな」

「一応電車ならギリギリ時間内に到着できそうだけど、電車代が辛いな」


 俺は少し肩を落とす。

 精霊って大人料金なのだろうか。


「でもそれだと皆横並びだよね」

「能力使えってことやないん?」

「あー、たぶんそうなのかな」

「リコちゃん頭いい……」

「ふっふっふ、もっと褒めてやー!」

「よしよし……」


 佐倉さんから卵焼きを強奪しているリコをよそ目に俺は考える。

 自転車、ママチャリで片道五十キロは無理。

 と言うか直線距離で五十キロだから実走だとどれだけになるか。

 それに確かゴール地点結構高い所だと思ったんだよな。


 電車は電車代がきつい。

 しかも駅からゴールまでも地味に遠いし。

 徒歩、間に合わない。

 能力、使えるの無い。


 詰んだな。


「悟、何沈んでるのよ」

「シス……、そりゃ制限時間内にたどり着くのがかなり厳しいからさ」


 一位の学食の食券三ヶ月分は惜しいが、仕方ないだろう。

 参加賞の食券一枚も制限時間内にゴールする必要がある。

 チーム戦も最初から脱落が確定してる俺とチームを組んでくれるやつなんて居ないだろうし。

 まぁこっちの賞品は生徒会からクエストの斡旋だから俺には不要だけど。


「え? なんで?」

「なんでって言ってもなぁ」

「飛んでいけばいいじゃん」

「いや、そんな能力……、え、もしかしてシステムウィンドウに乗って?」

「行けるでしょ」


 ……、確かにいけないことはない気がする。

 むしろこれしかなくね?


「え? 神無月君、飛べるの?」

「もしかしたら、だけど」

「本当なら助かる……。駅まで遠いし……」

「向こうの駅についてからゴールまでも結構あるし、菖蒲にはしんどいかもな」

「死んじゃう……」


 ただ、システムウィンドウは一メートル×二メートル程度の大きさだ。

 こないだ覚醒度が上がったとは言え、同時に六枚しか出せないからなぁ。

 安全を考えると全方位を囲っておきたい。


「結構窮屈だと思うけどそれでも良いか?」

「だいじょーぶ……」

「別にいいだろ」

「うん、神無月君ならいいよっ」


 だから綾小路さん、そういう発言はですね。

 まぁいい、とりあえず出来るかどうか試してからだな。


「弁当片付けたら試してみよう」

「おっけー!」


 結論。

 飛べた。

 システムウィンドウってこんな使い方もできるんだね!

 ……、良いのかこれで。


「よかった……。これで安心……」

「流石勲章受章者だな!」

「いや、関係ないだろ」


 というかそれに触れるのはあまりしてほしくないな。

 正直分不相応だと思うし。

 いや、年金はありがたいけどさ。


「それじゃ、チーム結成ということで!」

「よろしくな!」

「お願いします……」

「おー」


 なんかあっさりチームが出来てしまった。


「これなら一位狙えるんじゃない?」

「同じ学年内なら行けるんとちゃう?」

「総合一位は流石に厳しいか」

「そうだな、神宮寺会長も居るし」


 それにダンジョン調査委員会のメンバーはエリート揃いだからなぁ。

 かなり厳しいんじゃないかと思う。

 ここ半月の間にクエストで何人かと会ったけど、化物としか思えない人もいたし。


「あ、そうだ。どうやって生徒会から推薦もらったの?」

「知り合いが居るの……?」

「あー、それは……」


 俺はちらっとシスの方を見る。


「シスちゃんと生徒会の人が知り合いってことか?」

「まぁそんなところだ」

「へー、シスちゃんはどうやって生徒会の人と知り合いになったの?」

「い、言えない……」

「言えないって」

「シスは伊集院先輩とますたーの財布で豪遊したんやで」


 誤魔化そうとしたシスにすかさずリコのツッコミが入る。

 うん、まぁそれくらいにしておいてやってくれ。

 お陰でリコとも会えたんだし。


「ちょっとリコ!?」

「ぴゅ~♪」

「口笛吹けてないし!!」

「みゃみゃ!? ひゃにをするうううう!!」


 おおぅ、口に手を突っ込むのはやめとけ、汚いから。


「二人共仲いいんだな」

「いいのか? あれで」

「本当に仲悪いなら口利かない……」

「そういうものか」


 仲いいなら良いや。

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