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リンカーネーション  作者: 鹿十
第二章 ダンジョン編
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第二ラウンド②

 須田の動向を固唾を飲みながら観察する陽太。

 緊張感漂う中、須田の固有スキルを解説するための機械音が鳴る。


〔須田正義。固有スキル「死体運用」を発動。死者蘇生か、ステータスに組み入れるかを選択してください〕


「死者蘇生、ガルムに使用」


 瞬間、ガルムはむくりと起き上がり、虚ろな目を開き、生気無く立ち上がる。

 そして気づけば、ガルムは指定された定位置にいなく、須田の真横にいた。


「おい……まさか」


 陽太はここで、須田の固有スキルの能力を察して声を出す。


〔ガルム=ノストラード。HPを全回復した上で蘇生、ボスサイドとしてカウントされます〕


「『ガルムで、スノトラを攻撃』」


 間髪入れず、須田は傀儡と化したガルムに行動を指揮する。

 ガルムは凄まじい跳躍をしながら、その爪跡をスノトラに刻んだ。

 仲間のHP残量は確認できないので、スノトラが今の一撃でどれほどのダメージを負ったのかは定かではない。


 しかし、スノトラの素の身体能力は年相応のか弱い少女とまるで変わらないだろう。

 HPのその殆どが今のガルムの一撃で削られたに違いない。


〔ターン変更、プレイヤーサイド〕


「どうするのよ、ヨータ。あの獣人が敵になっちゃったじゃない!」


 フレンは焦っている。

 陽太も表情には出さないものの、心境はフレンと同じだった。


(マジか、マジかよ。クソ、須田のスキルは「倒した相手を自分の仲間として復活させる」能力だった……だからアイツは、ずっとガルムを狙っていたのか。ガルムを仲間に引き込むためにッ。次の狙いはスノトラか。ガルムのPPは極めて高いはずだ。そんな攻撃を受け続ければ)


「スノトラも、すぐ倒されて、また須田の仲間になっちまう」

「落ち着け、陽太君。まだ負けたわけではない。指揮をしてくれ」


 アマルネが再びフォローを入れるが、陽太は取り乱したままだ。

 下唇を噛んだまま、俯いている。


「……クソ……分かった。ガルムのDPは高いだろうから、彼を狙うのは得策じゃない。これ以上、仲間が減ってしまう前に、須田のHPを削り切って殺す。集中砲火だ」


(……結局このゲームはHPの削り合いだ、それだけの単純なゲームだ)


 自分に言い聞かせることで、乱れた心を立ち直し、指揮を取り始める陽太。


「アマルネは固有スキルをシグルドに。フレンはさっきのスキルの発動により魔法攻撃の威力が上昇しただろうから、魔法を選択してくれ。シグルドもスキルを発動。スノトラは……」


(どうする? スノトラに「固有スキル」を使わせるか? 彼女のスキル能力は、未知数だ。彼女は数ターン後に須田に倒され、敵側に寝返ることになるだろう。だとしたら……先に先手を打って、スノトラのスキルを発動し、使えないスキルを構築させた上で須田にスノトラを渡すか? いや駄目だ。固有スキルを無力化したとしても、スノトラが驚異であることは変わらない。却下だ……スノトラには防御をさせるしかない……どれだけ耐えられるか、だな)


「スノトラは防御だ、俺も防御を選択する」


 各自が、陽太の指示通りに事を実行する。

 自らの固有スキルによって強化されたフレン。

 アマルネの固有スキル『分相応』によって自分のステータス値を低下させることで、シグルドのステータス値を強化。

 そうして強化されたシグルドとフレンにより、須田の体力は大きく低下。


〔ターン変更 ボスサイド〕


「『ガルムの固有スキルで、スノトラを攻撃』」


〔ガルム=ノストラードの固有スキル、「鉄と牙」を発動、強化された物理攻撃を選択〕


 アナウンスと共に、ガルムの攻撃が成される。

 防御をしていたはずのスノトラは遂に倒れた。


(クソ、やっぱ防御をしても、ガルムのスキル攻撃には耐えきれなかったか)


「『死体運用』発動。スノトラを仲間へ」


 スノトラは目に光を灯さず立ち上がり、ボスサイドに寝返る。

 そして


「スノトラの魔法攻撃、最大火力の術をフレンに使用」


 スノトラの掲げた杖の先に、大量の水が集まり、フレンに向かって高圧噴射される。

「次の標的はアタシってことね」


 フレンは攻撃を受け、数ターン後には自身も須田の傀儡となることを悟った。


「そうだ。だけど、須田のHPはもう残り少ない。このターンで削り、第二ラウンドも勝つ」


(APは、前回防御コマンドを一回選んだから、マックスで二十五だ。第二ランドで消費しているAPは二十。残り五。それだけありゃシグルドで、何とか須田を削り切って殺せるかもしれない。自分で自分のHPを確認出来ないとはいえ、HPの管理が杜撰だな、須田ッ)


 と思考していると。

 無慈悲な、機械音が真実を告げる。


〔プレイヤーサイドのAPが尽きたため、第二ラウンド終了。集計結果、ボスサイドのHP総量は、ガルム、スノトラ、須田の順に、50,50,121、計221。プレイヤーサイドのHP総量は、シグルド、アマルネ、陽太、フレンの順に、50、50、50、24、計174。 勝者、ボスサイド〕


「は? おかしいだろう。まだこっちにはAPが五、残っているはずだ」

「フフ……陽太君は見落としているなあ。対人戦闘において、自分の手札ばかり気にしていて勝てるわけがないじゃないか。おかしいとは思わないのかい? 私のAP数はたった十二だよ? にしては、行動している回数が多すぎるとは思わないのか?」

「何を言って……!?」


(まさか……死体運用で敵と化しても、ガルムやスノトラの行動は、プレイヤー側のAPを消費するのか? そう考えれば辻褄が合う。第二ラウンドで敵側になってから、スノトラは魔法攻撃を二回、ガルムがスキルを一回使用していた。二人のAP消費量は五だ。こっちに残されていたAP残量も五だった……)


 理解をして、下唇を噛みしめる陽太。


「本当に糞ゲーだな、このゲームは。敵になった仲間のHPは敵側のものとして処理されるくせに、スノトラとガルムが消費するAPはこっち負担かよ」

「そう、それが僕の固有スキルの全てだ。倒した相手のHPを全て回復させたうえで、こちらの仲間に引き入れる。寝返ったお仲間のHPは僕のものとしてカウントされるが、元お仲間が消費したAPはプレイヤー負担だ。もうこれ以上の追加情報は無いから安心したまえ」

「そうゆうことは予め話しておかねえとフェアじゃねえ」

「君達の固有スキルだって、僕は事前に知らされていない。固有スキルは奥の手、必殺技だ。詳しい情報を隠しておくのは、当たり前だし、ルール違反でも何でもないね、戦略の内さ」


〔第三ラウンド開始。第二ラウンドで、計四回「防御」を選択したため、四、加算され、プレイヤー側のAPは二十九に増加。ボス側は十二。HPの回復は第二ラウンドと同方式で実行されます。ボスサイドは「死体運用』でスノトラとガルムを仲間に引き入れましたが、死体としてカウントされるので、HPの回復は全て須田正義本人に適応されます〕


「チッ……おいおい、何が『もうこれ以上の追加情報は無い』だよ。HPの回復は仲間が増えても、俺たちみてーに分配されずに、お前に集中しているじゃねえか」


「おっと。すまないね。その情報に関しては完全に忘れていた」


〔プレイヤーサイドのターン〕


 こうして第二ラウンドは須田が制覇し。

 陽太たち圧倒的な不利な盤面で、第三ラウンドの開始が宣言された。


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