うさみみ暮らし
◆朝
朝のひかりに ゆれるうさ耳
まくらの海で まだ夢を
おはようひとつ 耳がぴょこんと
返事の代わり 立ち上がる
寝ぐせついてる 長い耳先
指でなおせば 笑い声
二度寝さそって 布団のなかへ
ひっぱる力 あらがえず
コーヒーいれて きみにはミルク
ならんだカップ 湯気ふたつ
トーストかじる 前歯がのぞく
小さなうさぎ ここにいる
◆昼
買い物ふたり つないだ指に
伝わるぬくみ 春の道
人ごみ苦手 ぎゅっと寄り添う
肩にあの耳 ふれるたび
跳ねるあしどり スキップまじり
つられるわたし 春うらら
風がふくたび 耳がそよいで
君の機嫌が よくわかる
うれしいときは ぴんと立つ耳
照れたときには ぺたんこに
耳のうしろを なでれば足が
とんとんとんと 床たたく
陽だまりのなか まるまる背中
うさぎの昼寝 守る役
◆夕
雨の休日 窓辺にふたり
耳とわたしの 影ならぶ
ひざの上にて 本読むきみの
ページめくれば 耳もゆれ
けんかした日は 耳もしおれて
ごめんのかわり ふれる鼻
夕餉の卓に サラダの山と
きみの好物 春キャベツ
おいしいねって 頬ばるほっぺ
みているだけで 胸が満ち
お風呂あがりの 濡れ耳タオル
そっとつつめば 目を細め
乾かす耳の やわい産毛に
あかり透けてる 桃の色
◆夜
ソファーにならび 映画のあかり
いつか肩へと 落ちる耳
ねむい目こすり それでもそばに
いたいと言って もたれくる
だっこをせがむ 両手をひろげ
うさぎのくせに あまえんぼ
ふわふわの毛に 顔をうずめて
息を吸い込む 陽の匂い
月の夜には 昔うさぎは
月にいたのと 語る君
月のうさぎが 地上へおりて
わたしのそばで 眠るのか
布団のなかで 耳をたたんで
まるくなるきみ あたたかい
寝息にまじる 小さな寝言
わたしの名前 よばれてる
おやすみなさい ひたいにひとつ
耳がぴくりと うれしそう
なんでもない日 なんでもなくて
それがなにより 宝物
世界のどこか さがしたけれど
しあわせここに 耳ふたつ




