表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗黒騎士と鏡の剣  作者: 十奏七音
暗黒騎士ミラーソード
51/502

51. 悪しき雨

 俺は隠れる(きみ)の御所で、正しく悪なる神、その身の醜悪を覆い隠すアディケオ、拒まれし異形アディケオ、水を治める者アディケオなどと呼ばれる存在の分霊から不正と水の恩寵を第三使徒として授かった。全ては正しく善なるアガシアを奉じるアガソス正国を滅ぼし、アガシアの契印を奪い取る為だ。


 不正の異能は武芸であればフェイントや撹乱と言った惑わしの手妻と回避の勘が強化され、魔術適正は占術と幻術に大幅な増強がある。虚言、真実看破、贈賄、偽証、策略と言った悪知恵を巡らせる事に関しても天稟(てんぴん)を得る。必然的に欺瞞耐性も高められる。命を喰って奪っていた異能の追認である為、俺自身はさほど変わった気がしない。

 一方、新たに授かった水の異能は俺にとって天恵となった。文字通りの天の恵みだ。俺がアディケオに心からの敬意を払う価値であり実利、信奉する意義そのものだ。才能の限界を感じていた元素術に前進があり、アディケオに授かった水に限ってではあるが血の力として扱えるようになった。後はアガソス王城で交戦が予測されているアガシアの第一使徒アステールを喰えれば、俺は元素術を極められるであろう。是非とも喰いたい。

 酒に親しみ、水泳が得意になると言う一面もある。水の異能を持つ統治者は湧水に恵まれ、治水に悩まされぬようになり、治める都には腕の良い酒の造り手がよい水を求めて集まるとも聞いた。不正と水に較べればささやかな量がら、かつてダラルロートがアディケオに授かっていた統治の異能も保持を追認されたようだ。支配者としての行いに加護があるとも聞いている。ダラルロートからの受け売りだ。俺としては今すぐアガソスを滅ぼしてリンミに帰りたい。


***************************************************

偽名 : ミラーもしくはミラーソード

年齢 : 1

性別 : 無性

属性 : 中立悪

種族 : スライム 分類 : 祝福されたハーフ コラプション スライム第二世代

レベル : 22*

クラス : 暗黒騎士2, 魔術師20*

状態 : 活性化

抵抗 : 頑健30, 反応24, 意志31, 魔素44.

攻撃回数 : 3回/5回 二刀流時6回

機動速度 : 高速 / 超低速

武芸 : 戦槌開眼, 刀剣開眼, 二刀流, 重装鎧熟練, 剣75, 槌62, 弓52, 盾40, 水泳V, 騎乗V, 騎乗戦闘V, 神威の一撃 1回, 舞踏の如き回避.

魔術 : 防衛的発動, 詠唱破棄, 触媒不要, 威力最大化, 範囲拡大V, 範囲内対象任意選択, 請願契約, 多重詠唱, 多段詠唱, 輪唱, 前借発動, 発動遅延, 高速付与, 人形練成, 結界, 陣法, 大儀式, 魔力回路, 魔力解体, 超速魔素吸収, 呪詛返し, 低級魔法無効, 中級魔法発動阻害, 上級魔法抵抗力強化.

術適正 : 理力91 , 元素93, 変成130, 占術100, 幻術92, 召喚75, 神聖100, 暗黒100. [▽準備]

適正外 : 死霊術【恐怖】, 精霊【暴走】.

擬呪 : 元素/水93, 理力91, 変成130, 占術100, 神聖100, 暗黒100. [▽準備]

異能 : 不老, 命喰らい, 腐敗, 邪視, 増殖, 堕落, 創造, 祝福, 無呼吸, 無視界, 美, アディケオの不正, アディケオの水, アディケオの統治.

耐性 : 斬撃V, 刺突V, 打撃V, 腐敗V, 毒V, 酸V, 病気V, 精神V, 魔素V, 欺瞞V.

技能 : 調理90, 裁縫95, 清掃75, 給仕100, 農夫93, 酪農97, 鍛冶80, 彫金80, 大工95, 革加工80, 仕立95, 細工83, 工兵52, 商業II, 交渉III, 威圧V, 虚言III, 真意看破IV, 潜伏I, 柔軟I, 脱出I, 隠蔽I, 偽証I, 贈賄I, 監視V, 支配V, 政治V, 拷問II, 懲罰IV, 筆記I, 速読V, 礼法V, 兵学V, 魔法学V, 神学V, 歴史V, 錬金術V, 調合V.

弱点 : 幽霊恐怖症【超重篤】 [▽難易度130]

***************************************************


「ねえ、まだ暗黒騎士だって言い張るのミラー」

「鏡よ、俺は暗黒騎士でアディケオの第三使徒だ」

「名乗りはミラー様の自由ですからねえ。お好きになさいませ」


 実際には魔術師として動くとしても心は暗黒騎士でありたい。

 授かった水の異能によりできる事が増えたと気付いた俺は、予定していた第二案に修正を加えた。変成術と元素術を複合させた術式を組み上げ、俺の創り出す毒を雨として降らせてやる事にした。水源に毒を投じて回るよりもずっと早く、アガソスの国土を悪属性への転向を促す毒で冒してやれる。


 正しく善なる女神、美しくたおやかなるアガシアは正しく善なる者からの信仰を神力の糧としている。中立や中庸の者にも信者はいるが、主要な信徒は正であり善だ。アガソス正国の主要構成種族アガソニアンは正と善に傾き易い性質を持っているが、俺の毒は中庸を通り越して悪に染めてやれる。正と悪に属性が変わった者にとって最も身近なのは正しく悪なる神アディケオ。そう、俺に力を与えてくれているミーセオの守護神だ。

 毒には属性転向以外の害は含めていない。むしろ受け入れた者の力となり、肉体と精神にちょっとした助けをする。俺は同盟成立時にミーセオに大量の属性転向毒をくれてやり、工作については傍観していた。せっせと送り込んだと言う宣教師どもによって着々と成果を挙げてはいる。



 今日、悪しき雨を降らしに俺、ダラルロート、それに鏡の三人で乗り込んで来たのはアガソスでも王都に隣接する地域。アガシアの第一使徒アステールが支配する御膝元、スタウロス公爵領だ。アガソスで最も豊かな地域とも言われ、アガシアへの信仰が特に篤い。ミーセオの宣教師が苦戦している地域だと言うので、暗黒騎士ミラーソード自ら出陣して汚染地域を広げてやろうと言う訳だ。

 アガシアの愛の権能を殆ど借り受けているにも等しいアステール自身であれば、非常に性質の邪悪な俺の毒であっても浄化する事はできるであろう。属性転向した者を元の善に戻す事もできよう。だが、雨雲が仕掛ける超広範囲の汚染にまでアステール一人で対抗できるものかな。俺達はできぬと踏んだし、浄化を試みるのならアガシアの神力を少なからず消費させるであろう。


「アステールが気付いて飛んで来る前に終わらせるぞ」

「そうね」

「転移妨害結界は展開済みです」


 組んだ術式が大掛かりになり過ぎた為、俺と鏡だけでは手が足りない代物になってしまった。ダラルロートにも手伝わせればどうにか三人で発動できる。俺は鏡の剣を両手で握って天へ掲げ、魔術を発現させる。


「暗黒騎士ミラーソードが二柱に願い奉る」


 隙は大きいが、よほど腕の良い占術師であっても俺達が今日アガソスのどこで雨を降らせるか未来を占う事は難しい。俺達の行動を支援し、加護を与えているアディケオが不正の権能によって未来視を阻害するからだ。


「我が血統の父たる腐敗の邪神よ、その身の醜悪を覆い隠すアディケオよ」


 アガシアの加護を特に強く受け、肥沃な農地と果樹園が広々と連なるスタウロス公爵領の片隅から俺は悪なる神々に力を貸せと呼び掛ける。魔素を遠慮会釈なく掻き集め、上空で変成させる。俺の中の腐敗の異能に手を突っ込んで生あるものの精神を爛れさせる毒を引き出し、アディケオから授かった水と混ぜ合わて雨雲を創り出す。


「我の請いたる慈雨によりて天下万民を悪に染め上げ、悪なる者にはささやかなる恩寵を垂れ給え」


 二柱への祈りと注いだ魔力によって産み出した、一見して何の変哲もない雨雲が動き出す。降らせる雨はもちろん透明だ。毒を含んでいるようには到底見えぬ。だが、全てに染み込んでアガソスの民を着実に冒す。雨雲が運ぶ毒は水によって洗い流す事はできない。水の権能を持つアディケオその人が関与している為だ。雨雲は抱え込んだ水と毒を全て降らせるまでは公爵領を漂い、悪しき雨を降らせる事だろう。


 (いくさ)には弱いとされる愛の女神アガシアに対し、アディケオが(いくさ)に強いのは水の権能を持っているからだ。アディケオを敵に回せば水害、旱魃、豪雨と言った自然の脅威が敵対者に対して牙を剥く。まともに(いくさ)などできたものではない。


「よし、撤収」


 魔術師なり魔法騎士であれば俺達による大規模な魔素の吸引元に気付くであろうが、雨雲は既にこの場を離れている。アステールに気付かれる頃には、俺達は隠れる(きみ)の御所へと逃げ帰って一杯飲っていると言う次第だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ