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暗黒騎士と鏡の剣  作者: 十奏七音
ミラーソードの家族
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59. 力の源泉

クラスリソース説明回

現在のミラーソードのクラスリソースは「魔術師20, 暗黒騎士20, 幻魔闘士18, 魔法騎士20」で、セットアップは「暗黒騎士4, 魔術師20」。

 アステールを喰った事で明らかに変わった事がある。ダラルロートから奪っていた二刀流が消え去り、アステールから喰えたはずの二刀流と刀剣術も俺の中に見当たらない。鑑定占術に集中し、紐を辿って行くとダラルロートが根こそぎ確保しているようなのだ。俺は皇都滞在中、ダラルロートを問い質した。


「なあ、ダラルロート」

「何でしょう、ミラー様」

「二刀流を俺から消したのは何故だ?」


 ダラルロートと鏡は俺の質問を予期していたようだが、最初ははぐらかした。


「気になられますか」

「二刀流用の剣を作ってみたりはしたけど使ってなかったもんね、ミラー」

「理由があるなら知りたい」


 ダラルロートから奪った二刀流でその師であるアステール相手に挑むのは非力さを感じたし、暗黒騎士を名乗る俺とても魔術師としての方が強いと自覚はしているのでな。しかし、自己鑑定すると謎の文言が増えている。クラスリソースとして魔術師、暗黒騎士、幻魔闘士、魔法騎士と並んでいる。


「特に困ってはいないよね、ミラー?」

「戦槌が以前よりも身体に馴染むのは嬉しいがな。

 何をどうしたのか、何の為なのかは気になっている」


 おそらくはダラルロートの仕業なのだ。鏡にこんな芸当はなかった。アステールの経験と人格は主体的に俺をどうにかできるほど自由にはさせていない。捕らえた公爵を一室に幽閉しているような感覚だ。時折アステールの経験を引き出す為に質問をしつつ、永劫に出られぬ牢獄に閉じ込めていると言った方が正確だろうか。


「疑問に思って内省を深められるよりは説明すべきでしょうな」


 ダラルロートの言い回しは不穏だった。鏡が座布団を運んで来たので座り、俺は先を促した。


「ミラー様が受け継ぎ、或いは吸収した者の中で特に強力な者は四人います。

 魔術師として強大な父君、ノモスケファーラの聖騎士だった者、一人目の私、魔法騎士アステールの四人です」

「鏡をもっと褒めてくれてもいいのよ」


 “魔術師として強大な父君”と言われて気を良くしたのだろう。鏡が何やら調子付いている。


「ミラー様は調整次第では腐敗の邪神に堕ちた聖騎士としての力を前面に出す事も、或いはアステールそのものの魔法騎士として振舞う事もできるはずです」


 俺が騎士として武芸を主体に戦えると考えれば魅力的に聞こえた。騎士として振舞いたいと言う感情は、山の中に構えた自宅で隠棲していた頃からずっとある。


「魅力的に聞こえるが問題はあるのだな?」

「はい。一度に引き出せる力の総量には上限があります。

 仮に魔術師にして魔法騎士として振舞うのならどちらかの力を大きく減じるか、半々程度で混ぜる事になりましょう」

「中途半端にするより僕から継いだ力を使った方がいいよ、ミラー」


 理解できなくはない、ないが……?


「二人の騎士の人格に由来する力はかつて奉じていた神の恩寵をほぼ失っています」


 頷く。アステールがあれほど強力に振るっていた愛の異能が喰えなかったのは、アガシアが地上における干渉力を失った為だと思う。俺が持っている僅かばかりの美の異能はダラルロートがアガシアから盗み、俺に喰われて残留したものだ。


「そして、使えばミラー様の人格は強い影響を受けます」

「俺がアステールに近い人格になって行動するのを防ぐ為だ、と理解しても?」

「その通りです」


 もしくは母に。堕ちた聖騎士。時として力強く果断な意志を与えてくれる母。引き出せるだけ全て引き出したなら、俺は母のように振舞えるだろうか。


「アステールを喰らった影響でミラー様は武芸の経験を引き出し易くなったのですよ。

 戦槌に関しては埋没していた経験を引き出し、余計なもの―――刀剣や弓への熟練を私が引き受ける事でミラー様が扱えるように致しました」

「余計かどうかはともかく、頭がちょっとすっきりしたんじゃない?」


 説明されれば理解に至らなくもない。

 しかし、二人はあまりやらせたくないのだろうな。リスクについても知りたい。


「ああ。大きく変えると俺が何かしらの精神的な影響を受けるとは理解した」

「腐敗と堕落に触れると『何かが変わった』感触がありませんか。

 腐敗と堕落との接触はミラー様の力の源泉に触れる行為です。

 表層に出している力を源泉へと還し、他の力を引き出す事もミラー様がお望みならばできましょう。……精神や記憶の損壊もしくは崩壊と引き換えにして、ですがねえ」


 なるほどな。俺は小さく笑った。


「壊れたらダラルロートに整え直して貰うさ」

「もちろん最善を尽くします。

 しかし、完全に同じミラー様にはならないとお考え下さい。

 時としてほんの小さな差が人を大きく変え、結末を左右する事をお忘れなく」


 ダラルロートから話されたのはそういう事だった。

 俺が二刀流の剣術を使おうとするとアステールの人格に引き摺られる可能性がある、と言う話には何とも不思議な心地がしていた。そんな事でいいのなら、戦槌を振るっていれば俺は母に近付けるのではないのかと。自覚したのがいけなかったのかもしれない。

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