適当の結果
三題噺もどき―さんびゃくよんじゅうさん。
「さて……」
と。
時刻は午前八時。
仕事は嬉しいことに休み。
だが。
やることが全くないと言うわけでもない。
休みの日は休みの日で、やることやるべきことがそれなりに存在している。
「……」
そうならないように、毎日細々とすべきなんだが。
どうにも続かないのだ。そういうものは。
SNSなんかで見る、日々のルーティンとか月初ルーティンとか。
ああいうのをまねたこともあるんだが……どうもすべて三日坊主で終わる。
「……」
そもそも、向いていなかったんだろう。
こう、決まったように動くと言うか、何だろう……、続けることというか、そういうものがだめなんだろうなぁ。
続ける、習慣化すると意識した途端に、それまでできていたとしても、できなくなる。
何ともまぁ、面倒な奴だと思う。
「……」
まぁ、それはさておき。
どうでもいいことはさておき。
目の前の問題を片付けるとしよう。
着手すべきは時間の少々かかるコレからだろう……。
「とりあえず……」
一週間分溜め込んでしまった、この洗濯ものたちをどうにかしよう。
目の前にある小さめの籠の中には、良い感じの量が溜まっている。
そもそも溜めるなというのは置いておいて。
「……」
その籠の中身を、適当にポイポイと洗濯機の中に放り込んでいく。
さて、入りきるだろうかと不安になってきた……。
ん……大丈夫そうだな。とりあえず、ぎゅうぎゅうと押し込めてしまえば綺麗に入ったのでよしだろう。
「……」
その上からこれまた適当に液体洗剤を入れていく。柔軟剤も迷いはしたが、アレは匂いがするのがそもそも嫌いなので、よほどでない限りは入れない。
今回は入れなくてもいいだろうと、適当に判断したのでそのまま蓋を閉める。
「……」
洗濯機の手間に『全自動洗濯機』とロゴのかかれているパネルがある。
パネルという程立派なものでもないか。ただボタンとかがあるだけだし。
……しかし、このロゴ直接的すぎやしないか。確かにそうはあるけれど、もっとあっただろうに……。
まぁ、むしろこの露骨さが好みではあったりするけれど。
「……よし」
電源を入れ、設定をし、スタートを押す。
水が流れ出したことを確認した上で、その場を離れる。
過去に、元栓を閉めていて、全くできていなかったことがあるので、確認だけは怠らない。
……これも習慣化しようとすると、できなくなるのかな。
「……ん」
洗濯が終わるまでの間に、部屋に掃除機でもかけようと思ったが、その前に腹ごしらえをしよう。
実は、起きてから一時間もたっていないうちに、八時になってしまって。何も考えずに時間だけ見て動き出したので、何も口にしていない。
「……」
とは言え、しっかりと食べるほどではなさそうだ。
何か適当に口の中にでも放り込んでおこう……なんかあっただろうか。
「……ぉ」
洗濯機の前を離れ、数歩先のキッチンへと向かう。
その端の方に、箱が置かれているのを見つけた。
緑色の、個包装されたお菓子が入っている箱だ。
「いいものみっけー」
見つけたと言うか、そこにあったのは分かっていたが、少しでもテンションを上げる意味でそう漏らしてみた。
たいした効果はなかったが。
むしろ虚しくなった。
「……」
その箱の中身は、カカオ成分が多めのチョコレートである。
元々甘すぎるものは得意ではなかったので、こういうチョコレートが手に入りやすくなったのは個人的にはありがたい。
「……―――ぅぇ」
その箱の中から、適当に一つつかみ。
袋も確認せずに、適当に口に放り込んだのが、悪かった。
「……」
口内で、チョコレートに混じって柑橘系の風味が広がりだした。
噛む度に広がるその匂いを、渋々と感じつつ。
何とかごくりと飲み込む。
「……っう~」
すぐそばにある冷蔵庫の中から、水を取り出し、口に流し込む。
これ、あれか。
先輩がくれたやつか。
みかんの風味というか皮か何かが入ったチョコレートだったはずだ。
……こういう、柑橘系の風味がするものは不得手なんだが。先輩からというものもあり、断り切れずに受け取って、適当にここに放り投げたのだ。
何も考えずに。
「……」
食べられないと言うわけではないが……。
どうも気分は下がってしまうよなぁ……。
つい数分前まであった、やるきというか気力というかが。
みるみるなくなっていくのを、感じていた。
洗濯干す元気でるかなぁ……。
お題:全自動洗濯機・チョコレート・みかん