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リンカーネーション  作者: 鹿十
第四章 ブレイザブリク応戦編
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ブレイザブリク⑫

【転移の時間系列は必ずしも一致しない】


【此岸から転移した3名の人物をx、y、zとし彼らがx→y→zの順で転移したとする】


【すると異世界に転移した順列もx→y→zになると思うだろう】


【しかし実際は異なり、これらは定まった順列にはならない】


【xがzよりも遅い年代の異世界に転移する場合もあるし、zがxよりも早い年代の異世界に転移する場合もあるのだ】


【つまり此岸と異世界の時間軸は連動、干渉しておらず互いに独立している】


【零式。その本名は不明】


【彼は1944年にとある出来事で此岸で死亡――その後、偶然にも境界門をこじ開けてしまい、偶発的に異世界に転移した漂流者である】


【目を開けると、世界樹の別世界に辿り着いていた。灰にまみれた軍服のまま。野原に放り出されていた】


【零式はこここそが、極楽浄土であると確信した。祖国のために文字通り身を粉にして働き、名誉ある特攻を飾った。自分こそがたどり着ける聖域】


【しかし置いていった家族のみが心に残された気がかりであった】


【帰還を希求していた。自分だけが極楽浄土に導かれたとしても嬉しくはなかった。残された家族は?

侘びしく辛く、ひもじい生活を送り、泣きながら自分を送り出してくれた母はどこにいる? 妹はどうした? 街でも有名な別嬪だった。にも関わらず、綺麗な衣装の一つも着せてあげられなかったことを悲しく思う。そして何より、日本は? どうなったんだ? 祖国は勝利したに違いない。今頃は世界を大日本帝國が支配しているはずだ。きっとそうだ、そうに決まっている】


【彼は帰りたかった。辛く苦しくても、現実世界へ。そんな時、彼は耳にした。ある彼岸花の噂を――。

異世界から此岸へ、そして彼岸へ。渡るためには、彼岸の花が必要らしいことも知った】


【そして交渉を持ちかけられた。己の魂と力を対価に、彼岸花を譲り渡すと】


【そう……レーク碑石の、彼岸花を】



「起き上がれ。どうした? もう終わりか? 日本男児ならば、竹槍を持ってでも戦え。相手が戦車であろうとも、空母であろうとも、関係のない話だ。日本男児なら立ち向かえ」

「ッ……なんだ……お前はッ」

「零式だ。それ以上でも以下でもない。肩書や出身など些末な問題だ。信念に比べたらな。貴様は何を願い、どうしてここにいる?」


 陽太は口元から垂れた血を拳で拭き取り、地面に尻もちをつけながら答える。

 そんな陽太を冷酷な視線で見下しいる零式。


(十中八九、この軍人も系譜だ! ッだけど、力の法則ルールが分からない……。須田正義はゲーム、樂具同はおそらく交通規則……「根源の異なる力」は何かしら僕の世界……此岸に存在した概念や事象に関連した能力なはず……だけど、この零式とかいう男の能力には皆目検討もつかない……何だ? 超速度で動き、空中で浮遊するし、謎の超パワーを持ってる……なんだよそれ……スーパーマンかよ……)


「黙るな。何かを言え。一人で考え込むな。お前は自分と会話しているのだぞッ」

「……」


 陽太は俄然黙ったままだ。

 そんな陽太に腹が立ったのか、零式は陽太の首元を引っ張り無理やり起き上がらせ。

 そのまま右腕を振り切り、陽太を廃墟の壁に叩きつけた。


「がッ……」


 陽太は壁に背を向け、ズルズルと体勢を崩し、地面に寝転ぶ。


「……気概も信念も感じられん。男気もない。陽太、オマエは一体、いつの時代の人間だ? ここまで軟弱な男は信じられん……貴様の生まれた元号はいつだ?」

「……平成だ」

「ヘーセイ? なんだそれは。舐めた回答をするなッ」


(クソ……こいつ、マジでうぜーし暑苦しい……けど……敵意は感じない。もしかすると熱血なだけ? 敵である俺に対し、本気で怒ってるんだ……バカ正直っつーか裏表がないっつーか……敵のようには思えないな……ならば……)


 やることは一つ。説得だ。

 樂具同に加え、零式。

 この2人の系譜を相手に戦えるとは到底思えない。

 ならば、この零式という男を説得し懐柔することができれば。

 仲間に引き入れることは無理でも、中立の立場に置ければ良い。

 そのためには――零式に信念をぶつけ、認めさせなければならない。


 陽太は覚悟を決めて立ち上がり、胸を張って零式に近づく。


「ん……顔色が変わったな」

「零式。僕の信念が聞きたいって言ったな。教えてやる。僕の信念は彼岸花を探し出すことだ」

「彼岸花……ふッハハハッガハハハッ!!」


 零式は豪快に笑う。

 陽太は面を食らい動揺した。


「さよう。そうか。ならば、陽太と自分は同じ目的を持つ宿敵ということになろうッ!」

「宿敵ってそういうわけじゃなくて……ってオマエも、彼岸花を探してんのかよ」

「そうだッ。ではここで、どちらがレーク碑石を手にするに値する器なのか、男らしく拳で決めなくてはならなくなったなッツ」

「だから、そういうわけじゃなくt――ッ」


 ドンと。

 陽太の腹部に弾丸のような衝撃が加わる。

 腹部への強烈な拳の一撃。

 重く、それでいて大砲のような轟音と煙。

 まるで零式の拳自体が一種の大砲のような。


 そのまま後方へと吹き飛ばされる陽太。

 ゲロを吐き、視界を歪めながらも何とか立ち上がる。


「立ち上がれ。陽太。オマエもレーク碑石が欲しいのならば、自分たちはいずれ碑石を巡り合って戦う宿敵となろうッ。ここでどちらが器たるか、決着を付けるのだッ」

「黙……れ、レークヒブンやら何やら知らねーが……彼岸花を手にするのは……僕だ」

「ならば拳で語ってみせろッ」

「ッ……」


 陽太は立ち上がる。

 

(やたらと前時代的な価値観に。その軍服……間違いない。零式こいつは20世紀からの転生者だ。僕より数十年も前の時代から転移してきた者!! ならば……事情を説明すれば……)


「おい、零式。僕はオマエより数十年先の時代の日本から転移してきた者だ」

「……何?」


 ここで零式の意識が初めて陽太の言動に向く。

 極太の眉毛が反応してピクリと動いた。


「だから僕とお前は同じ日本国民だ。それにオマエに害を与えるつもりはない。誰に利用されているかは知らないが、オマエは操られているに過ぎない」

「そんなことはない。戯言を言うな。リーヴ様は、自分に真実を伝えてくださった。ここで懸命な働きを見せれば、祖国に返してやると。どうやら、大日本帝國は憎き米兵に勝利し、今現在、世界の覇者として頂点に君臨し、世界を統治しているらしいではないか。ふむ、それもそのはずだ。陽太、オマエも自分と同じく、彼岸の花を利用し、元の世界に帰りたがっているらしいが、自分も気持ちは同じ。祖国に残してきた妹や母に会いに行かなくてはならないのだッ」

「……ん? ……おい、零式……あの……言いにくいんだけどさ……」

「どうした言ってみろ、軟弱者」


 仁王立ちをして、日本の勝利を確信している零式に向かって陽太ははっきりと断言する。


「日本はアメリカに太平洋戦争で負けたよ。その後はGHQっつーアメリカの組織によって改革され、天皇陛下は神じゃなくて、日本国民の象徴になったんだぜ……」

「……ッ!! 貴様はッ日本を冒涜するかッ!! この売国奴めッ!!」


 零式の顔は赤く染まり、血管ははち切れんばかりに肥大化する。

 そして零式はピストルのように右手の人差し指と中指を陽太に向け


天照大御神カミカゼッ!!〕


 瞬間――零式の手の先端から射出されたのは光の線。

 陽太の胸に直撃したレーザーは表面を焦がしながら。

 光と共に、陽太を吹き飛ばした。




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