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リンカーネーション  作者: 鹿十
第四章 ブレイザブリク応戦編
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ブレイザブリク⑥

 その場にいた陽太、スノトラ、フレン三名の心音が増幅する。

 圧倒的な力量。

 類まれなる内包樹素。

 そしてその特異体質。

 何もかもが脅威。

 全身全霊が、視界に捉えた魔獣を、恐怖している。


(今の術は……殃禍ヴァーユ‼ ニンゲンには扱えない風属性の最高威力の術! しかもこの内包樹素量‼ 直感でアタシの3倍以上はあるわね……間違いない、最高位に君臨する魔種イフリート……いや、それ以上。おそらく邪神候補の原生魔獣か……)


 フレンは思考し、相手の力量から答えを導き出す。


(おかしいのだわ。フレン先生の術より精度、威力ともに高い。こんな化け物、見たこと無いのよ。それにあの異質な目……きっと複雑な術式が予め内蔵されてある魔眼ね。あちらの剣士が動かなくなったところから推察するに、効果は『石化』ってところかしら)


 スノトラも動揺を抑え、思考をする。


(あいつ……剣士を殺しやがった。きっと幽霊都市の紛争が長引いているのも、この魔獣どもが原因だろうな。立ち姿だけでも分かる。恐ろしく強い)


 陽太は額から嫌な脂汗を垂らしながら、思考をする。


 すると廃墟の上から飛び降り、地面に着地し、執事がするような優雅なお辞儀をした後、魔獣はその見た目に相応しくない流暢な言葉使いで話し始めた。


「これはこれは、大変お見苦しいものをお見せしてしまい、誠に申し訳ありません。私とて、このようなやり方で剣士を殺したくはなかったのですが、上からの命令で仕方なく……」

「敵を目の前にして、随分余裕な様子ね」


 フレンは皮肉っぽく言った。


「剣士ならば殺しますが、相手が優秀な魔術師であるならば、こちらも戦う前に礼儀を示し、身分を明かすのが常識かと思いましてね……金髪の少女は魔族ですか? それにしては少し……人間・・臭いですが……そしてそちらの紫髪の少女は、人間の魔術師ですかねえ。それにしても、人間の身であるにも関わらず、内包樹素量が私より若干少なめなほどとは……素晴らしい才覚でございますね。お二人共、相手するには申し分ない実力者だ」


 長々と嬉しそうに語りだす魔獣。


「悠々自適に長々と自己紹介、どうもありがとッ! 〔『略式』〕」


 フレンの短文詠唱で、ゴルゴンの真下の地面が融解し泥のように柔くなる。

 その隙を見逃さず、スノトラの杖の先端から奏で、そして出されるは。

 最善なる天則。

 守護霊獣「大猫」の業火。


 空気が破裂するような轟音と共に、ゴルゴンは炎に包まれるも。

 煙の向こう側から表れた姿は当然のように無傷。


(これは驚いた。紫髪の人間の方が無詠唱で術を使ってくるとは……威力も申し分ない。素晴らしい才覚だ)


「おかしいですね」ゴルゴンは顎に手を置き、深く考える。

「アンタの耐久力の方がおかしいっての」フレンが冷や汗をかきながら呟いた。

「これはおかしい。何故、魔族の貴方が詠唱を用いて術を使い、人間の方が無詠唱で術を編纂するなんて……どちらも妙です。普通、逆ではないのですか? どうして魔族であるあなたが詠唱を行い、魔族ではない人間が式を組まずして術を行使できるのですか?」

「そんなどうでもいいことより、自分の心配をしなさいよ」


〔『式』系統は魔素――煉獄ヒノカグヅチ‼〕


 フレンが両手を内側に向けるような仕草をした後。

 青色の炎が、ゆっくりと渦巻き、ゴルゴンを包み込み破裂する。


 煙が消えだしてから表れたゴルゴンはまたもや無傷。

 どうやら爆発の瞬間に、何枚もの保護術式を身に纏っていたようだ。

 ゴルゴンは反撃する素振りもみせず、一人でブツブツと呟き、思考している。


(今の術、一応アタシの最高火力の技なんだけど。避けるまでもないってワケ? この原生魔獣、ムカつく……)


 フレンのプライドが刺激される。

 するとゴルゴンは何かを閃いたようだ。


「ああ、成る程成る程。簡単な話でしたね。わざわざ思考するまでもない〔魔眼〕」


 ゴルゴンの額にある目が蒼く光る。

 瞬間、フレンの四肢は末端から石化していく。


「なによこれッ。〔『式』系統は幻素――フォルテシモ・リダクション〕」


 フレンは冷静に自分の体に左手を当て状態異常回復の術リダクションを使用。

 石化という未知の効果に効き目があるかどうかは定かではなかったが、僅かに石化の速度が遅くなっていることから、時間稼ぎ程度だが効力はあるようだ。


 しかし両足が石化した隙を見逃さず、ゴルゴンは。

 ただ樹素で強化しただけの拳をフレンの腹部にぶつける。

 フレンは血反吐を吐きながら、後方に吹っ飛び、廃墟の瓦礫に突撃した。


「……ああ、金髪の魔族。貴方にもう興味はありません。今ので確信しました、上級の魔種イフリートに匹敵する力を持ちながら、貴方がわざわざ人間の作り出した術を用いて戦う理由…………貴方、もしかして」


 ゴルゴンがフレンの返り血を浴びた拳を握りしめて。

 不気味な笑いを浮かべながら言う。


「魔族であるにも関わらず、術式回路を持っていないのですね。人間と魔族の混血といった具合でしょうか。どちらに属することもできない、可哀想な孤独な者……ああ、なんと、みすぼらしいことか。孤高と孤独を履き違えないでいただきたい」


 そしてゴルゴンは、スノトラに神々しく光る魔眼を定める。

 そこへ割って入ったのは。

 世界の異物――立花陽太。


「ッ……」

 

 一瞬身体が固まるも、彼の肉体と魂が、旋律を乱し、術式を拒否する。


「……貴方は、一体何者ですかね?」

「孤高だとか、孤独だとかそんなくだらねえこと考えてないでかかってこいよ、魔獣」


 陽太は前髪から一重の目を覗かせ、吐き捨てた。



 





 







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