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1. 繰り返されるループ(2)

自殺するのはとても簡単だった。

他の人は死ぬために体を地面に投げ出すか、毒を飲み込む必要があるが、私はその必要はなかった。

ただ短い一言を吐き出すための小さな勇気だけが必要だった。

「カナリア、今日は私を好きになったの?」

「うん、ディーター。君を愛するようになった。」

その時の彼の表情はどうだっただろう。正確には覚えていないが、とても嬉しそうだったように思う。

やっぱりディーターはバカだ。嘘にも気づかないバカ。

ディーターは私の言葉が終わるとすぐに鳥かごの扉を乱暴に開け、私を抱きしめた。

「ありがとう。本当にありがとう、カリスト。俺も、俺も君を愛してる。 16年前、道端で初めて会った瞬間から、狂ったように愛してるんだ。

初めてだった。ディーターが私を名前で呼んだのは。 しかし、最後でもあった。彼の言葉が終わるやいなや、またもや私は死んだからだ。


5回目が始まった。

そろそろこの回からは全てを諦めて生きていたので、記憶が曖昧だ。

この時、おそらく全世界に宣言したのだろう。カリスト・レノンは絶対にどんな男からのプロポーズも受けないからやめろと。

でも、人間の心理はやらないでいるとやりたくなるもので、この時、最短時間で死んでしまった。

一ヶ月も経たないうちに家の前にやってきて、私のバルコニーの下で愛のセレナーデを歌った奴のせいだった。


6回目が始まった。

5回死んだので、そろそろ死の痛みにも慣れてきた。

今回は特に宣言はしなかったが、誰かがプロポーズや告白をしに来た気配があれば、口を塞いで追い払った。

しかし、5回目の時と同じ奴がバルコニーの下から愛のセレナーデを歌い、また死んでしまった。


7回目が始まった。

泣きたかった、いや、泣きたかった?

泣きたかったような気がするし、笑いたかったような気がする。

混沌とした感情の中で、一つだけ確かなことがあった。

生きたくなかった。

私は屋敷の屋上から身を投げた。


8回目が始まった。

告白以外の理由で死ねばこの呪縛も終わるかと思ったが、そんなことはなかった。

死に方が悪かったのだろうか。

今回は毒を食べることにした。


9回目が始まった。

私はしばらく悩んだが、もう一回だけ死んでみることにした。

ひょっとして。もしかしたら、縛りを終わらせる条件が、3回連続で別の方法で死ぬことだったりするのかもしれない。

それで私は天井に首を吊った。


10回目。

繰り返される死で精神がおかしくなったのだろうか。

転生前の自分が誰だったのか、どんな顔をしていたのか、もう思い出せなかった。

いや、ただ忘れたのだろうか。

カリストになって30年以上経つから、覚えている方がおかしいのかもしれない。

いずれにせよ、今の自分に過去はどうでもよくなった。

これ以上の自殺は意味がないことに気づいた私は、今度は新しい方法を試してみることにした。

世の中にはそんな小説がある。

男主人公と別れるためにわざとバカなことをする小説。

今回は私が悪女になってみることにした。

わざと王や他の貴族にワインを注ぎ、器物を破壊し、凶器を乱射して.......。何をしていたっけ? とにかく思いつくことは思いつくままにやった。

希代の悪女になってみた感想は、一言で言えば爽快で楽しかった。

このとき初めて知ったのだが、人の頭をワイングラスでよく叩くと、とても清々しい音がする。ドーン、ドーン、ドーンと。

どうやって知ったかというと、パーティーで王様の頭をワイングラスで殴ったからだ。

ああ、この時、本当に面白かった。

どうやら私は悪女が適性だったようだ。

ここまで狂人ぶりを演じれば、誰にも好かれることはないだろうと思っていた。

しかし、私はあることを見落としていた。

世の中は広く、非常識な奴は多く、狂った奴はもっと多い。

人々は私にとげのあるバラというニックネームを付けてくれ、さらに私に熱狂した。

もともと美しい薔薇には棘が生えているのだから、私の悪行も当然だと言われた。

悪女として名を馳せた私は、結局、原作の黒幕であるアクシウスと絡んで死んでしまった。



11回目。

今回は私を直接監禁することにした。

これまでの知識を駆使して大金を集め、自分を伯爵家の塔に幽閉した。

私を知らなければ、どうせ告白する人間もいない。そのおかげで、ディーターに監禁された時も一番長く生き延びたのではなかったか。

今度は私を塔に閉じ込め、年をとって死ぬまでその空間で生きることを決意した。

しかし、それは5年も続かなかった。

使用人たちが私の噂を流したのだ。

最初は、カリスト・レノンが塔に閉じ込められているという小さな噂だったが、噂はどんどん大きくなり、やがて怪物が私を閉じ込めているという話になった。

可憐で美しい女性が怪物によって塔に閉じ込められている!

このような噂が広まると、子供の頃に童話を読んだことのある貴族の令嬢たちが私を助けにやって来た。

いっそのこと、本物の怪物が私を閉じ込めていたのならよかったのに。

残念ながら、私を閉じ込めてくれる怪物はいなかった。

結局、若い貴族たちは私の塔に熱心に押し寄せてきて、そのうちの一人が私の顔を見るなり愛を告白した。 終わりは誰もが予想通り。


12回目。

この回だけは絶対に忘れられない。私の人生で二度とないであろう最も不条理な死だったから。

好きになった男たちを避けて生きていたある日。

道を歩いていた私は、誰かの呼びかけに振り向いた。

「ねえ、一目惚れしたんだけど、もしかしてお茶でも飲まない?

見ず知らずのヤンキーに狩られ、私は無念の死を遂げた。


13回目。

ここまで来ると、問題は外側にあるのではなく、内側にあると感じた。

全ての問題は私の鼓膜から来ているのだ。

1回目も、2回目も、3回目も、12回目も。

私が音が聞こえなければ死ななかっただろう。

私はハンマーを持ち、片方の鼓膜を叩いた。

すぐにすごい耳鳴りが襲ってきて、何の音も聞こえなくなった。

反対側の耳も同じように叩くと、ようやくすべての音が遮断された。

もう聞きたくない告白を聞いてしまうなんてことはなかった。

13回目に私は新しいメイドを雇った。 名前はスアナ。

伯爵家に手話ができる子がいなかったので連れてきた子だった。

スアナは私の耳になってくれた。

彼女は誰かが話すと、彼らの言葉を代わりに手話で伝えてくれた。

この回で初めて知ったのだが、誰かが私に直接告白しない限り、心停止は起こらない。

だから、スアナが他の人の告白を伝えたことが何度もあったのに、私は死ななかった。

このとき思った。

私の耳を壊してよかったと。

聴覚をあきらめただけでこんなに幸せになれるなんて。もっと早く鼓膜を壊しておけばよかった。

少し時間が経つと、私は死への恐怖からある程度解放されるようになった。すると、次第に他の価値も見えてきた。

友情だ。

私の耳になってくれたスアナは、いつの間にか私のかけがえのない友達になってくれた。

スアナは愛らしく忠実な子で、一緒に過ごす時間は楽しかった。

しかし、この生活も3年以上は続かなかった。

私のためだけに手話を学んできた奴らが次々と現れ、誤って手話で告白するのを見てしまったのだ。

それでまた死んだ。


14回目。

前回の問題点を補うには、方法は一つだった。

私の耳も目も全部壊すこと。

私はためらうことなく耳をはじめ、両目までハンマーで叩き潰し、そうして残った三つの感覚だけで生きていかなければならなかった。

味覚と嗅覚は私を喜ばせるが、生き残るにはあまり役に立たないので、主に触覚に頼っていた。

今回もスアナを雇い、手話も使えなくなったので、彼女は私が質問するといつも私の手のひらに文字を書いて答えてくれた。

そうして何年生きただろうか。

誰かが私の手のひらに「好きです」と書いてくれて、目を覚ますとまた初日に戻っていた。

15回目の時は、またマインドを変えた。

13回目と14回目で最善を尽くしたのに、またもや死んでしまった。

ならば、問題は内部ではなく外部にあるはずだった。

そこで、とても晴れた日に、私は殺人鬼になることを決意した。

何人殺したかわからない。

ただ、前回のループで一度でも私に想いを寄せたり、告白したことのある奴らを全て殺した。犯人が誰だかわからない14回目の奴以外は一人も逃さなかった。

殺人はとても簡単で楽だった。

自分を殺すときは痛みを我慢しなければならなかったが、他人を殺すときはその必要もなかった。

罪悪感や申し訳なさすら感じなかった。どうせ、こいつらは放っておけばいつか爆発する時限爆弾のような奴らだった。

私がやったことはすべて正当防衛に過ぎない。いや、正直、怒りの発散だったかもしれない。

でも怒りの発散ならいいじゃないか。

この回が終われば、私の手で死んだことを覚えている者は誰もいないだろう!

最後に王まで殺した私は現行犯として騎士たちに捕まった。

罪名は王殺害。

愚かな騎士の連中は、帝国を騒がせた連続殺人犯の正体が私であることも、彼らの首領、騎士団長ドミニクを殺したのが私であることも知らなかったのだ。

刑務所に入り、私は自ら追加の罪名を明かした。

殺した男たちの名前をひとつひとつ挙げながら。

面白い見世物を探しに来た群衆は、私が閉じ込められている牢獄に向かって腐った卵を投げつけた。

たいした感動はなかった。どうせもうすぐ私はあのギロチンに登り、死を迎え、また初日に戻るのだ。

どうせなら、この束縛が終わればいいのだが、そうはいかないだろうが。

そうしてギロチンに登る日だけを待ちながら刑務所に閉じ込められていた私は、思いがけない理由で死んだ。

「私と恋の逃避行に出かけましょう、カリスト。ああ、哀れなカリスト! 私があなたを救ってあげるわ! あなたを愛するこの私が!」。

彼は刑務所の看守だった。私を見守る視線が普通ではないとは思っていたが、看守でありながら殺人犯にそんな感情を抱いているとは思わなかった。

16回目が始まった。

修道院に入った。神を愛する者たちが私を心に抱くはずがないと信じていた。

5年後に死んでから、それは自分の勘違いだったことに気づいた。

17回目。

自分で自分の顔を壊した。

この美しさがなければ、誰も私を求めないと信じていた。

しかし、私の墜落は他の人にとってはチャンスだったようだ。

今まで一度も私に想いを伝えたことのない使用人が近づいてきて、愛を告白した。

ずっと前から好きで、私が墜落する日だけを待っていたという。


18回目。

王と結婚した。

彼に会った初日に、私はこれまでの異変について明かした。

告白を受けたら、私は死んで初めてに戻るって。

だから、私を手に入れたいのなら、あなたを含めて誰にも私に愛を表現させないでほしいと頼んだ。

彼は自分と結婚することを条件に私のお願いを受け入れた。

このときから私は王妃として、かなり安定した生活を送ることができた。

だって、誰があえて王の妻に口説くだろうか。

だから今度こそ無病息災だろうと思った。

しかし、王妃として出席した隣国との外交交渉の席で、隣国の王が私に一目惚れしてしまった。

数年後、その王国は宣戦布告した。ちょうどその頃、王国には疫病が流行っており、兵力がかなり弱っていた。

勝機が次第に隣国に傾くと、王、レンゲンは私に告白することを決めた。

「他人に渡すくらいなら、俺の腕の中で死んでほしい。 カリスト、お前を愛している。

王の願い通り、私は彼の腕に抱かれたまま死を迎えた。


19回目。

記憶にない。

20回目。

記憶にない。

21回目。

思い出したくない。


22回目。

再び初日に戻った。

今日もお読みいただきありがとうございます!

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