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裏山異世界農業 〜伝説の剣? 要らないよ……。そんなのより伝説の肥料とかないの?〜  作者: 皐月彦之介


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第25話 水車

 用水路作りも、あとは水を引き込む部分をつなげるだけで完成というところまできた。そこで作業は次の段階へと進む。


 ソバーカの人たちは何人かを残して、最初の田んぼを作るための開墾作業をしてもらっている。畑のときもそうだったけど、土魔法で掘り返すだけだと小石などが取り除けないのだ。なのでココたちもふくめてほぼ全員でふるいで小石を取り除いている。地道で辛い作業だけど、美味しいお米を食べるためだし頑張ってもらうしか無い。


 良太朗はほのかと、カカたち数人に手伝ってもらって水車設置することにする。


 水車は納屋の奥にしまってあったもので、直径が一五〇センチほどのものだ。良太朗の記憶には無いが、昭和の中頃までは使っていたと聞いている。田舎では収納場所問題が存在しないこともあって、なんでものこしてあるのが普通だったりする。良太朗の使っていた教科書どころか、父親が小学校入学時のものからすべて蔵に置いてあるくらいだ。


 水車としては小さめとはいえ、巨大な木の塊だから運ぶの苦労したのは言うまでもない。鳥居を超えるまでは、傷をつけないように慎重に転がして、鳥居を超えて異世界へ持ってきてからは、ソバーカの手を借りて男五人掛かりでここまで運んだ。


「じゃあみんなで動かすから、ほのかは正しい位置に来るように誘導して」


「ん!」


 ほのかも最近は動画に登場していて、顔出しもしていないのになかなかに人気がある。動画の中では、丸の中にひらがなで「ほ」と書いた手作りロゴを使い、編集時に顔を隠す処理をしている。


 良太朗たちは重い水車を持ち上げちょっとずつ動かしていく。ほのかは真剣な表情で水車の動きを見守っている。


「もうちょっと右」


「このくらい?」


「行き過ぎ!もどって」


「じゃあ、ストップって言って」


「ストップ!」


「ゆっくり下ろそう」


 全員で協力してゆっくりと水車を下ろす。良太朗は水平器を使って確認する。そこまで精密に設置する必要は無いけど、ある程度はきちんとやる必要がある。


「大丈夫そうだ。じゃあこの場所に固定しようか」


「はい」


 水車が動かないようにソバーカの人たちに水車を支えてもらう。その間に良太朗は、水車の軸を支えるベアリングを台座に固定する。今はまだ簡易な木製の台座だけで、その上屋根もない。だけど、田んぼが出来た後には、日干しレンガなども作り始める予定だから、そのうち立派な水車小屋を作りたいと思う。


「おっけー。固定した。もう手を離しても大丈夫」


「はい」


「ん! 完璧」


 良太朗は、水車軸にネジ止めされているスプロケットと、揚水ポンプとをチェーンでつなぐ。


 良太朗は試しに水車を手で回してみる。思ったより軽い力で動かす事ができて、チェーンで繋がった揚水ポンプがこぽこぽと音を立てて温泉を組み上げてくれる。回転力の弱い下かけ水車だから、少し不安があったけど大丈夫そうだ。


「じゃあ、最後の仕上げに用水路に水を引き込みますか」


「ん!」


 良太朗たちは、用水路を川に接続するために、スコップで掘り進めていく。掘り進めるたびに、だんだんと土が含む水分が多くなっていく。そしてついにチョロチョロと水が染み出してきた。


「よし、さいご!」


「良太朗。やっちゃえ」


 良太朗がスコップを差し込むと、水圧に負けて土が流れ出し、用水路に水が流れる。最初は少ないみずだったが、どんどん水量が増えていき、ついに水車が回り始めた。


「水車まわった!」


「ほのか、見に行こう」


 良太朗とほのかは用水路を流れる水を撮影しながら、水車へ向かって歩く。水車はカラカラジャラジャラと音を立てて回っている。揚水ポンプも順調に動作しているようだ。


「と、いうことは次は──」


「ん! 温泉!」


 良太朗とほのかは、揚水ポンプから伸びる塩ビパイプを辿って湯船へと向かう。もうちょっと予算や技術に余裕ができたら、この塩ビパイプもなんとかしたいと良太朗は思う。


 湯船にお湯を注ぐ蛇口の部分だけは石で出来ている。良太朗が神剣で削って作ったのだ。リュカの言う通り、木よりは抵抗感があったが普通に削って作ることができた。


「お湯、まだかな?」


「もうちょっとかな? ちなみにこの蛇口は、僕が神剣で削って作りました。さすがの神剣の切れ味で、石を削って作ったというのに、ハロウィンに作るかぼちゃのジャック・オー・ランタンより簡単に作れました。最初は武器なんてと思ってたけど、貰っておいてよかったです」


 良太朗が動画向けの説明を話していると、ついにお湯が蛇口から出始めた。うっすらと湯気を上げながら湯船にお湯が注がれていく。


「良太朗。これいつたまる?」


「うーん。見た感じ一分間に三リットル出てるか出てないかくらいだから、丸一日くらいはかかるかも?」


「ん。じゃあ動画は終わり」


「そうだね。次は温泉が溜まってからでいいね」


「明日は温泉入れる?」


「うーんどうだろう? 温度が安定するまでだと一日じゃ無理かも?」


「じゃあ、はいれない?」


「焚き火で焼いた石を入れて温度を調節すれば、たぶん明日でも入れると思うけど。ココたちも居るし水着持ってないからなあ」


「水着買いに行く?」


「こんな冬場に水着って売ってるかな? りこが作るって言ってた湯浴み着なんかは、水着以上に売ってなさそうだし。こんな事になるなら、通販で水着を注文しておけばよかったよ」


「ネットで調べる」


 ココたちは、黙々と田んぼ予定地の小石を取る作業を続けている。良太朗の予想では、完全に小石を取り除くまでまだ数日かかる。それが終わってやっと肥料を入れて、手押しの小型耕うん機で混ぜてやる作業に移れる。


「ん? ふるい、手伝う?」


「手伝ってもいいけど、手伝ってもあまり変わらないかな?」


「じゃ、帰る。水着検索」


「冬場でも、売ってる店があるといいんだけどね」


 家に戻るとリュカが、居間で良太朗のノートパソコンを使い動画配信を見ていた。少し前までは良太朗たちと一緒に行動することが多かったのに、最近は今のこたつが龍のねぐらになっている。夜もほとんど帰らず、ほのかの部屋で寝ている。神竜が他の世界に入り浸りって、そんなのでいいのかと良太朗は思う。だけど、メノウも何も言ってないようなので、神様の感覚は理解しがたい。


「ん! 売ってる店見つけた!」


「お? どこのお店?」


「んっ」


 ほのかは両手で持ったノートパソコンを、良太朗に向けて突き出してくる。画面を見ると、そこに表示されている店は、確かに通年で水着などを扱っていると書いてある。


「なるほど、ちょっと遠いけど朝から出れば大丈夫そうだな」


「ん! 水着買う」


「んぅ? なんのはなし?」


「ああ、温泉が完成したから水着を買って入ろうって話」


「あたしもはいりたい♡ お風呂気持ちいいし」


「じゃあ明日は朝から三人で出かけようか」


「ん!」


「りょ。たのしみ♡」


「今日は早めに寝といてね。明日は朝から早いから」


 これは明らかに田舎の欠点だと良太朗は思う。ちょっと変わったものを買おうとすると、自動車で片道一時間は当たり前。なんだったら片道二時間以上かかることもざらにある。片道二時間ってもはや小旅行といってもいいくらいだよね。

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