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『伝説の聖剣、焼けて曲がった』
「これが……伝説の聖剣……!」
村の少年が感動していた。
岩に刺さったその剣は、まばゆい光を放ち、抜く者を待っていた。
そこへ現れる、全身眼球の生物。
「岩に刺さっている……焼けない……」
百目である。
「ビームで炙れば抜けるんじゃね?」という神の悪魔的ささやき(※脳内)により、彼は動いた。
「低温モード・じわ焼き開始」
ビイイイイイイム……
聖剣が、ジュウジュウと音を立てて赤熱化する。
「ちょっ……誰だあああ!!聖剣を!食べ物みたいにすんなああああ!!」
駆け寄る少年を尻目に、百目は満足げに呟いた。
「焼けたな。抜けるな。……曲がったな」
――伝説の聖剣、ぐにゃり。
「いやあああああああああ!!!伝説ぉぉぉぉ!!!」
曲がった聖剣を持つ少年は、その後「曲芸剣士」として活動を始めることになる。
バトルには向かないが、宴会芸としては最強だった。