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#魔法探偵の日常  作者: てもちぶたさん
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第4話 迷宮の結界と刻まれた秘密

 朝の光が窓から差し込む頃、澪はいつものように探偵社のデスクに向かっていた。

 手元には詩織が持ち込んだ古い巻物の解読メモが散らばっている。


「……この符号、どうも現代魔術の記録術式に似ている」澪は小声で呟いた。


 灯はカップに残ったコーヒーを一口飲んでから、澪の隣に座る。

「ねぇ澪、昨日の戦いのあと、街は静かだけど心配で眠れなかったよ」


「私もだ。でも気を抜けない。敵は必ず次の一手を打ってくる」澪は眉をひそめた。


     *     *     *


 その日、三人は再度神社の結界へ向かった。

 結界の内側に入る許可はまだないが、澪の記録魔術を使い、少しずつ情報を集める作戦だ。


 詩織は慎重に巻物を広げ、結界に関する魔術式を指差しながら説明した。

「この結界は層になっている。外側の防御はもちろんだが、内部には複雑な迷宮のような構造が隠されている」


「迷宮?」灯が眉を上げる。

「そう、内部の空間は単なる物理的なものではなく、魔力によって形作られている。簡単に入れる場所じゃない」


 澪はスマホで結界の空間構造を再現する映像を映した。

 そこには何重にも折り重なった結界の層が、複雑に絡み合っていた。


「つまり、この結界の迷宮を突破しなければ、封印の核心にたどり着けない」澪は息を吐いた。


     *     *     *


 その頃、街のカフェで一人の男がスマホ画面を見つめていた。

 彼の指先は冷たく震え、顔には焦りの色が浮かんでいる。


「計画が遅れている……だが、奴らも焦っているはずだ」男はつぶやいた。

 彼の背後には、黒いコートを羽織った複数の影がひっそりと立っていた。


「焦るな。俺たちにはまだ秘策がある」男の声には冷徹な自信が満ちていた。


     *     *     *


 その夜、探偵社に戻った澪たちは、再び巻物の解読に没頭していた。

 灯はふと、クロの様子を見て微笑んだ。


「クロ、あんたが守ってるものって、そんなに大事なものなんだね」


 クロはその声に応えるように、静かに澪の膝に乗った。


 詩織が巻物の中から一枚の古びた写本を取り出し、示した。

「この写本には封印の解除条件が記されている。だが、不完全だ」


「不完全?」澪が眉をひそめた。


「はい。完全な解除にはもう一つの『鍵』が必要だ。恐らく、この結界のどこかに隠されている」


 灯は気を引き締め、問いかける。

「じゃあ、私たちはその鍵を探し出さなきゃいけないの?」


「そうだ。しかし、敵も必ず同じことを考えている」詩織の声は厳しい。


 澪は深く息を吸い込み、決意を固めた。

「私たちが先に見つける。絶対に、あの街の平和を守るために」


 翌朝、澪たちは早朝から結界の近くに集まった。

 今日は巻物の示す場所を中心に探索を進める予定だ。


 澪は慎重に足を踏み入れ、周囲の魔力の流れを感じ取る。

「この辺りが怪しい」彼女は指をさした。


 灯は手にした魔力検知器をぐっと握り締める。

「よし、行こう」


     *     *     *


 迷宮のように入り組んだ結界の中、三人は魔法陣の隙間をかいくぐりながら進む。

 壁や床に浮かぶ魔法文字が不気味に光り、時折冷たい風が吹き抜ける。


 詩織は巻物を手に、魔術陣を解読しながら道を切り開く。

「このまま進めば封印の核心に近づけるはずだ」


 だが突然、足元の魔法陣が赤く輝き、罠が発動した。

「危ない!」澪が灯を引き寄せる。


 地面から鋭い魔力の矢が飛び出し、三人はとっさに防御魔法陣を展開。

 矢は弾かれ、壁に激しくぶつかって砕け散った。


「敵の仕掛けだ……油断できない」詩織が警戒を強める。


     *     *     *


 迷宮を進むにつれ、三人は徐々に疲労を感じ始めた。

 灯は息を切らしながらも、クロを膝に抱いて支えにした。


「クロ、あと少しだよ」灯が囁く。


 澪は魔力の流れを追い続け、やがて扉のような魔法陣に辿り着く。

「これが……封印の鍵の場所かもしれない」


 詩織は慎重に呪文を唱え、魔法陣を解除しようと試みる。

 だが、中から低い唸り声が響き、魔法陣が激しく反応した。


「警戒しろ、何かいる!」澪が叫ぶ。


     *     *     *


 暗闇から巨大な魔獣が姿を現した。

 銀色の毛並みを持ち、燃えるような赤い瞳が三人を睨みつける。


「封印を守る守護者か……」詩織は驚きを隠せない。


 魔獣は低く唸り、鋭い爪で襲いかかってきた。

 澪と灯はすぐさま連携し、防御と攻撃を繰り返す。


 クロも突然姿を変え、光の翼を広げて魔獣に向かって飛びかかった。


「クロ!」灯が叫ぶ。


 激しい戦闘の中、詩織は魔術の封印を解く呪文を唱え続けた。

 魔獣の動きが徐々に鈍り、最後にはその場に崩れ落ちた。


     *     *     *


 魔獣が倒れた後、封印の鍵は静かに輝き始めた。

 三人は息を整え、澪がそれを手に取った。


「これが……鍵」


 灯はほっとした表情でクロを抱きしめる。

「やっとここまで来たね」


 詩織は静かに頷いた。

「だが、まだ終わりではない。敵も動きを活発化させている。今後も警戒が必要だ」


 澪は鍵をしっかりと握りしめ、強い決意を胸に秘めた。


「この街を守るため、最後まで戦い抜こう」


 三人の絆が、夜空に強く輝いた星のように煌めいた。





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