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#魔法探偵の日常  作者: てもちぶたさん
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第3話 敵の影と揺れる信頼

 夜が明けると、澪と灯は再びアークライト探偵社の小さな事務所に集まっていた。

 澪は机の上に並べた資料やスマホを見つめながら、鋭い目で灯に語りかける。


「警告メッセージの発信元はまだ特定できていないが、結界の揺らぎと連動している可能性が高い」


「やっぱり、敵は結界の外からじわじわとプレッシャーをかけてきてるんだね」灯はため息混じりに言った。


 澪は深く頷く。

「これ以上の被害を防ぐため、私たちはまず敵の正体を突き止める必要がある。手掛かりは、結界の魔力波動に残された微細な痕跡だ」


 澪はスマホを手に取り、収集したデータの解析を始める。

 灯は隣で資料を整理しながら、窓の外の街の風景に目をやった。


「……澪、あたしたちって本当にこのまま無事にやり遂げられるかな?」

灯の声には、普段の明るさとは違う、少しの不安が滲んでいた。


「不安は当然だ。でも、私たちは二人でここまでやってきた。諦めるわけにはいかない」澪は優しく、しかし毅然と言った。


     *     *     *


 そんな時、スマホが鳴った。画面に表示されたのは、葛城涼真からのメッセージだった。


「調査に協力できる魔術師の連絡先を送る。慎重に行動せよ」


 二人は顔を見合わせ、すぐに準備を始める。


 涼真から紹介されたのは、古代魔術に精通する女性魔術師、八神詩織。

 彼女は冷静沈着で、澪とは大学時代のライバルだったという。


 澪は電話で詩織と会話を交わす。

「敵の術式は非常に高度で、単独での解析は困難だ」

「協力をお願いしたい」


 詩織は短く応じた。

「分かった。すぐに合流する」


     *     *     *


 数時間後、三人は再び神社に集合した。

 詩織は結界の前で冷静に周囲を観察し、魔力を集中させる。


「この結界は単なる防御ではなく、情報の封印でもある。内部に何か重要なものが秘められているはずだ」


 灯は銀色の猫、クロを膝に抱きながら言った。

「クロ、何か教えてよ……」


 クロはじっと灯を見つめ、微かに喉を鳴らした。


 詩織が呪文を唱えると、結界の一部が薄く透けて、内部の光景がわずかに見えた。

 そこには古びた書物や巻物が散らばり、何か儀式の跡が感じられた。


「これは……何かの封印かもしれない」詩織は眉を寄せる。


「つまり、敵はこの封印を解こうとしている?」澪が訊いた。


「可能性は高い。解放された力は、この街に大きな混乱をもたらすだろう」


     *     *     *


 夜が深まる中、三人は今後の対策を話し合った。


「敵の正体はまだ不明だが、戦略的に動かなければ我々も消耗するだけだ」詩織が言う。


「澪、灯、君たちの連携は非常に優れている。私も全力で協力しよう」


 灯は澪の手を握りしめ、力強く頷いた。


「私たちなら、きっと乗り越えられる」


 三人の決意が、闇夜に力強く光った。


 翌日、澪と灯は探偵社に戻ると、詩織が持ち込んだ古い巻物を広げた。

 巻物は黒ずんだ羊皮紙に細かい魔法陣と呪文がびっしりと描かれている。


「この巻物の魔術は……封印を解くための鍵に使われる可能性が高い」詩織は言葉を選びながら解説した。


「封印は古代の魔術によって施されているため、現代の魔術師でも解明は難しい。だが、この巻物には手がかりが多い」


 灯が指で触れた場所から、淡く青白い光が漏れ出した。

「……この魔力、クロの巻物と同じもの?」


 詩織が頷いた。

「間違いない。クロはこの巻物の一部、あるいはその守護者のような存在かもしれない」


 澪はデスクの端にあるスマホを操作し、記録魔術で巻物の情報を一字一句逃さず読み取った。


「もし封印が解かれれば、古代の力が解放される。制御できなければ、街は大混乱に陥るだろう」


「そんなこと絶対に許せないよ……」灯の声が震えた。


 澪は灯の肩にそっと手を置き、落ち着かせる。

「私たちにできることを全力でやろう。敵の目的はまだ見えないが、封印が狙われているのは確かだ」


     *     *     *


 その頃、暗がりの中で一人の影が動いていた。

 黒いフードを深くかぶり、冷たい瞳で結界の揺らぎを見つめる。


「すぐに封印は解かれる。準備はいいか?」


 その声に応えるように、複数の魔術師らしき者たちが集まってくる。


「我らの計画はここからが本番だ。邪魔者は排除しろ」


 影は不敵に笑った。


     *     *     *


 澪と灯は詩織と共に、結界の周囲を再調査するため夜の神社へ向かった。

 月明かりに照らされた境内は不気味な静けさに包まれている。


「何か気配がある……」灯が小声で呟いた。


 澪は魔力検知器を取り出し、慎重に周囲を探る。

 すると、不意に背後から冷たい風が吹き、草木がざわめいた。


「気をつけて」澪が警告すると、茂みの中から黒い影が飛び出してきた。


「来た!」灯が叫び、防御魔法陣をすばやく展開する。


 黒装束の魔術師が刃物を振りかざしながら襲いかかってきた。

 澪は記録魔術で攻撃を反射しつつ、相手の動きを分析した。


「この術者、封印の解放を狙う手勢の一人だ!」


 灯は素早く反撃し、魔力を集中させて敵を押し返す。

 詩織も冷静に援護魔術を繰り出し、連携攻撃で相手の動きを封じた。


 激しい戦闘の末、敵は撤退を余儀なくされ、闇に消えていった。


「まだまだ増援が来るだろう。警戒を強めよう」詩織が言った。


「私たちは負けられない」澪の瞳は決意に燃えていた。


「そうだね、灯。一緒に守ろう、みんなの暮らしを」


 灯は澪の言葉に強く頷き、銀色の猫クロを優しく抱きしめた。

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