終わらない夏休み
窓から弱弱しい光が差し込んできた。ゆっくりと目を開ける。
数時間も外に置いていた血のような味が乾燥した口の中に広がる。何度か瞬きをして、時間を確認することもなく、毛布と掛け布団を押しのけて起き上がる。布団から出たが、寒いとも暑いとも感じなかった。
外の様子はすっかり紅葉のピークも過ぎて、ただただ通り過ぎる凍る季節を耐え忍ぶためにひっそりとしているように見えた。窓から見えるほかの家の屋根には、一見雪と見間違えてしまうほど真っ白に霜が降りていた。
そんな季節に、私は袖と帽子の部分だけ黒い白を基調とした半袖パーカーにぶかぶかのジャージの半ズボンをはいていることに気づいた。なんでこんな季節外れな格好をしているのか全く思い出せなかった。
部屋を見まわしてぼやけた視界の中、扉の近くの壁にカレンダーを見つける。地面に物がちらばっている部屋の足場を探して近づいた。
そこのカレンダーには12月と記されていた。こまごまと模試の予定やテストの予定が自分の字で書かれていた。
それを見て私はふと思う。
「あぁ、私だけ夏休みに取り残されている。」
目を覚ました。冬の朝だった。
夢の中で見た部屋と、何ら変わりはなかった。枕元にあるスマホを手繰り寄せて、時間を見た。もう9時を過ぎていた。日付は見ずに、そのままスリープモードに戻した。
起き上がって、ふわふわとしたワンピース型の部屋着の上から、赤チェックのパーカーの上着を着て、部屋を出た。
扉が閉じて、カレンダーが少し揺れた。そのカレンダーは10月からめくられていなかった。




