第8話 影の交錯――新たな敵と秘密の暴露
封印の鍵を手に入れ、探偵社に戻った澪、灯、そして詩織は一時の安堵を感じていた。だが、それは嵐の前の静けさに過ぎなかった。
「敵の動きが活発になっている。封印の解除が近いということだろう」詩織が巻物を再び広げながら言った。
澪はパソコンの画面に表示された魔力波動の推移を見つめていた。「最近、結界の揺らぎの頻度が増している。間違いない、何かが迫っている」
灯はクロを膝に抱きながら不安げに呟く。「私たち、あの力に勝てるのかな……」
「勝つために準備しよう」澪は強い口調で答えた。
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その日の午後、探偵社のドアが激しくノックされた。飛び込んできたのは、黒いローブに身を包んだ若い男――名前は神谷透。
「俺は葛城涼真からの依頼で来た。重要な情報がある」
詩織は眉をひそめた。「神谷、あの男か……。油断できない」
神谷は続ける。「敵の組織は内部にスパイを潜り込ませている。既に我々の動きを把握している可能性が高い」
灯が驚きの声を上げる。「そんな…!」
「だからこそ、俺は君たちと協力して動きたい」
澪は深く息をつき、決断した。「わかった。協力しよう」
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その夜、四人は街の外れにある小さなバーで会合を開いた。
「スパイの正体を掴むことが最優先だ」と神谷が言う。
詩織が続けた。「そして封印を守る術を強化する。時間との勝負になるだろう」
灯は手にしたコーヒーを見つめながら、「でも、私たちにはクロもいるし、みんながついてる。きっと乗り越えられるよね」と笑みを浮かべた。
澪は皆を見渡し、静かに言った。「ええ。絶対に」
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だが、その時、店の奥の扉が静かに開いた。
黒い影が入り込み、薄暗い空間に冷たい風が流れ込んだ。
「お楽しみはこれからだな」と低く囁く声。
バーの奥で風がざわめく中、黒い影はゆっくりと姿を現した。薄暗い光の中で浮かび上がったのは、冷酷な目を持つ女――名は風間綾乃。敵の幹部の一人であり、封印を解く計画のキーパーソンだ。
「神谷、お前がここにいるとはな」彼女は冷笑を浮かべた。
神谷は一瞬たじろいだが、すぐに表情を引き締めた。「綾乃、何を企んでいる?」
「ただの静観よ。私たちの計画は順調に進んでいる。封印は間もなく解かれる。そして、あの古代の力は私たちのものになる」
詩織が立ち上がり、鋭く言った。「あなたたちの野望は許さない。私たちは必ず阻止する」
風間は嘲笑いながら、薄暗い部屋を見渡した。「私の仲間はすでに結界の迷宮の中に潜入している。君たちの動きは手遅れかもしれないわね」
灯が拳を握りしめた。「私たちが絶対に負けるわけない!」
澪も強い意志を込めて頷いた。「みんなで戦おう。街を、未来を守るために」
その瞬間、店の外で激しい魔力の波動が走った。
「封印の揺らぎが最大値に達した! 封印が解かれる寸前だ!」詩織が叫ぶ。
四人は素早く立ち上がり、外へと駆け出した。
夜空の下、神社の結界は激しく揺れ、周囲の魔力が乱れ始めている。
澪はスマホで結界の魔力解析を行いながら、詩織と神谷と共に結界に挑んだ。
「封印の解除を阻止するためには、この鍵を使って逆魔術を施すしかない」
灯はクロと共に周囲の警戒を強めた。
その時、黒い魔法陣が結界の中央で炸裂し、巨大な光の柱が空高く昇った。
風間の仲間が次々と結界の中に現れ、激しい戦闘が始まる。
澪は記録魔術で敵の動きを分析しつつ、強力な攻撃魔法を繰り出した。
灯は素早く回避しながら、援護魔術で味方を守る。
詩織は呪文を唱え続け、封印を守る逆魔術を展開した。
神谷は冷静に敵のスパイを追い詰め、真実を暴こうとしていた。
激しい戦いの末、封印はかろうじて持ちこたえた。
だが、風間は笑みを浮かべ、静かに姿を消した。
「これで終わりじゃない。次の策がある」彼女の声が風に乗って響いた。
戦いの後、四人は疲労困憊しながらも、確かな絆を感じていた。
澪は静かに呟いた。
「まだまだ試練は続く。でも、私たちは絶対に負けない」
灯は微笑みながら、クロの頭を撫でた。
「うん。みんなで一緒に戦おうね」