ブレイザブリク㉑ vs樂具同(5)
此岸の人間→肉体の構成要素が樹素とは異なるため外界樹素を乱す
外界樹素を乱すため術式が効かない(内包樹素100%の術式には無力)
系譜→系譜も此岸の人間なので、陽太と同じく外界樹素を乱す肉体である
「根源の異なる力」を持つ系譜は術式が使えない
Q)じゃあなんで須田正義は術式使えてたし、普通に術式での攻撃が効いてたの?
A)須田正義の「根源の異なる力」は「全ての能力値を数値としてステータス化してゲームとして戦闘を進行させる能力」だったから
いわば戦闘形式を指定して強制させる力
そのため須田正義の「根源の異なる力」使用中は陽太にも普通に術式が効くし須田正義も術式が使えた
陽太:「根源の異なる力」✕ 「術式」◯ 「外界樹素を乱す肉体」◯
須田正義ら系譜:「根源の異なる力」◯ 「術式」✕ 「外界樹素を乱す体質」◯ って感じです
【転移の時間系列は必ずしも一致しない】
【此岸から転移した3名の人物をx、y、zとし彼らがx→y→zの順で転移したとする】
【すると異世界に転移した順列もx→y→zになると思うだろう】
【しかし実際は異なり、これらは定まった順列にはならない】
【xがzよりも遅い年代の異世界に転移する場合もあるし、zがxよりも早い年代の異世界に転移する場合もあるのだ】
【xに『零式』、yに『立花陽太』、zに『樂具同』を代入してみると分かりやすいだろう】
*
樂具同は驚いたような顔をした。
皺だらけで表情がよく読み取れないが、確かに驚いていたように見える。
そして
「……あんたの名は」
「立花陽太だ」
「そうか……陽太さんよ、ばれちゃしょうがないな。儂もなんとなくそんな気はしていたが……敬語を使うべきかい?」
「いや、必要はないよ」
「……どうして気づいた?」
「あまりに価値観が違っていたからさ、そんなこと、どうでもいいだろ、僕とアンタは敵だぜ」
「……そうじゃな、決着が付いてから、詳しく聞き出すとしよう」
ミミズクの傍らの空間が歪み、ヨゼフの姿が現れる。
ヨゼフは倒れるミミズクを背負い、再び転移。
待機している治療班の元へミミズクを転移したのだろう。
スノトラもおそらく同じ場所に転移されている。
〔居合流〕
陽太は再び自身に居合流の術を付与。
体に闘素を流し、身体能力を向上させ、右拳を思い切り樂の胸元に振るう。
ドンッと衝撃が入り、樂は口から唾を吐いた。
効いている。
樹素を見出せる此岸の人間の特異体質も。
此岸の人間同士では全く意味がない、ただの喧嘩だ。
〔『規制標識』――
樂が詠唱し始めると、陽太は後退し球体区域から逃れる。
その様子を見て樂は感づく。
(やはりそうか。陽太、おぬしはあの猫背の男と一緒に転移できんのだな?)
【此岸の人間の肉体は外界樹素を乱すため、外界樹素を用いた術式の効果を減衰又は完全に中和する】
【それは他者から掛けられた保護術式などの有益な術も例外ではない。だが保護術式程度の簡易的な術ならばある程度効力は削減されはするものの、完全に乱し効果を打ち消すことはない】
【だが霊術のような極めて緻密な樹素の操作が要求される術式に関しては、少量の錯乱で術式が作動しなくなる】
【そのため陽太含む此岸の人間は、ヨゼフの霊術による空間転移を行えない】
(それもそうじゃな、転移できるならば、あんな面倒な手段をとって炎を当てにいく必要など無い……しかしこやつが転移できないという情報は有り難いが……奴の攻撃は儂には普通にダメージが入るのは困ったことだの……そして、まじないを使用してくるということは……儂や零式の持つ系譜の力をこやつが使えないことは確実! ……系譜の力を持つ者は、まじないが使えないからの)
陽太は距離を取るものの。
樂具同は近づき、力場区域に陽太を招き入れると
〔指定方向外進行禁止 上〕
ぐんっと。
陽太の体は上空へ引っ張られ、その後地面に叩きつけられる。
「がッ……」
陽太は悶絶する。
が、隙を見計らって。
ガルムが突入。
陽太を抱え、力場区域から逃げ出し距離を取ると。
陽太をその場に置き、再び四足歩行で樂に向かっていく。
しかしガルムの動きに先ほどまでのキレと速さはない。
戦闘による疲弊、それは獣人の弱点である体力の無さが原因。
それに加え、先ほどの小石での攻撃でかなりの怪我を追っていることも影響している。
アマルネの矢も隙を見て射出され爆発し援護をする。
アマルネの矢の飛んでくる方角がその都度変わっているのは。
おそらく位置を補足されないために定期的にヨゼフと場所を転移しているからだろう。
だが、今現在、ヨゼフはミミズクを運搬している最中だった。
矢が飛来すると、「止まれ」の詠唱と共に樂に着弾する前に空中で停止する。
そうして矢が飛んできた方角を見つめると樂は笑いながら
「……見つけたぞ。3人目は弓士じゃな」
というと
〔『警戒標識』下り急勾配あり+すべりやすい〕
詠唱をする。
すると、樂のいる地面がぼこりと膨れ上がり。
その後急斜面が形成される。
その下り坂を波に乗るかのように滑って滑走する樂。
自身の「根源の異なる力」で地形をいじり、移動手段として活用しているのだ。
「……クソ、ガルム! やつはアマルネを狙う気だッ先にいけッ」
陽太が叫び終わる前にガルムは四足歩行で樂を追いかける。
滑走する樂と段々と距離を詰めていくが。
13m以内に侵入すると、ガルムは盛大に滑って地面に転がる。
「すべりやすい」の標識効果で区域内部の摩擦度が急激に低下しているためだ。
「ッ……」
ガルムは遅れを取る。
また樂具同と距離を取らされる。
廃墟の上、樂と約30mほどの距離にいるアマルネは。
接近してくる樂に焦りながらも、詠唱をする。
〔『式』系統は魔素。器は『幸』――シルフ・テヌート〕
アマルネは風属性の術を応用。
人体に影響のない風量に抑えつつ、それを利用して空中浮遊して逃げようとする。
が、そんな努力も虚しく樂に追いつかれ球体区域26m以内にアマルネが入ってしまうと。
樂具同はすぐさま詠唱をした。
〔『規制標識』指定方向外進行禁止 下〕
浮遊していたアマルネの体が力場作用を受け、そのまま地面に急落下し叩きつけられる。
その高さはおよそ20数m以上。
ぐしゃり、という骨や肉が砕ける音が散る。
「ッ…があああ……ッ……」
アマルネの左腕は体の下敷きになってしまい。
関節とは逆側に歪に曲がってしまっている。
激痛で悶え苦しむアマルネ。
「まだ息があるの」
そんなアマルネに悠々自適な様子で近づく樂。
もはや無力なアマルネにとどめを刺そうと詠唱をし始めると。
それを阻止するかのように、遅れてやってきたガルムが追いつき。
右腕の爪を振るうが、最低限の動きで樂に避けられる。
「邪魔じゃ犬っころめ」
樂は体を支えていた杖を手から話して
〔『最低速度60』〕
と詠唱するとガルムの方角に向け時速60kmで杖が飛んでいき。
ガルムの喉元を殴打すると、ガルムは唸り声を上げ、その場にうずくまり、気絶する。
「さて、邪魔者は全員消えたの」
樂はポケットをまさぐると。
一本の短剣を手に持ち、その刃先をアマルネの胸元に照準を合わせるように向け。
そして
〔徐行+最低速度60〕
ナイフは、ゆっくりと動き出し。
その後60kmにまで急加速。
その方角は――アマルネの喉元に向かっている。
当の本人であるアマルネは。
もはや死を悟った小動物のように。
怯えることもなく、ただ脱力し。
むしろ、死を受け入れるかのように、望んでいるかのように。
その場に立ち尽くしていた。
(もう十分か。……十分やったさ、アマルネ=ネリネ。すまない、ヨゼフ、約束は果たせそうにないよ。許してくれるかい? 君はまだ怒っているんじゃないかな、それもそうだな。贖罪を終えていないのに。ははッ……全部中途半端だったさ……)
アマルネの脳裏に走馬灯が巡る。
薄い思い出、中途半端な人生、呪われしネリネ家の末裔でしかない自分。
「これくらいの人生が――【分相応】なんだよ、僕の」
瞬間。
アマルネの眼の前の空間が、虚無が。
蜃気楼のように歪む、屈折して現れたのは。
猫背の、気弱な、しかしそのうちに覚悟が、怒りが、絶望が込められていることを。
僕だけが知っている、そんなヨゼフの姿があり。
彼は後ろを向いてアマルネに向けほほえみながら。
コンマ数秒にも満たない、そんな最中で。
確かに、アマルネは聞いた。
「――貸しだぞ、アマルネ。僕との約束、絶対守れよ?」
そう言って、それはそれは、もう、今までに見たこともない満面の笑みで笑った。
物理法則は人間の感情には左右されない、当たり前の話しだ。
そんなアマルネの、献身や信条を世界は労ること無く無視して。
ただ厳しく、冷徹にプログラムのように動いていて。
ヨゼフの胸をナイフが貫く。
アマルネを庇って、ヨゼフの胸に。
しかしヨゼフは、自分が死にゆくというのに、笑顔だった。
満面の。雲一つもない、幸せそうな。
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