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リンカーネーション  作者: 鹿十
第四章 ブレイザブリク応戦編
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ブレイザブリク①

「けっこう、順調っすね、この調子だと今月中には片付くでしょう」

「油断は禁物だぞミミズク。想定していたより相手側の戦力が心もとない。きっと裏で戦況を指揮しているものがいる」

「相変わらずボドカさんはマイナス思考っすね」


 廃墟と化したかつての王都、幽霊都市ブレイザブリク。

 戦禍の中心にあるその街では、王家の全兵力と犯罪集団がしのぎを削り合っていた。

 軍兵が到着し、本格的に鎮圧を初めてから1週間あまりが経過しようとしていた。

 王都が想定していたよりも犯罪組織の勢力の層が薄い。

 見慣れない式具などを用いてはいるが、あまり質の良いものとはいえないだろうし、犯罪組織はただの素人の集まりだ。

 王都で研鑽を積んでいる軍兵には敵わず、鎮圧は想定より早いペースで進んでいる。


「でも戦力の投入が過剰すぎっつーか、『智』剣士までブレイザブリクに逐次投入しているわけじゃないですか。やりすぎだと思いません? こんなんじゃ王都が手薄になっちまいますよ」

「上が決めた方針なのだから、黙って従っていれば良い。おら、ミミズクそっちに一人逃げたぞ」

「やれやれ……頭が固いんだから」


〔『略式』残桜〕


 「主」剣士であるミミズクの居合流――残桜。

 斬撃を樹素で空間座標上に一定時間固定し持続させる術である。

 短文詠唱で発動した残桜の射程内に侵入した男は身体を切り裂かれながらその場に倒れる。


「やっぱり、くだらないシゴトっすよほんと」


 ミミズクは今回の幽霊都市ブレイザブリクの鎮圧に不満を見せているようだ。

 ただの辺境都市の犯罪組織相手に軍兵の約8割の投入は過剰すぎると考えている。

 これではブレイザブリク以外の都市で何か事件でも起きたりすればまともに対処できないだろう。


「上の連中は何を考えてんだが……」

「ジギリタス家が絡んでるらしいな」

「やっぱりあの一家か。どうも胡散臭くて好きになれないんスよね」

「今の発言は不敬だぞ」

「報告しませんよね?」

「お前の働き具合によるな」


 犯罪組織の末端構成員を難なく斬り殺しつつ、会話し続けるミミズクとボドカ。

 

 そんな時だった――。


 ひときわ大きい廃墟の屋上に、二体のモンスターが立っている。

 彼らは戦況を高所から見下ろし、何やら会話をしていた。


「……いいですかブードゥー。フィマフェングの言った通り、私達の目的は戦況を乱すことです。なるべくブレイザブリクの紛争を長引かせ、軍兵の力や王都の目をこちらに向ける。そのために戦うのですよ」

「ブブブ? ブブ!! ブー!!」


 ゾンビの原生魔獣であるブードゥーは脳みそを頭から垂れ流しながら、不満を顕にしている。


「あなたの言いたいことは分かります。ジギリタス家もとい……人間は信用ならない。しかし彼らの協力無くして七代目邪神の呪術が解呪できないのは事実……お互い利用しあっているだけです。我らは孤高な存在。アルガードは将来の魔族のための犠牲となったのです」

「っブ!! ブー!!」

「そうですか、いいですね。人間ならば何人でも殺して良い、行きましょうブードゥー」


「ブ! ブ!」


 ブードゥーが右手で印を結ぶ。

 すると大気中の外界樹素が急速に集まっていく。


【原生魔獣、ゾンビの魔獣の始祖、ブードゥー】


【彼が用いる原生魔術『黄泉返りタナトス』は任意の範囲内にいるブードゥーよりも内包樹素の量が少ない死者を蘇らせ、術者であるブードゥーと接続する奥義】


【ブードゥーと接続した死者は、ブードゥーからの樹素の供給、術式の効果の向上、身体能力の飛躍的な向上、などを果たし、治癒術式が恒常的に作用し続ける傀儡と化す】


【操れる人間の数に限界はなく、ブードゥーの内包樹素が尽きるまで、この術の効果は止まらない】


【いわば、無敵の死者の軍隊が量産できる術である】


 大地が揺れ始める。

 異変にいち早く気づいたのはボドカだった。

 殺したはずの死者が、傷を癒やし、起き上がる。

 目は白目を向いていて生気は感じられない。

 しかし……生前よりも五倍の内包樹素量を誇り強化されている。


「これはまさか……」

「はあ、ボドカさんの言ったことが当たっちまったよ」


(何かあるとは思っていたが、まさか死者蘇生の術とは……裏で遠隔操作をしている者がいる? いやありえないな、たった一人でこれだけの人間を操ることができるはずがない。おそらく犯罪組織に横流しされたと言われている式具の効果か……)ボドカは推察する。


 蘇生され傀儡と化した犯罪組織の末端員がミミズクに向かって木刀を振り下ろす。

 ミミズクは片手でそれを受け止めようとしたが……

 鈍い打撃音が鳴る。


「くそッ重いッ!」


 受け止めたミミズクの右腕は骨折してしまった。


「気をつけろミミズク! 生前よりも大幅に強化されているッ‼」

〔『略式』残桜〕‼


 ミミズクは焦りつつも居合流を展開。

 斬撃の雨を浴びせるが……ゾンビと化した死者の身体は斬撃の傷がつくものの数秒後には完治してしまう。


「ありえねえ。大幅なフィジカルの向上だけじゃなく治癒術式まで付与されてやがる……」


 あたりを見回すミミズク。

 気づけば周辺一帯を数十人のゾンビに囲まれていた。


「強化されたゾンビが50と数体……ボドカさん、これやばいっすよ」

「ああ……」


 原生魔獣の術中にはめられ、優勢だった軍兵に亀裂が走った。




 



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