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リンカーネーション  作者: 鹿十
第三章 王都編
55/197

2つの魂

世界観の設定を分かりやすくするため挿絵を入れてみました

挿絵(By みてみん)


「魂……?」

「ああ、それ以外考えられないね。俺たちのような異世界転移者が扱う特殊な力の根源は『魂』だ」


 魂。

 それは、僕が異世界転移を行うために差し出した代償に他ならない。

 その価値がどれほどのものなのかなんて細かいことも考えずに天秤にかけてしまったモノ。

 それが魂。


「境界門を通る人間は、『魂を付与』されるか、又は『魂を没収』されるかの二択を迫られる。彼岸から此岸へ渡る時には肉体という『器』に魂が付与され、此岸から彼岸へ渡る際には肉体から魂を没収させられるんだ。境界門は、『此岸』と『彼岸』と『異世界』を繋ぐ唯一無二の境界線だからな」

「そんな重要な話を……なぜ、お前が知っている?」

「……巫女様のおかげさ。巫女だけが扱える伝説の術式、『巫術』。それは魂を観測するための術式なんだ。俺はこっちの世界に来てから、巫女様の元で働くことで、世界の構成、真理について垣間見た」

「……そうか」

「で、だ。話を続きに戻そうか。さっきまで、境界門を彼岸から此岸へ通る人間には『魂の付与』、此岸から彼岸に渡る人間には『魂の没収』が課せられるって言ったよな? つまりだな、現実世界に生まれ落ちる時には肉体に魂が刻まれ、死ぬ時には魂が肉体から分かれ、魂のみが彼岸へとたどり着くってわけだ。そこまでは理解できたか? お前さん」

「ああ」

「なら、『異世界に渡る時』はどうなると思う?」


 頭の中で大月が語った情報を纏める。

 此岸は現実世界。彼岸は死者の世界。そして僕らが今いるのは異世界。

 この3つの世界が「境界門」というもので繋がっている。

 そして僕らはこの3つ世界を行き来する際、境界門を通ることになる。

 境界門を通ったものは「魂が付与」または「魂が没収」させられる。

 生まれる時……つまり彼岸から此岸に行く時には「魂の付与」

 死ぬ時……つまり此岸から彼岸へ渡る際には「魂の没収」


 では、此岸(現実世界)から異世界に境界門を通って渡る際にはどうなる?

 魂は没収されるのか? 又は魂が付与されるのか?

 僕が迷い続けていると


「……正解は『魂が付与』されるんだ」


 と、大月は回答を話した。


「でも、おかしいだろ? そうなると、異世界転移者は『魂を2つ』所有していることになる」


 そうなのである。

 僕が語った通り、異世界転移者は「彼岸」から「此岸」へ行く際に「魂を付与」

 そしてさらに、「此岸」から「異世界」へ行く際にももう一つ「魂を付与」されていることになり、合計して僕たち異世界転移者は2つの魂を肉体に刻まれていることになるのだ。


「その通り。だからこそ、未知の力が発生するのさ」

「……どうゆうことだ?」

「これはバグみたいなもんだ。普通の一般人は生きて死ぬ。すなわち魂を付与され、没収される。だがしかし、彼岸から此岸へ渡り『魂を1つもつ人間」が、異世界に転移すると、バグでもう一つ魂が付与されてしまうのさ。だから異世界転移者は『2つの魂』を器となる肉体に重複して保持していることになる。人間は生きるために魂が1つあれば十分だ。だがしかし、もし『2つ以上の魂を保有』したら? ……余剰となった1つの魂は、『生きるため』に用いる必要がなくなり、『エネルギー』として活用できるのさ」


 須田正義のあの絶対的な異能。

 その力はあのシグルドさえもその支配下においてしまうほどに強力であった。

 あの異能力の正体が「魂」の力によるものだったら……?

 一応話に筋は通っている。

 

「魂の力の本質は『永久性』だ。彼岸から此岸へ、此岸から彼岸へ永遠に渡り続け、俺たち生命体は輪廻転生をしているのさ。実際には魂が宿る肉体がその時々により異なるから、自我や肉体も別物になるため正確には同一人物で転生するとはいえないが……俺たちを作っている核である魂は、輪廻転生をしているといっていい。水のように2つの世界を巡り続けている。自己補完で成立するこの世で唯一無二の永久機関、それが魂。故に魂の力は莫大なのさ。無限といっていい。終わりなき力なんだ」

「……」

「そして俺たちみてーな異世界転移者は、その輪廻から外れちまった存在。だから異端者と呼ばれている。だから俺はお前さんに親近感を感じているのさ、これで俺のこと、ちっとは信用してくれるかい?」

「ああ、説明してくれてありがとう、大月さん。俺はアンタのことを信用する」

「ああ、さんきゅ。だがしかし、『さん』付けで呼ぶのはやめてくれ。背中がくすぐったくなる、できれば呼び捨てでいいぜ? 月でいいよ」

「ああ、月。よろしく頼む」

「こちらこそ、お前さん」


 僕は、月が差し伸べてくれた手を握り返し、二人で見つめ合った。

 最初は怪しいことこの上無かった月の口角のあがったニヒルな笑みも慣れてしまえばなんてこともない。

 それに大切な情報をわざわざ僕に開示してくれたんだ。

 この月という男は僕とは異なり異世界に望んで転移をした人間ではなく、転移させられてしまった被害者なのだから、協力してやらないといけないし、何より正直に情報を無償で開示してくれた点で僕は月という男に信頼感を寄せ始めていた。


「で、だ。こんな感動的な握手をしたのだが、俺への疑いが晴れたのはいいが……肝心のお前さんへの疑いが晴れてないんだ」

「どうしてだ?」

「さっきの話聞いてたろ? お前さんも異世界に転移する際に『魂を付与』され魂を2つ保持している異能力者だ。お前さんも境界門を通り、特異な能力を授かっているはず……俺の能力は先程も言った通り『柵を出現させる』だけのチンケな能力さ。俺の手札を見て、お前さんの手札は隠したままってのは少し不平等だよな?」

「ああ、そうだな……だけど、すまんな月。僕は何の能力も持っていないんだ」

「あ? そんなわけあるかよ。ジョークは大概にしてくれ」

「いや、そんなことない。僕はきっと魂を2つ持っていないんだ」

「……どうゆうことだ?」


 大月の話を聞き、やっと理解できたことだった。

 僕も異世界転移者。

 だからこそ「境界門」を二度くぐり抜け、魂を2つ保持している存在。

 にもかかわらず須田正義や月が持つ特殊な異能を、何故自分は持っていないのか? 

 大月の説明を聞いて、やっと納得ができたんだ。


「僕は、異世界に転移する時にさ。自分の『魂』を代償に差し出してしまったんだよ。だから僕には今……魂が1つしかないんだ」


 

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