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リンカーネーション  作者: 鹿十
第三章 王都編
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殺ッセオ!!②

魔種イフリートであるフレンを見世物に使うという判断は、あまり良くないな。いくら其奴が魔族といえど、重罪人ならば法に則り、適切な手段で公開処刑に処すべきだ」

「それは正論ですが、上級魔種イフリート、しかも言葉を話せるほどの知能を有した魔族などなかなかお目にかかれない存在です。ただ殺すのはもったいない。闘技場で見世物として戦わせるのは面白い案ではないでしょうか? そこで、腕の立つ剣士などを用いれば、軍兵の強さを民衆に植え付けることができるでしょうし。民衆は軍への税金の徴収を喜んでするようになるでしょう」

「……一理あるな。まあ良い。その案、受け入れよう」

「ありがたき、お言葉……しかし、一つ、魔族フレンを闘技場へ出場させるにあたってお願い事が……」


 一般民衆とは異なり、豪華な身なりをしたふくよかな男は鼻で笑うと


「分かった。剣士の要求だろう? 何人必要なんだ?」

「お話が早くて助かります。そうですね……魔族フレンは腐っても上級の魔種イフリート、欲を言うならば、『大』の階級を持つ剣士を数人……」


 顔を伺いながら、揉み手をして伺う男。

 貴族はそれを笑い飛ばし


「ハッ、ならば『大』剣士を20名に加え、『権』から『能』までの剣士を10名、合計30名ほどの剣士を手配してやろう」

「ハハッ、ありがたきお言葉! さすが貴族様、懐が広くいらっしゃる……」

「その代わり、剣士の強さを民衆に植え付けるため、魔族フレンを長くいたぶってやれ。死ぬ寸前のギリギリまで……な」

「承知いたしました……フレンが出場する闘技場には、ぜひ、貴族様も見に来てください」

「30名の剣士、しかも全員階級がついている実力者たちだ。上級だの魔族だのなんだのはよくわからんが……女一人、殺せないわけなどない、では闘技場の一件、楽しみにしているぞ」


 こうして、闘技場にフレンが出場することが決定したのだ。



「囲めッ、囲めえッ‼」


 余裕など微塵も残っておらず、闘技場の特別席で高みからフレンの戦いを見物していた貴族は大声で必死になって叫ぶ。

 フレンを中心にして、円形状に並んだのは貴族により手配された約30名の剣士。

 「大」剣士16名。

 「権」剣士11名。

 「力」剣士2名。

 総勢29名の歴戦の剣士たちだ。

 全員、剣術を極めし猛者たち。

 彼らは大人げなくフレンを囲い、剣を携え、鋭い視線をフレンに向ける。

 フレンは中央から彼らを観察し


(あの男とあの男……その二人だけは注意したほうがいいわね。それ以外は全員雑魚、所詮数合わせの剣士たち)


 「力」の階級を持つ剣士だけを外見とオーラで見抜き、その二人のみに注意を集中する。

 ドーンという、コングが響く音を皮切りにして剣士総勢で中央のフレンに突撃していった。


[『式』系統は魔素――ノーム・テヌート]


 土属性の魔術を地面に向かって放つ。

 すると、闘技場の地面は溶け出し、粘土のような柔い材質と化した。

 剣士たちは足を取られ、ふらつく。

 その瞬間を見逃さず、フレンは


[『式』系統は魔素――フォルテ・インパクト‼]


 溶解した地面に両手をつき、詠唱を唱える。

 液体化した地面に衝撃が走り、数名の剣士は観客席に吹き飛ばされていき、ダウンした。


「チッ、今ので全員ダウンさせるつもりだったけど」


 フレンはサイドテールの美しい金髪を右手の甲でさらりと擦り、仁王立ちをする。


「『大』剣士が4名やられた、注意しろ」

「へいへい、分かってやすよ。女の子一人に剣を抜くなんてダサいっすよほんと」


 「力」の階級を持つ剣士二人は、お互いに言葉を掛け合う。

 片方は、飄々とした背の小さな男で、もう片方は対照的に見上げるばかりの巨躯で、顔には歴戦の証と言わんばかりの古い切り傷が刻み込まれている屈強な剣士だった。

 「力」剣士であるその二人だけはその場に立ち止まり、フレンの行動を観察する。

 それ以外の剣士は、集団でフレンに襲いかかるが、フレンの魔術により次々にダウンしていく。


[『式』系統は魔素。器は『剣』――居合

[『式』系統は魔素――メゾフォルテ・フレア]


 フレンは術を発動しようとしている剣士と距離を詰め、一足先に詠唱を完了し、炎を浴びせる。

 炎により焼かれる剣士から目をそらし、残った2人の「力」剣士に視線を移すフレン。

 

(この2人……明らかに他の剣士とは違う。少しは注意したほうがいいかな)


「あらら、全員やられちまいましたよ、ボドカさん」

「ミミズク、油断するな。いつも通り、オマエは居合流を使え」

「はいはい」


 ミミズクと呼ばれた小さな男は腰に携えた剣を鞘ごと前に持ってきてその場にしゃがみ


[『式』系統は闘素。器は『剣』――居合:初桜]


 刀身を半分、鞘から抜き出し、その場でしゃがみ続けるミミズク。


(シグルドの奴が使ってた剣術……構えからして、シグルドみたいな超高速で動くタイプの技ではないみたいだけど……注意が必要ね)


 と思考していたフレンの頭上に、突然現れたのは、思い切り跳躍したボドカだった。

 フレンは身を捩らせ、その場から動く。

 ボドカは落下と共に大刀を地面に叩きつけた。

 粉塵が舞い、地響きが起こり、ガラス細工のように地表に亀裂が入る。


(あのボドカとかいう大男は、何も術を編纂していないのにも関わらず、素の力だけでこの威力……保護術式をかけても、無傷では済まされそうにないわね)


[『式』系統は魔素――フォルテシモ・フォートレス・シミレ]


 薄い光の膜がフレンを包み込む。

 それを見つめていたボドカは、地中に埋まった大刀を抜き、肩に載せ


「保護術式の最強化版の持続化。さすが魔種イフリートだな。長期戦は不利だ。内包樹素の量が桁違いだからな、ダラダラ戦っていたらジリ貧でこっちが負ける」

「じゃあどうするんですかい、ボドカさんよ」

「ミミズク、お前の居合流で切り刻め、隙を見て俺が一撃を喰らわせる」

「アイアイサー」


[『式』系統は闘素。器は『剣』――居合:残桜ざんおう


 詠唱を終えたミミズクは、ようやく刀身を出し、そのままフレンへ斬りかかる。

 鋭い連撃、だがシグルドとの戦闘と比べたらまだまだ甘い。

 フレンは寸での所で全ての攻撃を避けきった。


(シグルドと同じ術を使うから警戒しちゃったけど、この程度なら問題ないわね)


 と余裕な表情をしていたフレン。

 今度は自分のターンだと言わんばかりに、一旦引いたミミズクに近づこうとうするが……

 フレンが身を乗り出した瞬間、彼女の体表に無数の斬撃が刻まれる。


「ッツ……」


 保護術式をかけていたため、体表の皮が切断されるくらいですんだが、もし保護術式を自分に付与していなければ、肉まで断ち切られていただろう。

 フレンは自分の身に何が起こったのか分からず混乱するが、一歩引くと斬撃が収まり、冷静に観察する。


(今の攻撃は? 斬撃を浴びせられたような感覚……だけどこのミミズクとかいう男は全く動いていなかったじゃない?! ミミズクに一定範囲近づくと斬撃を浴びせられる術? いや違う……)


 思考するフレン。

 対象的にミミズクは、何もない空間に向かって刀を振り回しながら、フレンの周囲を後退りで移動する。

 数秒経つと、再びミミズクはその場に座り込み、刀を鞘にしまい


[『式』系統は闘素。器は『剣』――居合:初桜]

 

 またもやその場に静止する。

 ミミズクに気を取られていたフレンはボドカの接近に気づけなかった。

 真横から脇腹にボドカの大剣での一撃を食らってしまう。

 保護術式に加え内包樹素を脇腹に偏らせていたため、致命傷にまでは至っていないが、フレンに鈍いダメージが蓄積されていく。


 ボドカが再び大剣を空にかかげ、振り下ろそうとしたので、フレンはその場を離れようと地を蹴って後方へ移動した。

 が、しかし。

 再びフレンを襲うのは正体不明の斬撃の数々。

 皮が切れ、紫色の血が噴出し、フレンは痛みに耐えながらその場から移動した。


「おっと~~~~~魔族フレン‼ さすがに『力』剣士には手も足も出ないのか~~~~~!!!!!!!???????」


 観客の歓声はフレンが不利な状況に陥り、再び熱を戻していく。

 頬の皮が切れ、そこから流れ出る紫色の血を手で拭い、それをぺろりと舌で舐めながら。

 フレンはいつも通りの挑発的な赤色の瞳をより一層輝かせ


「しょうがないわね。どいつもこいつも物騒で面倒で。愚かなニンゲンたち、見せてあげるわ、アンタたちへの、『天則』を」


 と呟き、闘争心を顕にした。

 

 




 



 


 

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