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炎の試練

俺は、ユナの祖母にレジェンド・ギアの情報を手に入れるべく、試練に立ち向かった

俺は、空気をきりながら林の中を駆け抜けていた。昼間だと言うのに妙な静けさだ。小枝を踏む音さえ目立つ。顔には無数の虫が飛び付き、息さえ困難だ。暗闇からは、蝙蝠が赤い目を出し、異様な空気が漂っている。俺は、顔についた虫を払おうと、重心を前におき、両足をブレーキ代わりにして急停止した。作用反作用により、俺は前に転げ落ちた。しかし、虫達はびくともしなかった。服についた砂を払いつつ、立ち上がった。俺は顔についている、虫を鷲掴みにし、俺は、虫を力ずくではがしにいった。虫の骨格はバキバキと音をたて、徐々に虫の粘着力は無くなっていく。



俺は、ようやく虫を全て剥がし終わると、場所を把握するため、胸ポケットから地図を取り出した。地図によると、ここから百メートルぐらい離れた所に、ロストという村があるらしい。俺は、そこの村の宿で寝るということを決めると、地図をしまい、再び森の中を走り出した。今度は、虫がつかないよう、虫を払い除けながら進んで行くと、暗い森の中に一筋の光が射し込んだ。それはやがて進むに従って、大きくなり、光で一面が覆われたと思うと、小さな村が姿を現した。空を見上げるとさっきの光が、太陽光だということがわかった。暗闇に目が慣れていた為、微量の光が宝石のように、目を掠めたのだろう、俺はそう解釈した。俺は、近くにあった石に腰掛け、一段落した。


「あー。また外れか」


俺は、レジェンド・ギアという宝を探す為に、旅をしている。見た目から推測すると、町にはレジェンド・ギアは無さそうだ。俺は、ため息をつくとロングソードを引き抜き、眺めてみた。自分の姿が見えるほど、鏡のように磨かれた刃。それは、自分がこの世に存在するのかを疑わせる程の美しさだ。俺は、刃に写る自分の姿を見つめた。目は面なり、犬歯は刃物のように鋭く、髪は黒くて短い。目をつり目にしてみると、自分で言うのも何だがまるで鬼のようだ。俺はニヤリと笑い、ロングソードを鞘に納めた。村を眺めてみると、建物はどれも所々にヒビが入り、草や木が生い茂っている。人一人の声すら聞こえない。ただ、砂が風に飛ばされるだけ。


本当にここに人は居るのだろうか?


俺は、腰をあげると村を捜索してみた。家の中に入り、机の下やタンスの中、暖炉の中までも探した。しかし、犬一匹すら見つからなかった。俺は、諦めて肩を下ろすと、胸ポケットの中からパンを取り出した。


「また野宿か」


俺は、パンに無造作に食い付いた。皮肉にもパンは美味しく、野宿でもいいかという衝動を起こさせた。なんと言っても噛む度にあふれでる、ハーブの香りはたまらない。


「うまっ」何度もこのパンを食べているのだが、このように声を出してしまう。俺は、そのまま地面に大の字になった。空は、青く雲一つない快晴。いつもなら、快晴は喜ばしいものだが、なぜかここでは悲しく感じる。


「しっかし、不気味な村だな。生気が感じられねぇ」


俺は、こうしていても仕方がないと思い、首はね起きをした。


「しょうがない。この村を抜けたらある川で野宿するか」


普通は、ここで野宿すればいいと思うが、こんな気味の悪いとこでは、あのパンしか喉に通らないだろう。俺は、この村で寝ることは出来ないと悟り、森とは逆の方向へ走り出した。村は思ったよりも広く、気づけば汗で服がびしょ濡れになっていた。

俺は一旦足を止め、息を整えた。


「はぁー。はぁー。どんくらい走ったら、この村を抜け出せんだ?」


俺が戸惑っていると、後ろから可愛らしい声が、俺に話かけてきた。


「こんな所で何してるの?」


俺は、思わず振り向いた。目の前には、十代中中頃の可愛いいというより、美しい少女が立っていた。目はぱっちりと開き、口は見るからに柔らかく、鼻は小さく、髪は黒で長く、形は整っている。まさに絵に描いたような美女だった。絶世の美女を前にした俺は、顔を赤面させながら返答した。


「えっと……。レジェンド・ギア探しかな?」


「えっ?あなたもそうなの?」

少女は、ひまわりのような華やかな笑顔を見せ、歓喜した。


この子もレジェンドギアを?


「君は、何のためにレジェンド・ギアを探してるの?」


普通は、金のためという答えが大半を占めるが、外見からそうではないだろう。いや、黒髪清楚であって欲しい。


少女は、黙り込んでしまった。沈黙が支配する。しばらくすると、少女は悲しげに言った。


「私、多重人格なの。だから、それを治すために探してるの。あなたは?」


「俺は、死んだ家族を生き返させるためかな」


俺は、彼女があまりにも悲しそうにしてるため、わざと普通に言った。少女が目に涙を浮かべながら、歯を食い縛り俺に尋ねてきた。

「悲しくないの?家族がいなくなって」


「悲しくないさ」


俺は空を見上げ、言葉を続けた。


「だって。死んだって、生きてたって同じ星を見てるんだから」


俺は、正直綺麗事を言った。でも、彼女に心配させたくないのだ。初対面だが、彼女には何か特別なものを感じる。別に、ルックスがいいからではない。言葉で表せないような何かを……。


少女は、優しく微笑むと、単語を吐き出した。


「エルメス・ユナ」


俺は、始め何かの宝石かと思ったが、時期にそれが彼女の名前だと言うことがわかった。


俺もユナに続けた。


「俺は、ジャック・レイ。よろしく」


俺が、手を差し出すとユラは、手を出し挨拶変わりに握手をした。俺の顔は、沸騰する寸前だ。俺は、意識がある内に握手を止めると、ユナにこの村の事について尋ねた。


「この村は、一体どうなってるんだ?」


ユラは、下を向くと黙々と話し出した。


「この村は、昔オーガに襲われたの。村の人々は、オーガに襲われるから、地下に住むことにしたの」


「じゃあ、地下には人がいっぱい居るのか?」


「いえ、ほとんどの人に食べられてしまったわ。今は、お祖母ちゃん一人しか居ないわ。宿屋探してんなら内に来て。寝るスペース位ならあるから」


俺は、宿でないが寝床が見つかるとわかり、喜びのあまり叫んでしまった。ユナは、俺が急に叫んだため、目を大きくして驚いたが、すぐに笑い出した。


ユナは、地面に手を当てた。すると、地面は音をたて、人マンホール位の大きさの穴が現れた。


これは魔法だろうか?しかし、魔法なら何らかの現象が起きるはずだ。俺は、穴の原理を探るべく、穴をじーと見つめた。しかし、何も怪しい所などない。


突然、穴の中からユナの声が聞こえた。


どうやら、俺がくだらない推理をしている内に、穴に入ったのだろう。俺は、返事をすると穴の中に飛び込んだ。


穴は思ったより深く、寒かった。穴の最下部につく瞬間、わずかな光が見えた。俺は、それを頼りに下の治安状況を確認した。右側に石がある。俺は、ロングソードを石に突き刺した。俺は、落下したときの加速度を利用し、走り棒飛びのように飛び、着地した。ユナは、胸を押さえながら光輝いている。あの加速度なら普通、物凄い勢いで落下するはずだが、地面とユナの足の距離が、拳一つ分位の所で、浮遊している。光輝くユナの姿は、まさに女神のようだ。ユナはしばらくると、羽毛のようにひらひらと地についた。俺は、ユナの姿にに圧倒され、開いた口がふさがらなくなった。ユナは、俺の姿を見て手を引っ張った。そのまま、ユナに手を引かれた俺は、まるでタイヤのように前へ突き進んでいく。穴の中は、進む程広くなり、明るさをましていく。まるで洞窟のようだ。



壁には、様々な装飾品や松明が施されており、生活感を感じられる。俺は、ユナが疲労で止まると、やっと四次元から脱出し、正気を戻した。俺は、ユナの手を振り払い。少し距離を取った。あんなに長く握手されていたため、恥ずかしくて近くに居られない。


「ここだよ」


ユナが前方を指で指した。目の前を見てみると、そこには一軒の大きな家があった。いや、一軒しか家はなく、その周りには家が解体されて出た、残骸と思われる木材や、鉄が散らばっている。


ユナは、大きな家の前に立つと、すーと消えていった。俺は驚き、家まで駆けつけた。そして、ドアを叩いた。


「ユナ?」


名前を呼んでも返事はない。俺は、百メートル程後ろに下がり、そこから勢いをつけドア目掛けて突進した。ドアに当たるであろう瞬間。ドアは開き、俺は勢い余り、地面に頭をぶつけた。俺は、痛みを声に出し、立ち上がるとユナが、?という顔をしながらこっちを見ていた。そして俺に、とぼけたような顔で問いかけた。


「何してんの?」


「何してんのじゃねぇよ。急に消えやがって」


俺が少し怒ったように言うと、ユナは少し気まずそうな顔をしながら、謝罪した。


「ごめん。私が言い忘れてたから」


こんなはずではなかった。ユナは、悪くない。俺が勝手に判断して怒っただけなのだ。なのに…… なのに……。俺は、最低な男だ。しばらく険悪な空気が流れる中、階段から足音が聞こえた。俺は、音源の方をを見て気づいたのだが、家の中はとても豪華だった。天井にはシャンデリアがいくつもあり、人三十人ぐらい座れるくらいの、長机一個と椅子が三十席並べってあった。さらに奥には、何個かのドアがある。そして、中央には二階に続く階段がある。足音の主は、痩せ細った老婆だった。老婆は、九十歳ぐらいに見えるが、階段をすんなりと降り、俺とユナの所へ歩いてきた、そして、老人の発する次の言葉が、沈黙を立ちきった。


「あんた達、まだまだ若いねぇー」


この老婆は、俺を馬鹿にしているのか。それとも不器用という意味なのだろうか。


「お婆様」


ユナが、老婆に話しかけた。俺は、ユナと対照的に老婆を見て、ユナと家族だということを信じれなかった。老婆は、俺の事をじろりと見ると、不気味に口を歪ませて、俺の心臓を突き刺すかのような、恐ろしい声で言った。


「私が、ユナのお祖母ちゃんって事が信じられないようだね?何なら、証拠を見せてやろうか?」


一瞬、息の根が止まったと思った。


――読まれてる。心が


俺の体はブルブルと震えだし、汗がだくだくと流れ、身体中鳥肌だらけになった。これ程、自分の心が読まれるということが恐ろしいとは。俺は、震えきった唇が勝手に動いた。


「なっ何で?」


俺は、魔法ではないかと検討はついていたが、たった今、初めて起きた現象に震え、老婆に俺の本能が問いかけたのだろう。老婆は、クスクスと笑い出すと、腰から杖を取り出した。


「お前は、わかってるじゃろう。そう、わしは魔術師じゃ」


こいつはヤバイ。心情の繊細な部分まで読み取ってきやがる。無になれ。心よ無になれ。


「無理なさんな」


老婆は、杖を天に向けた。すると、杖には雷が宿り、烈火の如く俺を襲ってきた。俺は、たまたま老婆の動きを見ていたため、何とか直撃は免れたが、肩に雷が軽く掠れた。肩は、火のように熱くなり、俺は思わず利き手で肩を押さえた。肩は、完全に焦げていて、血は焼かれて蒸発している。老婆は、見下すように杖を地に起き、俺に言い聞かせた。


「ほほう。あれを避けるとは、なんという幸運の持ち主。お前レジェンド・ギアを探しているそうじゃな?」


俺が、返答をしようとしたが、老婆は杖を前に出し、俺を口止めすると、淡々と話を続けた。


「わしは、レジェンド・ギアついて知っている」


俺は、傷口を押さえふらふらしながら立ち上がった。


「教えてくれ」



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