少年少女の不安をよそに
チャイムの音で由芽は目を覚ます、すごくショックな内容だったはずなのに思い出せない。
彩矢がテストの手応えを聞いてきたが由芽は今まさに感じているデジャヴに戸惑い返事ができない。
「おいおい、絶句するほど悪いのかよ」
彩矢は笑ってくれるが由芽は未だ応えることができない、彩矢もさすがに心配したが拓真が由芽を迎えにきた。
由芽は彩矢には空元気の笑顔を見せ別れの挨拶をし拓真と帰ることにした。
拓真と由芽が並んで帰る、由芽は胸騒ぎが収まらず口数が少ない。
「由芽聞いてる、なんか元気ないけどどうしたの」
「なんか変な夢を見たんだけどどうしても思い出せないの、忘れちゃいけないような内容だったのに」
「忘れてるのに忘れちゃいけない内容だったって覚えてるの、そういや俺も今日のテストの時変な夢見たよ、交通事故にあってさそれが妙にリアルで夢から覚めたときすっげぇ安心したもん」
「それ、私も同じ夢だ」
由芽は声を大きくして言う。
「なんでいっしょの夢を見たんだろう」
由芽は考え込むが拓真のほうは偶然だろうと笑っている、由芽は忘れていた夢の内容を思い出したのに胸騒ぎが収まらないことに不安を感じる。
「じゃあまた明日な」
由芽の不安をよそに二人は家に着いてしまった。
「待って、やっぱり不安だよ信号一回でいいから待ってよ」
拓真はやれやれと思いながら笑う、信号が青になったが拓真は待っていてくれている、突如けたたましいエンジン音を響かせスポーツカーが信号無視をして行く。
「ほらやっぱり危なかったじゃん」
由芽は喜びながら拓真の方を向く、しかし拓真は頭がえぐられたように真っ赤に染まり倒れている。
五時を知らせるチャイムと由芽の悲鳴が鳴り響く。