「百目式テクノロジー進化論」 ~文明、それは焼いた後にやってくる~
百目が異世界に現れてから、まだ一ヶ月。
だが、この世界は――急激に発展していた。
原因は明白。
「焼く」しかできない存在が、「焼く」ことだけであらゆる問題を解決してきた結果である。
「うおぉおおっ!?またゴーレム焼かれてるゥ!?今度は空飛んでるぞ!」
「いやもう焼かれる前提で作ってるからなあれ。焼却済み部品が最初から実装されてる」
かつての鍛冶村は、今や“百目工業都市”。
焼いた残骸が次の素材になり、
レーザー跡が精密工作技術として尊敬され、
焼き跡アートが現代美術として売れ始めていた。
「なあ、焼くのが技術なら、技術って焼けるんじゃね?」
「焼いて出てくる知識、それが……未来」
研究者たちは語る。
百目のレーザーには、“技術情報を物質に刻む力”があると。
データも設計図もない。
焼かれたモノの跡をなぞることで、新たな文明が芽吹く。
百目は黙っている。
(ちがう。俺はただ、目に入ったものを焼いているだけだ)
だが世界は、焼かれたことに意味を見出す。
民衆は語る。
「神の視線は、進化の炎だ」と。
そして今日も百目は、村人から差し出された謎の金属球を見てつぶやいた。
「これは焼けるな……」
バアアアアアアンッ!!
こうして異世界初の人工衛星が打ち上げられた。
なお、燃え尽きて5秒で落下した。




