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リンカーネーション  作者: 鹿十
第四章 ブレイザブリク応戦編
98/203

ブレイザブリク㉒ vs樂具同(6)

樂具同の標識解説!

※これらの能力は全て樂を中心に展開してある球体状の区域(直径26m)に侵入した物体にのみ適応される


指定方向外進行禁止

→指定した方角へベクトルを操作し対象物を動かす標識

何かしらの物体に衝突するまでベクトル操作は止まらないようだ

使いやすいのか、樂はもっぱらこの能力を愛用している


徐行

→区域内の物体の運動を「ただちに停止できうる速度」にまで減衰させる

またこの特性を逆に利用して、停止している物体に使用すれば徐行の速度で動き出す


最低速度~km

→区域内の任意の物体の速度を~km/hまで強制的に増加させる

区域外を出ればその効力が消えるので、区域外に飛び出した物体は普通にある程度飛んだら速度を失い地面に落ちる



高さ制限

→指定した高さ以上の物体を全て切り裂いて粉々にする

     

止まれ

→単純に区域内の全物体の運動を完全に停止させる標識

    

すべりやすい

→区域内の地面の摩擦係数を限りなく小さくする標識  

これを使用して樂具同は高速で滑走していた


落石のおそれあり

→区域内上空に岩を形成

それをベクトル操作で区域内のみに落とす標識

他の標識と同様、これで発生した落石はいかなる術式効果も効かず防御を貫通する

そのため内包樹素量が大きくても、保護術式で守っても意味がない


他にもいろいろ沢山あるらしい! 

          

「ヨ……ゼフ?」


 大量の血が大地を伝う。

 もはやただの亡骸と化したヨゼフを。

 アマルネは呆然と、ただ見つめていた。


「4人目、〔『規制標識』指定方向外進行禁止 左折〕」


 アマルネの体がベクトルの作用を受け左側へぐんっと引き寄せられ。

 廃墟の壁に突っ込む。

 もはや戦闘ではなく、処理に近い。

 ただ機械的に眼の前の障害を排除しただけーー樂はそんな程度の認識でアマルネを雑に処理した。

 瓦礫に塗れながら、血を流したアマルネは。

 一撃でダウンしそのままパタリと地に倒れた。


 その後、遅れてやってきたのは、ガルム。

 胸を貫かれ死亡しているヨゼフと。

 瓦礫に塗れ気を失っているアマルネを見つめ。

 ただガルムは己の無力さを噛み締めるように、下唇を噛んだ。


「テメエ……」

「あとはおぬしだけじゃな」


 ガルムは四足歩行になり駆け出す。

 目にも止まらぬ速さだった。

 周囲には廃墟が立ち並んでいる入り組んだ地形。

 3次元的な空間把握、移動を行うガルムにとって絶好の環境。

 

 一撃、二撃、三撃と。

 ガルムの爪が樂の体を刻む。

 樂も陽太と同じく転移者である、そのため樹素で受ける攻撃に極めて強いことには間違いない。

 だが、とはいえ。

 ガルムの爪は樂に小さくはあるが確かなダメージを与え続けていた。


(……この獣人はすばっしこすぎて、区域に補足できない……攻撃を当てて逃げて……これを繰り返されているといかに儂といえど……厳しいのお、なるほど、これが獣人か……確かに手強い)


 改めて樂は獣人の真髄に気づき感心する。

 基礎的な肉体のスペックが人間とはまるで違う。

 例えるならば大きな昆虫だ。

 昆虫は哺乳類などと比べると圧倒的な強さを誇るらしい。

 サイズが違うがゆえに、地球環境化では人間の方が優位にあるが。

 その基礎的なスペックは実は哺乳類など比にはならないほどに優れている。


 その昆虫の強さを。

 一切物理法則に矛盾と齟齬のない形で人間の大きさに拡張したようなもの。

 それが獣人。

 絶え間ない生物淘汰の上に完成された生物の完成形。


「……だが、しかし……悪いなあ、犬っころよ。どれだけ生物として強くたってなあ、儂らはその生物の『範囲外』におるからのお〔止まれ〕」


 ビタッと。

 ガルムの体が空中で停止する。

 ガルムは口を開けたまま、思考だけは続けることを許され。

 完全に肉体の自由は奪われていた。


(……な……んだ? 何故……おかしい……だろ、オレァ……区域には入ってねェ……しかも……さっきスノトラにやったみたいに……区域の形を変え、26m以上伸ばすような手段もこのジジイはとってねェ……)


 眼球だけを動かし、樂の足元に注目するガルム。

 確かに、区域の形は球体状であり。

 変形、拡張されている様子は見られない。


「悪いなあ、犬っころ。見えているものだけが全てとは限らんのじゃ」

「ーー」ガルムは一切喋れない。

「区域の結界の性質そのものをイジってみたんじゃ」


 トンっと。

 樂は杖で地面を叩いた。

 すると区域自体が振動でゆらりと揺れ。

 内部に顕現された標識や電柱などのオブジェクトもゆらゆらとカーテンのように歪曲し揺れる。


「区域を波紋の性質に変えてみての。水辺に浮かぶ波紋じゃ。敢えて結界の形を定ませず崩すことで、区域の規模は波状になって26m以上……外部まで届く……」

「ーー」

「そんなのありかって顔をしてるの。そうじゃ、それが『根源の異なる力』だ。別世界を展開し、別のルール、法則、規則で構成された自分だけの絶対領域を他者に強制させる理不尽極まりない能力。どれだけ生物として優れていてものお…………世界の禁則、いわば物理法則それ自体には勝てないじゃろうて」

「ーー」

「相手が悪かったの。犬っころ〔環状の交差点における右回り運行〕」


 ぐん、ぐん、ぐんと。

 停止したガルムの体は円状の軌道で区域内を右回りで巡り続け。

 それが十数、何十回も繰り返され、十分に加速したのを見ると。

 その円状の軌道の中心にいた樂は


〔――指定方向外進行禁止 右折〕

 

 瞬間。

 十分に加速したガルムの体は円型の軌道を抜け、右折。

 そのまま廃墟に突っ込み、大穴を開けた。

 瓦礫が舞う中見えたガルムの姿は、血まみれで。

 いかに耐久性に優れる獣人といえど、耐えきることはできずダウンした。


 そして――ほぼ仲間が全滅してから。

 戦場に現れた、樂と同じく異世界転移者の――立花陽太。


「クソ……全滅か、皆……」

「随分と落ち着いているの、仲間が窮地に陥っている、もはや敗北が確定している状況なのにも関わらず」

「まだこれからだろ、僕が残ってる」

「前向きなことだ……いや、現実を知らないと言うべきかの」


(こやつは「根源の異なる力」を持っていない……あの……消えない炎の術だけに警戒すれば他は気にして無くていい)


 樂は思考し警戒しつつ。


「儂はの、この世界に来て、やっと自由をえたんじゃ。いつも歩道ブロックにしか進めない。そこにしか儂の居場所はなかった。だがこの異世界では、儂は全てを掌握できる。みたいものを見て、進みたい場所を選び、生きたい所へ行ける。おぬしらが当たり前のように享受しておるその特権が、儂にないことが腹立たしかったんじゃ。ずっとずっとな。しかしここでは違う。異世界では違う。儂は真に自由になれた。

もはや黄色のくだらない小さなブロックの上を、せこせこ歩く必要などない。儂は力と自由を手に入れた、勝ち取ったんじゃ」

「勝ち取った? 自由を? はっ……樂、お前はまだずっと不自由なままだ。どこにも行けていない。ずっと死ぬまで黄色のブロックの上さ。今も、この後もずっとな」

「……」


 ピクリと、陽太の煽りを受け、樂の眉が怒りで動く。


「系譜にもなれず、夢を追って異世界に来たはいいものの、何も得れず。手に入れたのは大したことのない『まじない』と少しばかり特殊な肉体のみ……キヒッ、妬みか? 立花陽太。貴様が手に入れていないものを、儂は全て持っている。異世界に来て落ちぶれた貴様と、異世界に来て全てを手に入れた儂。どう考えても、不遇なのは貴様のほうじゃ、立花陽太」

「そうか、そう思うならそれでいい。僕は進む。生憎、僕はこの異世界に来て、落ちぶれたとも、全てを得たとも思っていない。ただ眼の前のことを本気で取り組んで、ただ理想を追いかけているだけだ。全てを手に入れたつもりになってるみたいだけど、樂、お前はまだ()()()()()()()()よ」

「負け犬の遠吠えか。貴様はもうすでに儂の区域内に入っている」

「何が言いたいんだよ、さっきから」

「それがおぬしの最後の遺言でいいのか、と問いておるのだ〔指定方向外進行禁止――


 樂は意地汚く笑いながら、声高らかに詠唱をする。

 もはやそれは勝利宣言だった。

 盲目であるがゆえの劣等感。

 その立場が、異世界では逆転する。

 盲目な自分は「根源の異なる力」という莫大な祝福を受け。

 対して、現実世界で何不自由無く、点字ブロック以外の道を歩いていた立花陽太は。

 何も得れず、何も果たせず。こうして啖呵を切ってくるしかない事実に。

 この上ない優越感を感じながら。

 樂は眼の前の立花陽太を力場操作能力で始末しようとした。


 詠唱は余命宣告。

 陽太の命はあと僅か数秒で終える。

 だがしかし、立花陽太の理想は、魂は、未だ輝きを褪せない。


――右折〕


 詠唱が終わる。

 ブレイザブリクの長らく続いた、系譜との決戦も。

 そして同時に、終わりを迎えようとしていた。

 

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