表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

三日目 女医

「ごほっ…ごほっ…」


「うぉぉい、大丈夫か?」


「……大丈夫に見えるか?」


「いや、見えないけど…」


「だったら聞くな……こほっ」




ボンドが絶賛風邪を引いております。

風邪なのか怪しいんだけどな。

なんか鼻水とか接着剤みたいにネチャネチャで、鼻かんだティッシュとかほっとくと固まるんだけど…。



「水、変えてくるからな~」


「ま、待て!!」


「ぬわっ!?」


立とうとしたら腕を掴まれた。

危うく倒れそうになる。


「どこへ行く…?」


「えっと、水を変えに」


「……くのか?」


「え?」


「………」


声が小さすぎて聞こえなかった。

なぜかちょっと涙目で泣きそうになってる。

あれか?風邪引くと精神も弱るからか?


とりあえずまた座り直した。

腕掴まれてちゃ動けないし。




そのまま沈黙が続く。

腕は掴まれたままだ。


「えーっと、タオル、ぬるくなってないか?」


ふるふると首を振るだけ。

そしてじっと俺を見る。

何を伝えたいんだろう?




うーんと唸りながら考えていると、急に部屋の襖が開いた。



「あら、あらら~」


そこに立っていたのは、白衣を着た赤髪の女性。

顔を少し赤くして口に手を当てて笑っている。

…絶対何か誤解してる。



「お邪魔だった?」


「いえ、それよりあなたは誰なんですか?」


見た目でだいたいわかるが。


「私?私は女医」


「はぁ、あ!ちょっとボンドが風邪?っぽいんで診てやってください」


「そのようねぇ。ボンド、あなたあれやるのは一日二回までって言ったでしょう」


「…………」


「この子が来て嬉しいのはわかるけど、ちゃんと約束は守らないと駄目よ?」


黙ったまま俯くボンド。


「あのー、なんの話を…」


「ああ、ごめんね、これ風邪じゃないのよ。」


「あ、やっぱりですか?」


「察しがいいのね。これは接着病」


「名前の通り、鼻水が接着剤みたいにネチャネチャだからですか?」


「んー、それもあるけど、一番は固まる所かしらね。鼻の中で固まると息できなくなるし、取りづらいから、早めに治療しないとめんどくさいのよねー」



笑って言ってるけど、それって大丈夫なんだろうか?



「今日はそんなこともあろうかと薬持ってきておいたわ」


「準備がいんですね」


「なんとなくそんな予感がしただけよ。さ、あなたは出てって」


「え?」


「…これを鼻に入れて薬を注入するのよ。こんなの入れた姿、女の子は見られたくないのよ?」



出てきたのは先が二つに分かれたチューブ。

確かにこれは恥ずかしいな。


チラッとボンドを見ると、こちらを睨んでいた。

なんで俺を睨むんだよ…。



「ほら、早く出てって」





なんかムカついたので、ボンドにデコピンしてから出てきてやった。

ボンドは俺を睨みながらおでこを摩るだけで、何も言わなかった。

接着病って喋れなくなるのか?

てか一日二回にしとけって、あいつ何かやってたっけ?




疑問は浮かぶが、とりあえず水を汲みに台所へ行く。

熱は一日寝れば下がるだろうし。



水を汲んだ入れ物と、タオルを持って部屋に戻る。

もう終わったかな?



襖を少し開けて覗いて見ると、女医さんがボンドの頭を撫でていた。

ボンドは心地よさそうに寝息をたてている。


襖を静かに開けて中に入る。

それに気付いた女医が、こちらを見て微笑む。

思わずドキッとするような、お姉さんっぽい笑顔だ。

顔が赤くなってないといいけど。



「水、汲んできました。タオル変えてもいいですか?」


「ありがとう。お願い」



ぬるくなったタオルをボンドのおでこから取り、新しいタオルを水に浸けて絞る。

少し水っ気を残して、ボンドのおでこに乗せた。



「あの、一日二回にしとけって、何のことですか?」


「あー、あれはボンドよボンド。あ、接着剤の方よ?この子ボンドを手に付けて遊ぶじゃない?」


「あー、それが原因で?」


「そう。あれやりすぎるとこうなるのよ。だから一日二回って規制かけたの。ずっと守れてたのに、あなたが来てからまた増えたのね、きっと」



確かに昨日とか一昨日を考えてみると、一日四、五回はしているものだと思ってた。

まさか二日で発病するなんて、なりやすいんだなこの病気。



「でも、なんで俺が来てから?」


「たぶんね、嬉しかったのよ。私よくここに来るんだけど、ずっと暗い顔。この部屋に入ってきてこの子を見た時驚いたわ。全然顔色が違うんだもん」


「いや、そりゃ熱があって顔が少し赤いからじゃないですか?」


「いやいや、私には分かるのよ。この子の両親が亡くなった時から、ずっと見てきたもの」


「……両親が亡くなったんですか?」


「あら、この子話さなかったの?」


「一度それっぽい反応がありましたが、無理には聞きませんでした」


「優しいのね~♪あなたには話しておくことにするわ。長い付き合いになりそうだし」


「俺も少し知りたいです」



少し悲しそうな顔をして、女医さんは話し始めた。



「この子はね、雪娘なの。」


「は、はぁ、確かに肌白くて、髪も銀色ですがー、これって染めてるんじゃないんですか?」



にしては綺麗すぎると思ってたけど。



「自毛よ。というか聞きなさい!」


「はい、サーセン」


「この子の両親は、どっちも雪人ゆきびと族で、町一番の美男美女と騒がれるくらいだったわ」


「それ関係ないんじゃ・・・」



睨まれました。

すいませんでした。



「で、この子の母親である人は私の師匠だったわけよ。あの人には色んなことを教わったわね・・・」



女医さんは懐かしそうに目を細めて、続ける。



「それから本当に幸せそうに暮らしてて、この子も生まれて・・・。でも長くは続かなかった。この子が7歳だったある日、病院に急患が来てね。小さい子供だったんだけど、その病気を治すには特殊な薬草が必要だったの。その時は薬草が切れてて、その小さい子も命の危険があって・・・。これから薬草を注文しても、遠くの町から仕入れるものだったから、最低でも一週間は掛かるものだったの。でも師匠が急に、森に薬草があったのを知っている。これから取りに行く、って。私たちは必死で止めたわ。町の近くに森があるんだけど、そこには野獣が住んでてね・・・。とても入れるような所じゃないの。警備隊に頼もうと思ったんだけど、その薬一般の人には見分けがつかないのよ。それで師匠は私たちを押しのけて、無理矢理森へ入ってった。その時旦那さんも一緒に行ったの。結局警備隊は森を恐れて、一向に動いてくれなかったんだけどね。それから一日が過ぎ、師匠だけボロボロになって帰って来た。旦那さんの姿はなかったわ・・・。私は師匠の治療を優先したかったんだけど、師匠が時間がないからって、そのまま薬作りをして・・・。薬が出来上がって、師匠は私に渡して微笑むと、すぐに息絶えたわ・・・。もちろん薬のおかげでその子は助かった。でも二つの命が亡くなった・・・」



女医さんは一筋涙を流し、それを手の甲で拭った。



「その時からこの子はずっと一人。私も、師匠の後継ぎって事で色々忙しくてね・・・。たまにここに来てたんだけど、居られるのは短い時間で・・・」


「そう、だったんですか・・・」


「だから、私はあなたが来てくれて嬉しいわ。たとえ短い間でも、この子をよろしくね」


「はい。まかせてください」


「ふふっ、本当に優しいわねぇ。あ!お礼にいい事してあげよっか?」


「……へ?」



女医さんがゆっくり、四つん這いになって俺に近付いてくる。

俺は避けるように後ずさっていく。

顔が熱い。絶対赤くなってる。

くそ、だから顔が赤くなる俺の体質嫌いなんだ。



「顔真っ赤にしてぇ♪そんなに恥ずかしがらなくてもいいのよ?」



やっぱそう捉えるか。

これは恥ずかしいとかの問題じゃないと思う。



「あ、あの、お礼とかいいんで……」


「だぁーめ♪」



向こう側の壁まで追い詰められてしまった。

あー、どうしよ、このまま流れで、っつーのはよくないし…。


俺も一応男子。しかも高校生。

そういうことに興味がないわけじゃない。

でもさすがに好きでもない人とするのは気が引けるというかなんというか…。



「ひぅっ!」


「かーわいい~♪」



油断した。耳を舐められた。

てか身体が動きません。

本能か?これって本能ってやつか?



「おい」



一瞬にして部屋の空気が凍りつく。

いつのまにか女医さんの後ろにボンドが立っていた。



「あ、あれ?起こしちゃったかなぁ?」


「……何をしている?」



睨んでる目がすっごい冷たい。

あれ?身体が震える。これも本能?



「す、スキンシップ!お互いの事よく知りたいもの!」


「あ?」


「……すいませんでしたぁー!!!」



ここで女医さん荷物持ってダッシュで部屋から出て行った。

待て、この状況でいなくなったら次の獲物は……。



「……おい」


「はい」


「何してたんだ?」


「えっと、俺は悪くない、っていうか!何もしてない!!」


「ほぉ、ではなぜそんなに顔が赤いのだ?」


「……体質です」


「……もう一度聞く。お前は何もしていた?」


「何も、して、ないです……」



目が怖い。怖すぎる。ちびりそう。



「あんなに密着していてぇーー!!!何もなかったわけがなかろうがぁーー!!!」




バチン……。













「んっ・・・」


不意に目が覚める。

窓から夕暮れの光が差し込んできているので、もう夕方だろう。



あの後、私は翔をぶった。

そしてそのままふて寝してやった。

まぁ熱がまだあったみたいで、頭が痛かったしな。

あいつは今頃隣の部屋で反省してるだろうか?



もう一眠りしようと寝返りをうつと、近くの壁に寄りかかって寝ている翔の姿があった。

そういえばタオルが冷たい。

・・・ずっと、付き添ってタオルを変えてくれていたのだろうか。

あんな酷い事をしたのに。



なぜか翔が女医に迫られていた時、怒りともいえない、変な感情が出てきた。

もちろん翔が悪くなかったのは知っていた。

けど怒らずにはいられなかった。

明日ちゃんと謝ろう。




もう一度寝ようと思った時、枕元に紙を見つけた。




「な!?こ、これは・・・」




どーも、ライギンです。

初めてあとがき書かせてもらいます。

今回は少し長くなってしまいました、すいません。

特に女医が話す過去の部分!

すっごい長くなってしまいました・・・。

あ、ちなみに女医の名前はそのまま女医、でやりたいと思ってます。


お詫びです。

最新話を投稿するのが不定期でごめんなさい。


こんなんですが、どうぞこれからもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ