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日常と幸せとイレギュラー

藤岡拓真と荒木由芽は幼なじみである。

家は歩いて十分ほどで保育園からの腐れ縁だ、お互いに一人っ子でよく兄姉みたいだと言われていた。

小学校高学年になると男女の意識からか疎遠になったが中学三年生の受験シーズンに志望校がいっしょだと知り、また話すようになった。

中学校の卒業式に由芽が勇気を振り絞り拓真に第二ボタンを貰ったことから二人は幼なじみから恋人へとクラスチェンジした。

高校の入学式では別々のクラスになったことを知り由芽は落ち込んだが拓真は気にした様子もなかった。

「家も近いんだしいつでも会えるだろ」

拓真が気にしてない自分に苛立つ由芽に言うと由芽は照れ照れと恥ずかしながら肩を叩いてきた。


二人が入学してから一週間が経ち学校に対する緊張感もなくなった頃抜き打ちの実力テストが行われた。

机に対してうつ伏せで寝ていた由芽はデコが赤くなっていてクラスメートにからかわれている。

「ほっとんどわかんなかった」

開き直ったかのように由芽はクラスメートに宣言する。

「今日どっか遊び行かない」

クラスメートの彩矢が気を利かして誘ってくるが由芽は少し心苦しい。

「ごめん、今日拓真と一緒に帰る約束してるから」

両手をパンッと合わせ頭を下げる、彩矢ははじめからわかっていたように笑みを見せる。

幼なじみと恋人というシチュエーションは誰しも憧れがあるのだろう、クラスメートはおろか上級生にまで噂のカップルになっている。

拓真が教室まで迎えにくるとクラスメートがはやし立てる、二人は気恥ずかしさに包まれながら教室を後にする。

「今日は一日いい天気だったね」

帰り道由芽は背伸びをしながら言う、拓真は頷き明日も晴れるといいなと返す。

拓真は教室に迎えにきたり朝家まで迎えにきたり車道側を歩いたり帰りは家まで送ってくれる、でも拓真はそれを半ば無意識にやっているのだろう、だからこそ由芽は拓真といるとまるで雲の上で寝転がっているような心地よさに包まれる、それこそが幸せだと由芽は思っているしこれからも続いていくと思うことで幸せが倍々ゲームのように膨れ上がっていく。

「じゃあまた明日な」

今日も拓真は家まで送ってくれた、明日会うのが待ち遠しいと思いながら由芽はまた明日と手を振る、この幸せが一生続くと思っていた。

拓真は手を振りながら横断歩道を渡っている、横断歩道を渡り角を曲がるまで由芽はいつも拓真の後ろ姿を見ている、いつも隣にいる人の珍しい後ろ姿を目に焼き付けるように。

しかし猛スピードで走ってくる車のクラクションと、五時を知らせるチャイムがかき消してしまう、二人の幸せと拓真の命を……。

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