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リンカーネーション  作者: 鹿十
第二章 ダンジョン編
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第三ラウンド

(この仮説が正しければ……勝算はあるッ)


 己の仮説を元にして勝利の可能性を感じ、身震いしながらも、平然を装う陽太。

 一方、須田はシグルドに敵意の籠った視線を向けながら、思考を改める。


(やはり、一番危険性が高いのはシグルドという男だな。彼一人で、こちらの全員が削られて終わる可能性がある。これはラウンド制で勝ち逃げてしまった方がいいな。もたもたしていると、私が殺される可能性すらある。私のAP数は残り六か……「死体運用」は、他のスキルとは違って、不発で終わった場合、AP数が消費されない。「死体運用」を連発して、無理やりボスサイドのAP数を枯渇させ、ラウンドを終了するという手法は不可能。ならば、仲間に引き入れたガルムたちのスキルを使い、プレイヤーのAP残数をゼロにし、ラウンドを早めに終わらせた方が得策だな。全員がスキルを用いれば、一ターンで十二ものAP数を消費できる。ボスサイドのAP数を削るより、プレイヤーサイドのAPを削ったほうが早く戦闘が終わるだろう)


 目前にある勝利までの道筋を頭で纏める須田に向けて、陽太は突然、語り出した。


「……疑問だったのは、アナウンスだ。『部外者』を選択した時、奇妙なアナウンスが流れていた」


 須田はそんなことは覚えていない。

 しかし陽太は続ける。


「僕はそのアナウンスがどうにも頭から離れなかった。何も効力が無いスキルなら、あんなアナウンスが流れるはずがないって思ってな……なあ、須田。スキルはその人物の特性によって効力が決定されるんだろ? 何故だかは知らないけどな、僕は樹素から嫌われてるみたいだ。僕がいると外界樹素が変な挙動をして、術式がまともに効力を発揮しないんだってよ」

「何を言っている?」


(勝負局面において一番大切なのは……価値のあるコマを残すこと。そして無価値な駒、戦術的に不要な駒を、「いかに高く見積もらせるか」ということ)


 陽太は覚悟を決め、須田を騙すために・・・・・、大声で虚言を発する。


「多分、推察するに、こうゆう効力なんだろうな。クソ、やっぱ使えないね、このスキルは。須田、お前以外には、な。『部外者』を、シグルドを除く他パーティに実行」


〔ターン変更 ボスサイド〕しかし何も生じず、ボスサイドのターンへ移行する。


「やはり何も起きない外れスキルか。残念だったな、陽太君。『アマルネの『分相応』をガルムに付与。ガルム、フレン、スノトラも固有スキルをシグルドに使用。魔術をシグルドに酷使』」


 だが、静寂が広がるのみで、須田の指揮を一切聞かず、立ち止まっているガルムたち。


「は?」


 須田は動揺する。

 が、陽太はそれを予期していたといった態度で語り始める。


「良かった、予想が当たっててよ。外れスキルだな、こりゃ。僕のスキルの効力は『味方に限り、指定した・・・・人間の行動を強制キャンセルする』って力とみた。良かったよ、敵になっても元味方だったガルムたちにはこの術が作用するみたいで」


 無害であると勘違いをしていた陽太のスキル、その予想外の効果が発揮され焦る須田。


「何だそのスキルは……クソ……見誤ったか。まあいい。『立花陽太に、フレアで魔法攻撃』」


 炎の渦が、陽太の胸に飛んでくる。

 須田によって出力された技なので威力は低い。


〔ターン変更 プレイヤーサイド〕


(どうやら、須田は僕に標的を変えたみたいだ。焦ってるな。だが、それでいい。好都合だ。「部外者」と「死体運用」が、僕の予測通りの効力なら……勝算はある)


「シグルド、聞きたいことがある」突然、シグルドに会話をする陽太。

「なんだ」小さな声で返答をするシグルド。

「一人になっても、お前なら勝てるよな」笑う陽太。その表情を見て、シグルドは

「……当たり前だ」と確かな自信で答えた。

「そうか。なら、勝てる。作戦がある、耳を貸してくれ」

「しかし、お互いに近づけないだろう?」

「行動選択『降伏』」


 陽太は即座に宣言した後、体の自由を解いてシグルドに近づいていく。


「何をした、陽太」

「大丈夫だ、降伏のコマンドは俺とシグルド両方が選択しないと実行されない。それにAPも消費しない。この空間はどうやら、行動を選択した場合のみ、体の自由が解けるようだから、降伏を利用しただけだ、とにかく、これで会話が可能になったろ? 耳を貸してくれシグルド」

「何をするつもりだ?」

「いいか、よく聞いてくれ、ぶっつけ本番の作戦だ。勝負はこの後すぐ決まる――」


 一分ほど耳打ちで作戦会議が終わった後、陽太は元の定位置に戻る。

 そしてシグルドは


「『重ねた者』使用」


 覚悟の定まった表情で、コマンドを指定し、須田を切り裂き、二撃刻む。

 その後


「『部外者』発動、対象はシグルド以外の全員だ」陽太も宣言をし


〔ターン変更 ボスサイド〕


 須田のターンが訪れる。須田は顎の青髭を指で摩りながら


(陽太君のスキル「部外者」は仲間の行動実行を強制的に停止させる能力か。そのせいで、ボスサイドに招き入れたガルム君たちの行動がキャンセルされる。通常では何の役にも経たない、使えないスキルだが……私のスキル「死体運用」に関してだけは天敵となりえる効果だな。その指定先は、自由に選べるようだが……)


 しかし須田は焦らないで状況を簡潔にまとめ、慎重に思考を続ける。


(ならば「立花陽太」をシグルドよりも先に殺してから、陽太君に「死体運用」を施してしまえばいいだけの話。陽太君が手に入れば、一人残ったシグルドの行動をスキル「部外者」を用いてキャンセル出来る。シグルドは木偶の坊と化し、こちらの勝利だ。大丈夫だ。こちらのHP数はまだ余裕がある。シグルドの攻撃をあと1,2回ほどなら耐えれるだろう。それに陽太君のDP数は一般人のそれと遜色ない値だ。二回魔法を加えれば、耐えきれず倒れるだろう)


「結局、陽太くん、君の行動はただの時間稼ぎにしかならないね。〔フォルテシモ・フレア〕を立花陽太に使用」


 火が陽太を襲う。

 陽太の頭上に浮かぶ体力ゲージの四分の三が削られる。


〔ターン変更 プレイヤーサイド〕


「『重ねた者』使用」


 シグルドの斬撃が三回、須田に刻まれる。

 体力は百五十前後にまで減少。


(次で俺は倒れるだろう……あとは野となれ山となれ、だ。賭ける・・・しかないッ)


 そして陽太は息を吐いて、覚悟を決め


「〔部外者〕発動……アマルネ、スノトラ、フレン、ガルムに使用」宣言した。


〔ターン変更 ボスサイド〕


「〔魔法攻撃、メゾフォルテ・フレアを陽太に〕」


 炎が直撃し、ついに陽太は倒れる。


〔ターン変更 ボスサイド〕


 シグルドだけが残され、プレイヤーサイドに移行した。


(これで陽太君は無力化した。次のターンで死体運用を発動。そうすれば私の体力は陽太君の数値五十がプラスされる。相手はシグルドだけ。どう考えてもHP総量でこちらが勝っている! あとは残りAPを使い切るだけだ。ハハ……楽しかったよ、陽太君。まともにゲームができたのも、異世界に転移してから初めてだった。すまないね。私にも夢がある。結局のところ、私の思いの方が強かったようだね。さようなら、立花陽太、楽しかったよ……)


 須田は、倒れゆく陽太をただ見つめ、須同情の念を抱き感傷的な気分に浸っていた。

 残されたシグルドと須田の二名はお互い睨み合い、そして戦闘は最終局面へ移行しようとしていた。


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