ブレイザブリク③
手詰まり。
何度殺しても蘇る死者。
傀儡となった死者全てが「上級魔獣」レベルの力を持たされている。
その数……およそ300人。
「力」「能」「権」「大」の中位~下位剣士は全て殺害、致命傷を負わされている。
当初1200数名存在した軍兵のおよそ6割が壊滅状態。
残存戦力として数えられるのは「主」剣士21名と、「座」剣士9名、そして「智」剣士5名。
少数精鋭。
上位階級である彼らの実力は高く、ゾンビの集団攻撃でもびくともしない。
しかし状況はジリ貧であった。
補給すらも断絶されており、孤立無援な状況にあった。
もはや剣士が壊滅するのも時間の問題。
大元である――ブードゥーを叩かなければ、ゾンビの群れはとどまることを知らない。
しかし、ブードゥーがいる廃墟の屋上にたどり着くには。
その前に原生魔獣であるゴルゴンを相手にしなければならない。
ゴルゴンの即死術「魔眼」。
視線が合った者を全て石化する秘技。
それに加え、ゴルゴンは数多の土属性の魔術を用いる。
8代目邪神候補のゴルゴンとブードゥーの実力は凄まじい。
いくら剣士といえど、束になってかかったとしても敵わないことは明白だった。
そんな時――。
空中から飛来するは。
青色の瞳と鋼色の髪色。
満を持しての。
人類最強の英雄。「龍殺し」のシグルドの投入である。
シグルドが地に足をつける前に、彼の到来をいち早く察したのはゴルゴンであった。
ゴルゴンはとてつもない速度で移動し、ブードゥーの元へ戻る。
そして
「ブードゥー。お疲れ様です。私達の役目はここで一旦終了です、身を潜めましょう」
「ブ? ブブゥ?!」
「『龍殺し』がやってきました。私達では敵いません」
「ブ! ブブ!! ブブ~」
「そんなことないって? アルガードの敵を討ちたいと? やれやれ、あなたも強情ですね。気持ちはわかりますが、ここは耐え凌ぎましょう。今は妖術を用いて気配を消し、地下に潜伏……そしてフィマフェング、彼に連絡をする必要があります」
「ブ~」
ブードゥーは不貞腐れながらも、ゴルゴンの指示に従う。
頭から溢れた脳みそを頭蓋の中に押し戻しつつ、ブードゥーは妖術を用いて気配を消し、潜伏する。
「!!」シグルドは地上に着地した。
そしていち早く、大きな気配が2つ消えたことに気づく。
(……圧倒的な内包樹素の量を誇る2つの反応が消えた……妖術か……気配を消すのがうまいな……これでは元を辿れない……)
シグルドは戦地に投入される前にブレイザブリクの異変については聞かされていた。
どうやら裏で死者を強化し操っている魔獣と、「智」剣士を石化させた魔獣がいること。
情報はシグルドに事前に共有されていた。
シグルドの任務は硬直した戦況を覆すために、その二体の魔獣を狩ることだった。
(対応が後手にまわりすぎだ……やはり敵側は入念な計画を立てている。我をここにおびき寄せたのも罠があってのことだろうが……)
シグルドは鞘に入れた剣を抜く。
するとシグルドの目の前に現れたのは。
一人の老人。
目が悪くて見えないのか、杖をついてよろよろと歩いている。
80代は超えているだろうか。
思わず肩を貸したくなってしまうが、シグルドは逆に怪しむ。
「こんな戦地に老人が一人でうろつくことがあるか? 正体を表わせ、老爺。貴様は何者だ」
「おやおや、バレてしまいましたねえ……」
(ただの人間……? 否、内包樹素が全く感じられない……これは……こいつは……)
違和感。
この違和感をシグルドは以前に味わったことがある。
この世のものではないこの虚ろな感覚。
別の時空の……根源の異なる力。
異世界の樹素ではない。
この力は――此岸と彼岸を永久回帰し続ける「魂」の共鳴反応。
(陽太や、須田正義と同じッ‼ この世の者ではない‼)
〔隔離〕
老爺の詠唱に似た何らかの言葉を皮切りに、外界樹素はピタリと停止し、一切が消滅を遂げ。
シグルドは再び、世界の全てから――「隔離」される。
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