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第十話 新たな能力

 並んだ三つの同じ顔が三者三様に表情をくるくる変える。


「これはすごいねぇ」

「いやいや、驚きだよ」

「とんでもないねっ」


 次の日、能力値の検査と能力確認をするため学校にきた俺に、神宮寺先生達は驚きを隠せないでいた。


「うーん、覚醒度はGだけど、ランクⅥか」

「やっぱりこの子がいたダンジョン、レベルⅢで間違いなさそうだね」

「それよりもさ、この能力地味にすごくない?」

「そうだね、地味だけどすごいよ」

「うん、すごいと思う。というか、洒落にならない? 地味だけど」


 地味地味言わないでくれよ。

 リコが涙目になってるじゃないか。


「えーっと、どうだったんです?」

「あーっとね、覚醒度とランクはさっき言ったとおりGのⅥだよ」

「いきなりⅥですか」

「うん、一年生の中では間違いなく最高ランクだね、それもダントツだ。おめでとう」

「ありがとうございます。それで肝心の能力は何だったんです?」


 俺が期待を胸に神宮寺先生達を見ると三人共目をそらしてしまった。

 なぜだ、解せぬ。


「いや、悪い能力ではないんだよ?」

「むしろすごいって言うか」

「私も欲しいくらいだし」


 だったらなんで三人共俺と目を合わせてくれないんですかね?

 ろくでもない予感しかしない。


「何なんですか、一体。良い能力ならそんな渋らなくても良いじゃないですか」

「んあー……、うん、まぁそうだよね」

「そうですよ、早く教えて下さい」


 新しい能力が気になって仕方がないんだ。

 リコに聞いても曖昧な答えしか帰ってこないし。


「新しく君が得た能力はね、幸運だよ」

「幸運?」


 宝くじ当たったりとか?

 ギャンブラーになれとでも言うのだろうか。


「そ、幸運。お金拾ったり信号に引っかからなくなったりするかな」

「えぇ……」

「ただそんなのは余録(よろく)、ほんのおまけさ」


 そう言って神宮寺先生達は一斉にため息を付いた。

 まだ何かあるのか?

 不安が胸に広がってくる。


「というと?」

「肝心なのは即死回避と不幸の改変、この二つだね。両方共一日一回の使用制限はあるみたいだけど」

「冒険者ならかなり有用な能力、ってことですかね」

「有用どころじゃないよ」


 即死回避か。

 入学式の時みたいに敵の攻撃が直撃する時に敵の武器が壊れたりするってことかな。


「一番洒落にならないのは不幸の改変だね。これ、アカシックレコードへの干渉ってことだよ?」

「アカシックレコード?」

「あー、なんて言ったら良いんだろ。世の中の全てについて決められているところって感じかな?」

「はぁ」

「回数制限や内容に縛りはあるものの、とんでもないことなんだよ? これ。神にも匹敵する能力と言えると思う」


 なんかとんでもない能力を得てしまったのか?

 定められた未来を変えるってことだよな?


「不幸改変には劣るけど即死回避も半端じゃないね」

「というと?」

「これ、因果律への強力な干渉能力だもん。ちょっと笑えない」

「そうなんですか……」


 知らない言葉がポンポン出てきて理解が追いつかない。

 とりあえずラッキーと思っておけば良いのだろうか。


「う~ん、このまま君を野放しにしてて大丈夫なのかな……」

「え?」

「内容がやばすぎて国の監視対象になるかも」


 それも含めて微妙なんだよね。

 と神宮寺先生達はつぶやいた。


「そんなにですか」

「そりゃそうだよ。下手したら神の怒りに触れて国ごと消し飛ばされかねないし」

「Oh……」


 たしかに神の領域に手を突っ込む内容だしな。

 いちゃもんつけて世界中にダンジョンを作りまくった奴だ。

 何をされるかわかったもんじゃない。

 というか、そもそもこの能力ダンジョンから得たんですけど。

 理不尽じゃないですか?


「一応神事省に報告上げておくけど、くれぐれも行動には気をつけてね?」

「わかりました」


 神事省。

 ダンジョンや能力者のあれこれを取りまとめている国の機関。

 能力者の犯罪取締なんかもやっている所に報告が上がるのか。

 面倒事に巻き込まれなければ良いんだが。


「ああ、後ついでに」

「まだ何か?」

「システムウィンドウのランク、ⅢからⅣに上がってたから」

「え!? ほんとっ!?」


 神宮寺先生のセリフにシスが飛び跳ねる。

 やった! やった! と喜んでいるが、自分でわからなかったのか。

 精霊なのに。


「そうだよ。まぁ覚醒度がSSSだったからね。次のランクアップは当分先だろうからあまり期待しちゃ駄目だよ」

「やったあああ!!!!」


 シス、ちょっとうるさい。


「新しく発現した能力は多重ウィンドウだね。それと格納容量のアップ」

「多重ウィンドウ?」

「今までは一つしかウィンドウが出せなかったでしょ?」

「そうですね」


 ストレージからアイテムを取り出している間は地図が見れない等結構な不便があった。

 それが解消されるということは素直に嬉しい。


「それが複数同時に出せるようになっているよ」

「おおー」


 新たに発現したらしい能力を意識してシステムウィンドウを操作してみる。

 あ、こんな感じか?


「ふむふむ……」


 俺の目の前には二つのウィンドウが並んでいた。

 しかし同時に違う動きをさせるのは結構むずいな。


「覚醒度に応じて開けるウィンドウの数が増えるみたいだね。ランクⅣで覚醒度Dの今だと四枚までになるかな」

「四枚も出してもコントロールしきれませんよ」

「無いよりあったほうが良いじゃない。それにこういうのは慣れだよ、慣れ」

「それはそうですけど」

「ま、ちょっと試してみてよ」

「分かりました」


 四つのシステムウィンドウを同時に展開する。

 アイテム、マップ、シス、リコの情報をそれぞれのウィンドウに表示させてみる。


「うん、特に問題……ない……?」

「え? どうされました?」


 システムウィンドウを見ていた神宮寺先生達が固まる。

 そして再起動したと思ったら視線を泳がせた。


「いや、うん、ある意味情報ではある、のかな……?」

「そこまで表示されちゃうんだ……?」

「ランクが上がったことと関係があるのかな……?」


 神宮寺先生が頬を引きつらせながら精霊の情報を指差す。

 一体何が書いてあったというのだろうか。

 神宮寺先生達が指を指したシステムウィンドウを俺も見る。


「うん……、!?」


 精霊の情報の項目には完全に個人的な情報が網羅されていた。


「うわっ!!」


 慌ててウィンドウを閉じ、シスとリコの様子をうかがう。

 リコは特に気にしていないようだったが、シスは顔を真赤にさせて俯いてしまった。

 いや、すまん、わざとじゃないんだ!

 もう二度と出さないから許してくれ!


「最低……」

「ごふっ……」

「別に悟だけなら見てもいいけど、他の人には見せないでよね……」


 あ、はい。大丈夫です。俺も見ませんから。

 Cか、見た目以上にあるんだな……。


 と、とにかく、だ。

 地図を出しながら同時にアイテムの出し入れが出来るというのは結構便利かもしれない。

 前だとダンジョン内でアイテムを出し入れする時は周りを警戒してもらっていなきゃいけなかったしね。

 尤も、迂闊(うかつ)に出しっぱなしにして味方を巻き込んだら大変だから注意しないといけないが。


「それにしても普通ランクアップ直後は覚醒度Gになるものなのだけどね」

「ダンジョン攻略中にいつの間にかランクアップしててその後覚醒度が上がったんですかね」

「そうなるかな? それにしても覚醒度が上がるのが早すぎる気がするけど」


 神宮寺先生は首を傾げながら書類をまとめて棚に仕舞うのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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