『焼かれてからが弟子入りです。~百目師匠と俺の灼熱修行録~』
俺の名はカイ・ロッソ。元・流浪の魔法剣士。
ある日、森で魔獣に襲われ、命からがら逃げたところを――焼かれた。
「ぎゃああああッ!!?」
叫んだ。叫んだよ、そりゃ。
服は燃えた。髪はチリチリ。剣も溶けていた。
だが生きていた。なぜか。
目の前にいたのは、あの“災厄の目玉”――百目だった。
「なんで……俺を焼いた……?」
「……焼けそうだったから」
シンプルにして致命的な動機。
俺は思った。
(この人(?)、神かバカかどっちかだ)
けれど、気づいたんだ。
俺の身につけていた壊れた剣、ボロ布、魔法石の欠片。
全部が**「焼かれて性能アップ」**していた。
剣は炎を帯び、布は耐火性能付き、魔法石は発光して謎の魔法を放ち始めた。
――なるほど。
「……俺、弟子にしてください!!」
百目は答えなかった。
だが、俺の肩にポンと“温かい視線”を感じた瞬間、俺のパンツが焼けた。
それからというもの、俺は百目のもとで修行を始めた。
修行といっても、**毎日“焼かれるだけ”**である。
朝:パン焼き(俺が)
昼:魚焼き(俺が)
夜:星を焼く練習(無理)
百目師匠は教えてくれない。
でも、焼かれながら気づいたんだ。
“熱の通り”=“魔力の流れ”
“焦げ方”=“エネルギーの圧縮”
“焼け跡”=“進化の痕跡”
俺は、焼かれて成長していた。
技も、精神も、服の防御力も。
そして一年後――俺は**炎を纏う剣士**として名を馳せた。
世間ではこう言われる。
「百目に焼かれて生き延びた唯一の人間」
「唯一、彼にパンツごと認められた男」
「師弟というか……焼き増し?」
師匠は今も何も語らない。
けれど、俺が旅立つときに一言だけ呟いたんだ。
「焼け。未来のために。」
俺は涙で視界がかすんだ。
その瞬間、涙が蒸発した。
百目式教育法――それはすべてを燃やし、心にだけ何かを残す修行だった。
俺は誓う。
いつか、俺の視線でもパンが焼ける日まで――!




