ルール説明
「陽太、何か打開策はあるのか?」
シグルドが打って変わった様子で僕に助言を求めてくる。
「ああ、この空間内では、おそらく、順番通りにしか戦闘行為が行えない」
「順番通りってどうゆうことなのよ」スノトラが割って入り疑問を呈する。
「攻守切り替わりだ……この世界にチェスや将棋ってあるか? 盤上の上のコマを決められた順番で動かし合って、相手の駒を取り合うみたいなゲームのことだ」
「ああ、ミリウスのことかしら」
類似品が異世界にもあることに安堵し、陽太は話を続ける。
「そう、大体、そのボードゲームと同じ感じだと思ってくれていい。俺たち一人一人が盤上のコマみたいなもので、各自一手ずつ順番通りに行動をしていく。相手も自分も順番通りに一手ずつしか動かせない。自分のターンが来るまでは動作行為を行えないんだ」
「じゃあ、シグルド→アマルネ→ガルム→私→ヨータ→フレンの順にアイツを攻撃していく感じかしら? それが終わると、相手のターンが来ると?」
「そうだ。呑み込みが早くて助かる」
「ルールは分かったけど、じゃあ私たちはどうやって攻撃を加えればいいのかしら?」
「……それが問題なんだよな」
(普通、ロールプレイングゲームの戦闘形式なら、行動のコマンドを入力するものだけど……コマンド欄らしきものは無い。あのスーツ男は魔術? を扱う際、MPという言葉を使っていたし、何故か初対面のガルムの名を知っていた。そこから推測するに……どこかに、あるはずだ。戦闘形式や相手の情報を説明する……コマンドが)
完全な憶測に過ぎない。根拠があるはずでもない。
(しかし……ターン制のゲームに酷似しているとしたら、あるに決まっている。戦闘方法も事前に教えてくれないクソゲーがあってたまるか)
「情報開示。ゲームの詳細を俺たちに教えてくれ……」
希望と願望を詰め合わせて言葉を発した。
陽太の思いに答え、機械的なボイスが響く。
〔ルール説明。ゲーム開始直後、須田正義と、敵対する者たちは、ボスサイドか、プレイヤーサイドにランダムで分けられます。この空間では、あらゆる自由行動が制限されます。行動はターン制で行われ、プレイヤーサイドとボスサイドが決まった順番で交互に行動できます。各自の能力はステータスやスキルという形で数値化され、裏で数理的に処理されます〕
〔戦闘方法。両サイドは、自身のターンが回ってきた際に、以下の七つの行動の内どれかを選択して実行します。①物理攻撃 ②魔法攻撃 ③防御 ④固有スキル使用 ⑤説明 ⑥降伏
⑦自由戦闘 何も選ばないで三分以上経過した場合は、何も起きず相手のターンに移ります〕
〔行動可能回数について。両サイドには、「行動可能回数」というメモリが設定されております。別名アクションポイントと呼ばれるその数値は、以後「AP」という名前で簡略されます。その数値を消費することで、先ほど紹介した七つの行動を実行します。どちらかのサイドの「AP」がゼロになると、ラウンドが終了します。行動を実行するのに必要なAP数は異なります。また、各サイドによってもその初期値が異なり、ボスは「十二」、プレイヤーは「二十四」の初期数値を保持します。「AP」はとても大切な数値ですので、よく考えた上で消費しましょう〕
〔勝利条件。勝敗が決定する例は以下の三つ存在します。
一、 ラウンド内で全員殺す(相手が単独の場合は、一人のみ)
二、ラウンドが終了した際、HPの総量が多い方がそのラウンドを制する。三ラウンドのうち二つのラウンドを先に制したサイドの勝利となります。
三、降伏を選択する(複数人いる場合は全員が選択しなければ実行不可)
四、自由戦闘モードで勝利する(場の全員が、このコマンドを選択した際、その時点でのステータスを引き継ぎ、ターン制を除外した自由戦闘が始まります)〕
〔ステータスについて。各自の能力を数量化し処理するための指標です。MP、HP、PP、DPの計五つのステータスが存在します。MPは「内包樹素量」PPは「筋力、身体性能」、DPは「体力、耐久力」により、各自の数値が決定されます。DPが高いほど、攻撃を受けた場合、削られるHP量も少なくなります。またHPのみは複数人いる場合、均等に「五十」配布されます。〕
〔顕在ステータスと潜在ステータス。先ほど紹介したステータスは二つにカテゴライズされます。顕在ステータスがHPであり、それ以外のステータスは全て潜在ステータスに区分されています。顕在ステータスだけは「敵側の数値」に限り、可視化されます。敵サイドの人物(複数人いる場合はその人数分)の頭上に円形のグラフとなって表示されます。顕在ステータスであるHPは、敵のものだけが把握でき、自分を含む味方サイドのHPは表示されません。またHP以外のステータスは全て潜在ステータスなので、実際に戦闘に影響を及ぼしますが、それが可視化され表示されることはありません。裏で数値として処理されます〕
〔行動について。7つの行動の詳細を説明します。
① 物理攻撃→魔法を使用しない攻撃。PPが高ければ高いほど、与える攻撃の威力も増大します。「AP」を一消費します。
② 魔法攻撃→異世界での「術式」に該当する攻撃です。MPの多さが威力の高さに直結します。「AP」を一消費します。
③ 防御→選択をすると、相手から受けるダメージを軽減します。またこのコマンドを選択した数だけ、次回以降のターンで有する「AP」の絶対量が一増加します。
④ 固有スキル→各自の長所や生育環境によりスキルというものが作り出されます。スキルは人により違いますが「AP」は全スキル共通で三消費して実行されます。
⑤ 説明→現在実行しているコマンドになります。戦闘形式、ゲームについての説明を行います。「AP」を一消費します。
⑥ 降伏→選択した時点で敗北が決定するコマンドです。しかし複数人いる場合は、全員がこのコマンドを選択しなければ実行されません。「AP」は消費されません。また、このコマンドが実行されなかった場合、このコマンドを選んだ人物はそのターンにおいて未行動という判定になり、再度コマンドの入力が求められます。
⑦ 自由戦闘→特殊なコマンドです。三ラウンド時にのみ両サイド共に選択可能です。ターン制を排除した形での戦闘が始まります。しかし、ステータスは引き継がれます。その場に生き残っている全ての人物が選択すると実行されます〕
〔コマンドの実行方法。そのコマンドを適応させる相手の名前と、コマンド名(間違っていても、大まかなニュアンスが伝われば実行されます)、そして魔法攻撃を選択する場合は、用いる術式名を宣言してください〕
〔勿論、敗北したサイドの人物は死亡いたします。しかし、サイドに複数人のパーティがいる場合は、そのパーティの内数名が死んだとしても、サイド自体が勝利をすれば、全員生き返ります。つまりゲームが終了した場合、必ず片方のサイドは全滅し、もう片方のサイドはゲーム発生前の状態に綺麗に戻される仕様となっております〕
〔では、ルールを守りつつ、楽しんでプレイしましょう! プレイヤーは凶悪なボスを討伐し、ボスサイドは自分を討伐しようと襲ってくるプレイヤーを返り討ちにしましょう!〕
ここでボーカロイドのような、女性に似た機械音は消える。と同時に
〔コマンド入力時間が過ぎました。ターン変更 ボスサイド〕
「……ということだ、一度聞いただけでは覚えきれないだろう? 何回でも⑤説明コマンドを選ぶといい。覚えられるまで、何回でも、な。あと、特別に追加情報を伝えてやろう」
流暢に喋り出したスーツ男を、俺は用心深く見つめる。向けられた疑惑心を察知したのか
「何、嘘はつかないよ。安心したまえ。僕はただ、ゲームを楽しみたいだけ、さ」
ため息を吐いてから、また話し出すスーツ男。
「僕の名前は須田正義だ。菅●将暉ではないよ? よく似ていると言われるんだが……あれ? あまりウケていないようだね……今のツッコむ所だぞ、陽太君。君にしか伝わらないのだから」
「いいから早くルールを言ってくれ」
ぶっきらぼうに言い放つ陽太。
「冗談は嫌いかい? まあいい……説明を続けよう。ボスサイドは君達六名が所有しているHP総量の二倍の数値がHPとして割り振られている。君たちはプレイヤーサイドだ。APがボスサイドと比べ二倍あるかわりにHPの総量は二分の一となっている。まあバランス調節だな」
「つまりは、HPの削り合い……ラウンド制で戦うのは得策じゃないってことか」
「……物覚えがいいねえ、流石、異世界転移者。その様子だと、もう僕が何を説明する必要もないね。陽太君、君とは面白いゲームが出来そうだ。手加減はしないよ? 公平に楽しくゲームをしよう。賭けるチップは命だ」
須田はゲームで難敵を前にした少年のような純粋な心で笑う。
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