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リンカーネーション  作者: 鹿十
第四章 ブレイザブリク応戦編
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ブレイザブリク⑭

※本文の補足説明です。

4つの術式天体は、『衛星』担当と『恒星』担当があります。

ノルズリ、スズリ、アウストリ、ヴェストリはそれぞれ正位置は北、南、東、西に位置しているのですが。日によって日中、太陽のように光源になる担当と、深夜に月となり暗闇を照らす担当が代わるんです。

どちらの役割を担うかは軌道で決められており、異世界の空は合計千ほどの固定された軌道があって、日によって4つの天体がどの軌道を辿るかランダムで決定されます

(レールみたいな一本の固定軌道が空に無数に存在してて。そのレール上を、4つの球体がランダムで配置されて、軌道上を真っ直ぐに動くイメージ)


軌道の予測は不可能に近いんですが、辿る軌道は固定されてるため、朝に観測した時点で大まかな軌道予測は立てられ、順列が確定します。よって異世界には朝一番で、術式天体の全軌道を組み合わせて予測する予報士が存在します


軌道パターンは、重複は無く、1000の中から4つの軌道をその都度、選ぶことになるため、全パターンは10兆くらいあります(計算間違ってなければ)


その中で、4つの経路全てが重なるルートがいくつかあります。

それらのルートは、何故か重なる際は全て同じ点で同時刻に重なるんです。

謎ですよね。

全てのルートは異なるのに、重なる時、地点だけ示し合わせたみたいに一致する。

その点を『特異点』と呼びます。


4つの術式天体が特異点で重なる『モーンガータ』という日は世界が紅く染まり、空へ向かって上昇気流が発展し、外界樹素が異常な挙動を見せ、大気中を激しく走るために甲高い不協和音が鳴り響きます。

太古の人々は、この日を『世界の終焉』とし「モーンガータ」が訪れた日は極めて不吉な日とされています。

もう誕生してから何万、何千年も経過している異世界ですが、モーンガータが訪れた日は両手で数えられる程度しかありません。


主人公 立花陽太のいる異世界から400年前にモーンガータは発生しています。

世界は紅く染まり、おどろおどろしく、悲鳴のような甲高い音が鳴り響く地獄絵図だったそうです。

モーンガータが発生したタイミング、樹界対戦終了時、アグネ一行が世界樹に到達した時、この3つのタイミングは奇妙なまでに一致しています。


長いこと書きましたが、とりあえず、術式天体はノルズリ、スズリ、アウストリ、ヴェストリの4つ。

その4つを運用してるのが「ソール」と「マー二」という超次元的存在だよってことだけ覚えてくだされば大丈夫です。


ソールとマー二は一応、「空想種カテゴリーエラー」に該当しますが。

その正体は全くの謎…だからこそ、この種族なんですがね。





【アグネと天体周期】


【樹界大戦時にアグネ=ド・ノートルダム一行が達成した旅路を記録し伝聞する実話をベースにした物語】


【元は人類種ヒューマニティ専用の言語で綴られたものだったが、そのあまりの著名さ故に種族の垣根を超えて翻訳、拡散され異世界全土に広がり、現在では『世界樹の漆』や『オーディンとエインヘリャル』、『隻腕の霊剣」などと並び、世界中で最も有名な本の一冊として名が知られている】


【その内容としてはアグネ=ド・ノートル・ダムが達成した『魔術革命』の樹立に至るまでの経路や道中、旅の全てをアグネ独特の言い回しで面白おかしく綴られたものであった】


【当時、種族として極端に貧弱で鎖国的な体勢を取らざるを得なかった人類は、『アグネと天体周期』を通す形で人類界ミッドガルド以外の世界を知覚、想像していったとされる】


【しかし今現在は、誇張又は改ざん、歪曲された部分が極端に大きく歴史的客観性に欠けているとして、人類史を表す古典歴史書としての評価は低く。いわば『白雪姫』や『ヘンゼルとグレーテル』のような一種のおとぎ話の一つという位置づけであり、娯楽物語として楽しまれている】


【内容は、術式天体ノルズリ、スズリ、アウストリ、ヴェストリが全て重なる点、通称『特異点』で天体が全て重なる珍しい日『モーンガータ』が来たる日を期日として、それまでにアグネ一行が9大陸全てを横断し、世界樹にまでたどり着く冒険譚となっている】


【術式天体の恒星を運用する日輪の女神『ソール』と深淵の衛星を運用する稀月きげつの息子『マー二』が、特異点で重なり合い、世界が滅びるーーその日まで。アグネ一行は決して冒険を止めぬのだ】


【レーク石碑が尽き、もう二度と戻れなくなる。それまでにーー】



「いたわ。探すまでもない。あの原生魔獣が死体をゾンビ化させてる元凶だわ」


 フレンは廃墟の影から、鱗で覆われた空に向け指を指した。

 指の先には、廃墟の上で佇む原生魔獣――ブ―ドゥ―がいる。

 

「幻術を使って気配を消すことすらしてないわアイツ。シグルドが封印された今、敵なしって感じなんでしょうね。ムカつくわ」

「……あの魔獣一匹で、大量の兵士を操ってるのね……」


(恒常的な治癒術式に加え、身体強化、保護術式をも何枚も重ね合わせ強化させたゾンビを……単体で3000以上操ってる……ってことなのよね? あり得ないわ)


 犯罪集団の死体を、階級に換算して「能~力」剣士程度にまで強化。

 そして彼らに莫大な樹素を要求される恒常的な治癒術式を付与した上での千以上の個体の操作術。

 スノトラは改めて原生魔獣の恐ろしさを身を以て体感した。

 原生術式の規格外っぷりもそうだが、何より彼らの「なんでもあり」な術式を発動、維持できるだけの圧倒的な内包樹素量を誇っていることこそが驚愕に値する。

 もはやブードゥ―は底の見えないダムと同じ。

 莫大な内包樹素量は尽きる気配すら見えない。


「しかし……精度はかなり悪いわね。術式の効力範囲や作用個数が極めて大きい代わりに、その分、精度面で難がある……現に、街中のゾンビは低レベルな幻術を使用すれば簡単に騙されてくれたわ」


 3千にも及ぶゾンビは全て強力だ。

 フレンとスノトラといえど、何十も相手していたら確実に体力が奪われる。

 しかしブードゥーは、ゾンビ自体を操り支配下にいれることは出来ても、各個体に具体的な命令を下し、組織として統制させることは不可能なようだ。

 知能や思考力はほぼ皆無と言ってよく。

 近くで過敏に動く物体や、樹素が多いモノを手当たり次第に破壊して回っているだけだ。


「とにかく、アイツさえ倒せば、街中を覆い尽くすゾンビは全部息絶えるわ」

「でも攻撃手段が無いのよ。フレン先生の最高火力の技でも、あのメデューサには傷が付けられなかった」

「スノトラの重力術式……調律はどう? あれなら原生魔獣にも効果はある」

「それが……てんで駄目なのよ。もう一切発動できないのよ」スノトラは申し訳無さそうに俯く。

「さっきは成功してたんでしょう? 何で躓いているワケ?」

「色々問題は山積みだけど、一番のネックは系統変化なのだわ。先祖アグネの残してくださった重力術式……これは異世界には存在しない仮想の力場を再現する術なのだけれど……樹素→重力子グラビトンに再構築する時の感覚がイマイチ掴めないのよ」


 フレンは自分で聞いておいて、スノトラにひどく関心していた。

 先祖アグネの残した重力術式ーーそれは理論上のものだ。

 術式を発動する際には、必ず樹素を「闘素」や「魔素」に変換するーーこの工程を系統変化と呼ぶのだが、闘術や魔術を使う時は、予めプログラミングされた決まった道程を辿ることになる。


 魔種イフリートならば生まれながらに持つはずの「術式回路」はこの系統変化を脳や脊髄を介さない形で行う臓器に過ぎない。

 当然、人と魔の間の子であるフレンには「術式回路」は存在せず。

 そのため詠唱などでの術式の発動が必須となるのだが。


 何度も同じ動作をすることで脳がその行為に慣れ、習慣と化していくように。

 完全に慣らしてしまえば、脳の回路が「術式回路」の代用となる形で。

 無詠唱、式を通さない形での術の発動が可能となる。

 

 しかし無詠唱で発動できる術は簡易なものが多い。

 付与記号が絡むなどして複雑化した術式は無詠唱での発動はかなり困難となる。


 重力子。

 それは架空の系統。

 アグネが書記に遺した「重力」という力を伝達するための媒介。

 理論的には無理はないが、現実性はない。

 見たことも聞いたことも、体験したこともない。

 そんな架空の系統を、理論だけで習得し、ついにはあろうことか人間の少女に過ぎないスノトラが一時的に術式を完成させてしまった。


 間違いない。

 スノトラの実力、潜在能力はシグルドに負けるとも劣らない。

 原生魔獣すらも優に超えるかもしれない。

 そんな可能性を秘めている。

 

 つまりフレンは、素直に感服していたのだ。

 背伸びをしたって、逆立ちをしたって勝てるはずがない。

 魔術師としての才覚が別次元である。

 

 まだまだ単純な力量、技術はフレンに劣る所も多々見られる。

 しかし、フレンは自分は一生掛かっても、架空の力「重力」を再現する術式を。

 先祖の拙い文章とハチャメチャな理論を元に。

 一瞬でも再現できるとは到底思えなかった。


「……やっぱり、あの原生魔獣なんて相手せず、素直にシグルドを奪還するのに専念した方がいいかもしれないのよ。今からだって、ガルムや陽太と合流して、系譜……ってヤツを皆で倒す……そっちのほうがまだ少しは勝率が高そうなのよ」


 弱気になるスノトラ。

 フレンも全く同じ気持ちだ。

 しかしなんだろう? この胸から湧き上がる謎の高揚感、期待感は。

 スノトラならばーーどうにかしてくれる。

 重力術式さえ完成したらーー。

 不安でいっぱいになるスノトラとは対照的にフレンは勝ち筋を見出しかけていた。


 じっとスノトラと目を合わせるフレン。そして


「……わかったわ。実戦で習得しましょう」

「え?」

「重力術式を一度発動させたけど、今となっては方法も分からない。なら、実戦で無理やり習得するしかないわ。あいにく、時間はあまり残されていなさそうだし」

「そ、そんなの無茶なのよ」

「でもそれしか方法がないでしょ? スノトラの重力術式はあのメディーサの魔獣にも通用した。アタシの術の最高火力でも効果がないなら、重力術式だけが頼り。それに実戦は練習よりも数十倍の経験値を取得できる。やるしかないわ。スノトラはとにかく重力術式に専念。もう理論は完成してるんでしょ?」

「そう……なのだけれど……」

「大丈夫よ。スノトラならできるわ、信じてる」


 師として尊敬しているフレンから、背中を押される励ましを送られ、スノトラの両手で杖を握る力が強まる。

 スノトラからしてみれば、ただの慰めーー無理難題を叩きつけられ、困惑している自分を励ますだけの空元気にしか感じられなかった。

 しかし、フレンは本気で心の底から信じていた。

 スノトラの潜在能力、いやーー人間の可能性を。


 もうフレンは人間を「雑種」や「劣等種」とは呼ばない。

 ただの優劣、内包樹素量の多寡や身体能力の強さ、術式の精度だけで判断しない。

 人間には、人間の数だけ可能性が眠っている。

 人間は一つのものさしでは測れない。

 多種多様な、面白さ、深み、能力が奥底にある。

 スノトラ、アマルネ、シグルドは勿論のこと。

 ミミズク、今は亡きボドカ、巫女ヴォルヴァ、見習い修道士アザミ。

 そしてーーそのことを気づかせるきっかけとなった立花陽太。

 

(……ふっ。こんな……感傷に浸るなんて……らしくないわね。アタシにとって……ニンゲンって、そういう存在だったかな? 信じてるなんて言葉、でまかせだと思ってた)


 フレンの口元がニヤける。

 可愛らしい八重歯が顔をのぞかせる。

 満月よりもきれいな金髪のサイドテールに、ルビーのような吊り目。

 フレンはーー自分に流れる「人間」としての半身を。

 いつの間にか肯定できていた。

 否、彼女は既に人間としての自我同一性を確立していた。


「さあ! やるわよ! 開幕は派手にねッ」


〔『式』系統は魔素ーーシルフ  テヌート!!〕


 風属性の術を応用し、一気に空中に浮遊するフレン。

 その優雅な後ろ姿を、廃墟の影から手を伸ばして見つめるだけのスノトラ。

 そしてフレンはそのまま廃墟の真上に到着し。

 腐敗の帝王「ブードゥー」と相まみえる。

 ブ―ドゥーの腐って飛び出た眼球と、朱色のフレンの目が合う。


「ブ? ブブッブ? ドゥ?」

「悪いわね」


〔『略式』〕


 短文詠唱後、スノトラの体から分離するように一体の大鷲が射出され突撃。

 ブードゥーは腐った体を燃やし、異臭を発しながら。


「ブブブ!! ド?! ブブ? ゥ?!」


 何やら奇声を発し、怒りだした。

 体をかきむしり、拳を壁に叩きつける。

 その都度、腐った体が衝撃で溶け落ち、骨や臓器が丸見えになる。

 が、フレンは冷静な態度で


「あら? ちゃんと通じる言葉で喋ってくれる? 聞き取れなくって。低級魔獣さん」


 おもっくそに煽った。

 






また投稿の期間が空いてすみませんでした。空き時間を探してちょくちょく進めます。

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